リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

日本の産婦人科医療のコロナ対策

「産む女性」しか大切にしない体質が見え見え

以下は、日本の産婦人科医療にかかわる3学会がコロナ禍を受けて患者にオンラインで情報提供している際の呼びかけ方です。

日本産科婦人科学会:「妊婦の皆さまへ」「妊娠中の皆さまへ」
日本産婦人科医会:「妊産婦のみなさまへ」「妊婦のみなさまへ」
日本産婦人科感染症学会:「妊娠中ならびに妊娠を希望される方へ」

中を読んでも、妊娠を望み、妊娠継続を希望している女性に対する情報のみで、中絶を希望している女性はおろか、流産した女性や妊娠以外の婦人科医療の問題を抱えた患者への呼びかけも見られません。

結局、産婦人科医たちには「産む女性」は大事だけど、あとは関心の外だということの表れではないでしょうか。

そうした態度は、産婦人科医療におけるコロナ対策の方向性を示した厚生労働省の文書により露骨に表れています。

妊婦の方々などに向けた新型コロナウイルス感染症対策

令和2年4月1日
妊婦の方々などに向けた新型コロナウイルス感染症対策
厚生労働省

1.普及啓発等
○ 妊婦向けに注意点や発熱時等の対応等について簡潔に記載したリーフレットを作成し、産科医療機関、子育て世代包括支援センターや保健センター等を通じて妊婦に配布。
○ 妊産婦等が新型コロナウイルスに感染した場合には、心のケアを含めたよりきめ細やかな支援を講じるよう、自治体母子保健部局に要請。
2.マスクの配布
○ 妊婦に対して、洗濯することで再利用可能な布製マスクを国で一括で購入した上で、市町村の協力を得つつ、子育て世代包括支援センターや保健センター等において、母子健康手帳の交付時や既に妊娠している者と面談時などに配布。
3.職場での配慮の要請
○ 経済団体や労働団体(※)に対して、妊娠中の女性労働者等(非正規雇用労働者を含む。)に配慮した取組(休みやすい環境整備、テレワークや時差通勤の活用促進等)への協力を要請。
(令和2年4月1日)
(※)「経済団体」として、日本経済団体連合会日本商工会議所全国商工会連合会全国中小企業団体中央会、「労働団体」として、日本労働組合総連合会 に対し要請。
4.周産期医療の提供
○ 周産期医療提供体制について周産期医療協議会を開催して、具体的な検討(受入れ医療機関や輪番制の構築等)をするよう都道府県に依頼済(令和2年3月19日)
○ 妊産婦を感染させないため、新型コロナウイルス患者を診ない医療機関の設定(令和2年3月1日)や、通常の患者と疑い患者の動線分離を都道府県に対して依頼(令和2年2月1日)
○ 感染が疑われる妊産婦に、早めの相談(帰国者・接触者相談センター、かかりつけ医)を呼びかけ(令和2年2月17日)

ほとんどが、「妊婦」でなくてもあてはまる感染症予防にまつわる注意と、関係機関への要請ばかりです。

で、作ったリーフレットがこれです。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策 ~妊婦の方々へ~

年間16万人の中絶患者がいて
今回のパンデミックで望まない妊娠をする人が増えたかもしれないというのに、「産まない選択」をしたい女性には冷淡な産婦人科医療の一面がコロナという非常時によってありありと描き出されました。