リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

「誰の子どもかわからない」深夜の路上で赤ちゃん出産

毎日放送 2023年7月17日(月) 10:30

「誰の子どもかわからない」深夜の路上で赤ちゃん出産...母親が法廷で語った壮絶人生「12回の出産」「妊娠相談する人いなかった」コインロッカー遺棄事件で執行猶予付き判決


 今年1月、大阪市のコインロッカーに出産したばかりの赤ちゃんの遺体が入ったカバンが遺棄された事件。これまでの裁判で母親は「妊娠を相談できる人がいなかった」「過去に出産を12回繰り返した」などと話していました。そして7月7日、母親に執行猶予付きの有罪判決が言い渡されました。これまでの裁判で見えた母親の半生を被告人質問のやりとりなどから振り返ります。


人気少ない裏道で出産…母親は風俗店勤務「ホテルを転々として生活」

 今年1月30日午前0時ごろ、33歳の女は大阪市淀川区の路上で自身が出産した女児の遺体が入ったカバンを阪急・十三駅近くのコインロッカーに遺棄した罪に問われています。

 6月下旬に行われた裁判。法廷でのやり取りから女の生活状況などが明らかになりました。女は当時大阪の風俗店で働いていましたが、家を借りず、ビジネスホテルを転々として暮らしていました。1か月の給料は少なくとも約35万円。その大半をホストクラブで使い、交際していたホストにも借金があったということです。

 そんな中、去年の春頃、自身の体への異変に気付きます。女は妊娠していました。しかし、一度も病院に行くことはなく大阪市内の人気の少ない裏道で今年の1月下旬に出産しました。


妊娠がわかっても・・「相談する人は誰もいない」「産んだ時はパニック」

被告人質問では、妊娠当時の状況などについて弁護人から質問がなされました。

(弁護人)「今回の一番の原因は?」
(女)「避妊をせず、救急車を呼ばなかったこと」
(弁護人)「妊娠して通院とか考えなかったのか?」
(女)「相談する人も知人もここにはいなかったから」

 出産時、女は量販店でトートバッグを買いそこに赤ちゃんを産み落としたということですが、その後なぜコインロッカーに入れたのでしょうか。女は裁判で次のように話しました。

(女)「産んだ時はパニックだった。収入が安定せず、生活することで精いっぱいで育てるのは難しいと思った」


過去「12回の出産」亡くなった子には「申し訳ない」

 しかし、彼女にとってこれが初めての出産ではなかったということです。

(検察官)「これまでに死産を含む出産は何回くらいしましたか?」
(女)「過去に12回繰り返しました」
(検察官)「産まれた子は?」
(女)「施設です」
(検察官)「死産の時は?」
(女)「病院で処置を受けた」
(検察官)「今回病院にいかなかったのは?」
(女)「健康保険証が切れていた」


 そして亡くなった子どもに対し「罪悪感があります。申し訳ない」と話しました。


女「公的な支援を受けると約束します」

 女の弁護側は、執行猶予付きの判決を求めていました。仮に執行猶予付き判決となった時の生活について、法廷で次のように話していました。

(弁護士)「今後は(出身地の)鹿児島に戻る?それとも大阪にいますか?」
(女)「大阪にいて公的な機関と繋がりをもってそこで生活していく」
(弁護士)「判決で執行猶予が付くと拘置所出ることになるが、区役所に行くことは納得してもらえますか?約束できますか?」
(女)「納得します。約束します」
(弁護士)「区役所で(生活の支援が受けることができる)ケアセンターに一時入所してその後、生活保護の申請を行ったらどうかなと思いますがいかがですか?」
(女)「やります」
(弁護士)「ホストクラブに行くことなどを辞めないとまた同じことを繰り返すことは危険があることは理解してますか?」
(女)「理解しています」

 女は代理人弁護士と公的な支援を受けることを約束しました。


女に執行猶予付き判決 裁判長「望まぬ妊娠繰り返さぬよう立て直しを」

 そして、7月7日大阪地裁は女に判決を言い渡しました。
 判決では「出産後資力もなく頼りにする人もなく、路上で車に隠れてトートバッグに出産した。生きている様子がないと判断し、遺体をコインロッカーに入れ、延長料金を払うなど犯行態様は悪質。コインロッカーの管理会社が荷物を回収し、遺体が腐敗したことで発覚したことは、死者に対する敬虔感情や宗教感情が害されたといえる」と指摘しました。

 一方で「被告人は反省し、生活環境を見直すため福祉施設に入所したり、手に職を付けて生活を立て直したりすると述べている」などとして、女に懲役2年執行猶予4年の有罪判決を言い渡しました。

 判決の言い渡し後に裁判長は女に次のように話しました。

 (裁判長)「望まない妊娠を繰り返さないように、生活環境を立て直してください生活を立て直すには相当な努力が必要です。努力を続けてください。また、きちんと弔うべき大切な存在を敬うようにしてください」
 (女)「はい」


妊娠で迷ったら相談を
 大阪府など各地では思いがけない妊娠などで悩みを抱える人の相談を受け付ける窓口があります。電話やメール、ウェブサイトのフォームなどで受け付けています。

 大阪府にんしんSOS
 0725-51-7778 
 (月~金) 午前10時~午後4時
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