東京新聞 2020年8月18日 14時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/49557?rct=national
東京新聞のこの記事に対して、同社に次のような意見を送りました。
>専門家は、母体や胎児が酸素不足に陥る危険性はないと指摘。ただ、産婦のストレスや不安にも配慮し「各現場で柔軟に対応してほしい」と話す。
これはあまりにも無責任です。
たとえば、アメリカの産科婦人科医師会(ACOG)は、コロナ禍を受けて、妊産婦+母乳育児中の経産婦に対してコロナ対策の必要性を細かく説明して理解を求め、安心させる一方で、医療従事者の側には具体的にどんなリスクがあり、どのような対応をすべきかをフローチャートを交えて事細かく指導しています。しかも、刻々と新たな情報が入ってくる中で、それらの情報は更新されています。イギリスの産科婦人科医師会(RCOG)も、Q&Aで妊婦の抱く疑問にとてもていねいに応じており、「現場の先生に任せてください」などという丸投げの姿勢は見られません。米英のどちらの医師会も、パンデミックが始まりそうな頃から膨大な文書を作って公開しており、「マスクをしてください」「三密を避けてください」といった妊産婦に特化しない「注意喚起」ばかりしている日本の医師たちとは全く姿勢が違います。
目の前の妊産婦を動揺させないために時には情報を控えることも必要なのかもしれませんが、現代の医療はインフォームド・コンセントを旨としていたのではないでしょうか。
そもそも現場の医師たちに、科学的な情報が伝わっていない。それなのに日本の厚労省、学会、医会のトップたちが「主治医の指導に従ってください」「現場の対応に任せます」などとくり返しているのは、あまりにも無責任であり、マスコミはそこをきちんと追求すべきです。わたし自身がもし今妊婦だったら、とてもではないけれども、日本の産婦人科では怖くて産めません。
妊産婦の主観だけ述べるのでは、下手をすると「贅沢言うな!」と妊婦の不安を否定する声を助長することにもなりかねません。
メディアは「困っている女性」を取り上げるだけでなく、なぜ困っているのか、どうすれば困らなくなるのか、何が問題解決を阻んでいるのか等々を取材によって明らかにすることで、どうしていくべきかを世に問い、解決を促していくような役割を果たしてほしいと思います。