リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

発行日が決定!『中絶技術とリプロダクティヴ・ライツ』勁草より

博士論文を元にした私の初の単著が今月中に発売されることが決まりました。

勁草書房からの出版で,店頭に並ぶのは27日以降になります。写真を入れたり,中身を充実させるために少々お値段は張ってしまいました。ごめんなさい。

でも,少なくともこれまでの日本で中絶についてこんな情報はなかったはず・・・という意味で,内容には自信があります!

4月1日からは消費税が上がってしまうので,「買ってもいいかも」と思ってくださる方はぜひ3月中にamazonでご予約ください。上の商品案内をクリックすることで予約ページに飛ぶはずです。

目次を紹介します。最終の校正以前のバージョンなので,もし少々違いがあってもお許しくださいませ。

はしがき

第一部 生殖コントロールの科学と技術

第1章 胎児の可視化と妊娠の科学
1 胎児の発見
2 胎児の可視化
3 胎児生命の科学
4 妊娠の科学
5 妊娠という経験

第2章 避妊の技術とその変遷
1 避妊方法の発達
2 避妊ピルと子宮内避妊具
3 避妊ピル以降の避妊薬と緊急避妊
4 避妊方法と避妊率

第3章 中絶の技術とその変遷
1 中絶のニーズ
2 拡張掻爬法の開発と普及
3 真空吸引の開発と普及
4 月経抽出法と手動吸引
5 中絶薬の導入
6 生殖コントロール技術の発展

第Ⅱ部 日本における中絶の現状

第4章 生殖コントロールをめぐる日本の状況
1 日本の中絶傾向
2 日本の避妊状況
3 中絶胎児の可視化
4 改善されない日本の中絶技術
5 中絶薬をめぐる日本政府の情報操作

第5章 日本における中絶の法と政策1 堕胎罪と儒教倫理
2 優生保護法体制
3 フェミニストの改正案
4 国連女性差別撤廃委員会と日本政府
5 学校教育と胎児中心主義

第三部 リプロダクションをめぐる規範と倫理

第6章  人権としてのリプロダクティヴ・ヘルス&ライツ
1 世界のリプロダクション法の動向
2 リプロダクティヴ・ヘルス&ライツの思想的源流
3 国際的女性運動とリプロダクティヴ・ライツ
4 リプロダクティヴ・ヘルスの生成と発展
5 リプロダクティヴ・ライツという概念の意義
6 リプロダクティヴ・ライツとエンタイトルメント意識
7 ライツからジャスティスへ

第7章 欧米における中絶の倫理
1 従来の欧米社会の中絶観
2 女性運動と権利としての合法的中絶
3 女性運動への反発とプロライフ運動
4 ロウ判決とノンフェミニストの中絶擁護論
5 二項対立の倫理の性差別
6 フェミニスト倫理と中絶

第8章 日本における中絶の倫理
1 堕胎罪と母性の強制
2 ウーマン・リブと避妊ピル
3 ウーマン・リブと障害者運動
4 中絶と子殺しの連動
5 女性の自己決定権と生命倫理
6 中絶問題からリプロダクティヴ・ジャスティスへ

用語集
文献一覧
あとがき
人名索引
事項索引

はしがきの冒頭をちょっとだけ(これも最終校正を経ていないので,違ってたらごめんなさい・・・)。

 1971年10月23日,アメリカのウィスコンシン州マジソンで開かれた「医院と診療所の中絶手法に関するシンポジウム」の閉幕で,早期中絶における拡大掻爬法の支配はついに終わりを告げた。シンポジウム参加者たちが拡大掻爬法の代わりに「標準」として採用したのは,カーマン式カニューレを用いた真空吸引だった。ほどなく,世界中に「妊娠初期の中絶は吸引で行う」という常識が広まった。
 タンファー・タンクの中絶技術史の研究書『選り抜きのテクノロジー――1850〜1980年アメリカにおける中絶手法の歴史』で,上記の事実を知った時,私のなかで,それまで断片的に入ってきていた情報が明らかな一つの像を結んだ。日本に欠けていたものはこれだったのだ。カーマン式カニューレという小さな発明が導入されなかったことで,日本の中絶技術は世界とは別の進化の道をたどることになったのである。

私の10年余の研究,30年以上のこだわりを集大成したものです。どれだけのできかは自分ではわからないのですが,少なくとも,今まで日本でなんとなく信じられてきた「中絶の常識」を覆す内容になっているはずだと自負しています。

ここのブログを見ている人には,ぜひ読んでみていただきたい内容です。
よろしく!