リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

世界の中絶率の変遷

1995年から2008年までの変遷の表を見つけたので、こちらに貼り付けておきます。全世界的にも中絶が減少傾向にあることが分かります。

こういうのを見つけるといつも思うことなんですが、世界では15歳から44歳までの女性の人口千人に対する比率として中絶率を換算するのですが、日本の統計では常に15歳から49歳までとなっているので、厳密にはそのまま比較することができません。

つまり日本では、ほとんど妊娠することがない45〜49歳の集団が母数に加えられているのです。実際は世代の人数は均等ではありませんが、仮に一定だとみなしても、少なくとも6分の7に水増しされていることになります。そうなると、日本の中絶率は算出されている数値に「6分の7」をかける必要があります。

40代後半は今も比較的多い年代層ですが、もうじき第2次ベビーブーマーがまさに問題の40代後半に突入するので、そうなればますますこの5年間の数値を母数に加えることで他国に比して「中絶率が低めに見える」ことになります。

統計局ホームページの2014年の人口推計のページの下のほうにある「図2 我が国の人口ピラミッド」を見れば一目瞭然だと思います。

上記に則ると、こちらで紹介していた最新の数値も、中絶率6.9ではなく8.1になりますね。(上述した年齢層の分布のため実際にはもう少し高いでしょう。今度詳しく見てみます。)それでも、世界的に見ればかなり低めの数値なのですが。

ところが、5月2日に紹介したCEDAWの最終見解の中では、日本人女性の中絶率は高いと批判されています。これはおそらく、日本のオフィシャルな値には暗数(未報告の中絶件数)が相当あると思われているためでしょう。なぜWHOがそう判断したのかは不明です。実は私もWHOの調査に協力しましたが、暗数を示唆するようなデータは見つけていません。

何もないところで勧告を出すわけはないので、興味深いところです。何かご存知の方がいらしたら、ぜひ教えてください。

何にしても中絶率の母数を世界に合わせて是正し、過去の統計も修正するか、それができなければ15〜44歳まで(世界方式)と15〜49歳まで(国内方式=国内の変遷を見るため)の2つの数値を出すべきでしょう。

それとも、生殖技術の発達によって40歳後半で不妊治療で妊娠したものの出生前診断で中絶するという人が大量に現れてくるようなら、49歳まで統計を取る意義も出てくるかもしれませんが、そんな事態にならないことを私は願っています。