緊急避妊薬を必要とする人に心理的負担
この記事の秀逸なところにアンダーラインを引いておく。
緊急避妊薬は「アフターピル」とも呼ばれ、避妊なしの性交、経口避妊薬の服用忘れ、避妊具の不適切な装着や破損、性的暴力を受けた際などに、緊急避難的に用いる。我が国で承認されている緊急避妊薬は、性交後72時間以内の服用が必要で、迅速な対応が鍵となることから、オンライン診療での処方が認められたのだ。性的暴力を受けた女性にとって対面受診のハードルは高く、オンライン診療によって、そのハードルを下げ、望まない妊娠を防ぐ目的もある。
しかし、薬の交付はオンラインではできない。また、転売を防ぐ仕組みも必要だ。そこで緊急避妊薬は、オンライン診療を行った医師によって処方された院外処方箋に基づいて薬局が交付し、「薬剤師の面前で内服する」という条件が付けられた。その際、避妊の成否などを確認するため、約3週間後に確実に受診(対面)するよう、指導することも盛り込まれた。なお、対応するのは「研修を受けた薬剤師」とされている。
こうした条件を見ると、受診のハードルが下がったとは、とても思えない。そもそも、性的暴力を受けて、医師の対面診療を受けたくないと感じている女性が、薬剤師の目の前で服薬するのは困難ではないだろうか。厚生労働省の統計によると、人工妊娠中絶は2017年度で16万4000件に上る。同指針に示されたスキームでこの数が減らせるのであれば、喜んで貢献したい。しかし、この話はオンライン診療で緊急避妊薬の処方を可能にするための、苦肉の策のように思える。