FIGO2021年3月26日の声明
訳し直してみました。
FIGOは遠隔医療による中絶サービスの恒久的な導入を支持します
COVID-19パンデミックは、一部の国で中絶サービスが一時的に制限されたこともあり、世界のあちこちで女性と少女に不均衡な影響を与えています。一方、COVID-19パンデミックの間、医療・ケアサービスにテクノロジーが急速に導入されたことで、特にサービスが行き届いていない地域の人々に有効かつ効率的な医療を提供する可能性が高まりました。遠隔医療による人工妊娠中絶は、女性や少女が自宅から医療従事者にオンラインで相談し、薬は患者に送られるか、患者が受け取りにいくことで自己管理中絶を行える可能性を秘めた分野のひとつです。
この問題に関するFIGOの立場
FIGOは、安全な中絶サービスへのアクセスを含むリプロダクティブ・オートノミーは、基本的で譲れない人権であると考えています。中絶は一刻を争う重要な医療サービスであり、女性や少女の希望に沿って、安全性、プライバシー、尊厳を最優先にして提供されるべきものです。FIGOはすべての政府に対し、安全な中絶サービスへのアクセスを妨げる障壁を取り除き、COVID-19の流行中もその後も、すべての少女と女性が安全な中絶を利用できるようにするユニバーサル・アクセスを実現することを要求します。このたびのパンデミックで実施された遠隔医療による中絶プログラムにより、超音波検査を行わなくても、有効性、安全性、効率性、受容性の高いサービスを提供できることが実証されました。イングランドとウェールズにおける事例で、すべての女性と少女のアクセスが改善され、ケアに対する障壁をなくなることで、特に疎外され、不利な立場にある人々に大きな影響が及びました。[1] 2015年から遠隔医療による中絶が行われてきたオーストラリアでは、直接患者に届く遠隔医療による薬による中絶サービスは、効果的で安全、安価で満足できるものであることが証明されました[2]。
安全性とプライバシー
遠隔医療は、クリニックを訪れることなく妊娠初期の中絶を行える安全でプライバシーの守られた方法です。遠隔地に住む女性や少女にとって、スティグマを受けるような経験をすることを減らし、中絶サービスへのアクセスを高めることができます。安全で効果的な中絶サービスを提供するために、対面で人と会う必要はありません。実際、女性が適切な情報にアクセスでき、中絶プロセスのどの段階においても必要または希望する場合には医療サービスを受けることができる状況であれば、女性は安全に薬による中絶を自己管理できると世界保健機関(WHO)はみています[3]。FIGOは、遠隔医療を、女性や少女が安全で偏見のない中絶サービスをいつでも受けられるようにするための効果的なツールとして認識しています。COVID-19パンデミックの際に、一時的な措置として中絶のための遠隔医療が導入されたイングランドとウェールズの最近のデータは、女性が中絶をうまく自己管理できることを示しています。実際、重大な有害事象は極めて稀でした[4]。遠隔医療と自己管理による中絶に関するさらなるエビデンスでは、医療専門家同士でタスクシェアリングできるという利点も強調されており、ほぼすべてのケースですでに過密状態にある公衆衛生システムの負担が軽減されました。
遠隔医療は、中絶を行う妊娠期間を短縮することができるため、患者の安全性を向上させます。子宮外妊娠の可能性を排除するためにルーチンで超音波検査を行わねばならないという証拠はなく[5]、資格を持った医療者であれば、対面で診察しなくても臨床上のリスクや患者を守るためのリスクは判断できます。WHOは以前から遠隔医療による中絶を推奨しており、中絶を行う際に超音波検査を定期的に行う必要はないとしています[6]。さらに英国では、国立医療技術評価機構(NICE)が、子宮内妊娠を確かめる超音波検査を受けずに中絶を行うことを推奨しています[5]。女性や少女たちは、すでに様々な理由で中絶薬をオンラインで求めていますが、安全で高品質な製品を入手できていない可能性があります[7]。規制を受けているプロバイダーから供給されるピルを使うようにすれば、薬の品質は保証されます。
アクセスの向上
遠隔医療は、交通手段、仕事や介護の責任、障害、クリニックまで行くための費用など数々の問題を取り除くことで、医療へのアクセスを全面的に改善します。薬による中絶を行う女性や少女にとって、遠隔医療はプライバシーに関する障壁を取り除き、治療を受けるための待ち時間がなくなるため、アクセスしやすくなる可能性があります。遠隔医療による中絶サービスは、クリニックに行くことが事実上または感情的に難しい女性たちに特に喜ばれているという調査結果もあります[8]。女性と少女の経験に対するポジティブな影響
遠隔医療モデルは、性と生殖に関するヘルスケアの提供を改善しようとしている多くの国で、すでに指針として用いられています。中絶を求める女性や少女だけでなく、医療従事者やシステムにも明らかな影響を与えていることから、このモデルは多くの環境、特に資源の制限に直面している環境にとって望ましいものです。遠隔医療を導入することで、中絶を含む多くのリプロダクティブ・ヘルス・サービスについて管理されていない医療行為に依存することは減っています[9]。超音波検査を行わず、自宅で薬を服用する遠隔医療による中絶は、女性と少女に対して自分自身にふさわしい中絶の選択肢を広げます。さらに、中絶前の超音波検査を不要とすることで、薬による中絶を提供できる医療施設の範囲が広がり、女性や少女が安全でプライバシーと尊厳を守られた医療を受けられる可能性がさらに高まります。
世界中で、望まない妊娠をした女性や少女が、違法で安全でない中絶を行うことで、日々、非常に危険な状態にさらされています。女性と少女は常に安全な中絶を必要としています。遠隔医療によって、安全で、思いやりがあり、費用対効果の高い解決法が提供されます。
FIGOの提言と公約
FIGOは、世界各国の政府が遠隔医療の提供とアクセスを強化するために投資することを推奨します。そうすることで、中絶サービスを求める女性を含み世界中の女性と少女に安全でタイムリーかつ有効なケアを提供できるようになります。FIGOは以下のことを約束します。
●国内および世界的なアドボカシー活動の一環として、遠隔医療による中絶が成功しているというエビデンスを各国の加盟団体と共有します。
●特に低・中所得国(LMICs)において、同様のサービスを実施する機会を検討するよう、各国の加盟学会に奨励・支援します。
●すべての国における中絶の脱犯罪化を引き続き提唱し、年齢、居住地、性別、宗教、社会経済的地位、障害の有無、民族、宗教や文化的背景などに基づくスティグマや差別のない安全な中絶へのアクセスを改善するための世界的な取り組みを支援します。
FIGOについて
FIGOは、世界中の産科・婦人科関連団体が参加する専門組織です。FIGOは、世界中の女性が生涯を通じて、身体的、精神的、生殖およびセクシュアリティに関連する可能な限り高い水準の健康とウェルビーイングを達成することを目指しています。我々はサハラ以南のアフリカと東南アジアに特に重点を置き、グローバルなプログラムの活動をリードしています。
FIGOは、特に持続可能な開発目標(SDGs)に関わる世界の舞台で、特にリプロダクティブ・ヘルス、マタニティ・ヘルス、新生児の健康、子どもの健康、思春期の健康、非感染性疾患に関する(SDG3)に関して提言を行っています。また、女性の地位を向上させ、女性性器切除(FGM)やジェンダーに基づく暴力への対応(SDG5)も含み、リプロダクティブ&セクシュアル・ライツの実現に向けて女性の積極的な参加を実現するための活動も行っています。
さらに加盟学会への教育・研修を行うとともに、リーダーシップの強化、優れた実践、政策に関する対話を促進することを通じて、資源の乏しい国の人々の能力を高めています。
FIGOは、世界保健機関(WHO)と公式な関係にあり、国連(UN)との協議資格を有しています。References
[1] Aiken ARA, Starling JE, Gomperts R, et al. Demand for self-managed online telemedicine abortion in eight European countries during the COVID-19 pandemic: a regression discontinuity analysis. BMJ Sex Reprod Health. 2021. https://srh.bmj.com/content/early/2021/01/11/bmjsrh-2020-200880[2] Hyland P, Raymond EG, Chong E. A direct-to-patient telemedicine abortion service in Australia: Retrospective analysis of the first 18 months. Aust N Z J Obstet Gynaecol. 2018;58(3):335-340. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29603139/
[3] World Health Organization (WHO). WHO recommendations on self-care interventions self-management of medical abortion. 2020. https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/332334/WHO-SRH-20.11-eng.pdf?ua=1
[4] Reynolds-Wright JJ, Johnstone A, McCabe K, et al. BMJ Sex Reprod Health. 2021. https://srh.bmj.com/content/familyplanning/early/2021/02/04/bmjsrh-2020-200976.full.pdf
[5] National Institute for Health and Care Excellence. Abortion care. 2019. Available at: http://www.nice.org.uk/guidance/ng140
[6] WHO. Safe abortion: technical and policy guidance for health systems. Second edition. 2012. https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/70914/9789241548434_eng.pdf?sequence=1
[7] Zamberlin N, Romero M, Ramos S. Latin American women’s experiences with medical abortion in settings where abortion is legally restricted. Reprod Health 2012;9,34. https://doi.org/10.1186/1742-4755-9-34
[8] Porter Erlank C, Lord J, Church K. Acceptability of no-test medical abortion provided via telemedicine: analysis of patient-reported outcomes. BMJ Sex Reprod Health. 2021 https://srh.bmj.com/content/early/2021/02/17/bmjsrh-2020-200954
[9] DeNicola N, Grossman D, Marko K, et al. Telehealth Interventions to Improve Obstetric and Gynecologic Health Outcomes: A Systematic Review. Obstet Gynecol. 2020;135(2):371-382. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31977782
FIGO endorses the permanent adoption of telemedicine abortion services | Figo