リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

中絶薬服用の前提としてエコー検査が必要と主張される医師に対して

わずか120名弱の治験に基づく日本の添付文書を信用するより、海外の豊富なデータと経験を元に議論してほしい

ある産婦人科医が、中絶薬服用の前提としてエコー検査が必要だとの根拠として日本のメフィーゴパックの添付文書を示しています。


これに対して、以下のように反論しました。このブログには細かい証拠も付けておきますので、ぜひご参照ください。

日本の添付文書の内容は、厚生労働省や日本産婦人科医会の意向が盛り込まれているので、人権重視の世界の中絶医療とはズレがあります。女性や少女を守るに、先生にこそ、FIGO(2021)声明やWHO(2022)ガイドラインを元に、日本の「基準」の改訂を求める先鋒を切って頂きたい
https://www.who.int/publications/i/item/9789240045163


たとえば、2021年のFIGO(国際産婦人科連合)声明は、「子宮外妊娠の可能性を排除するために、ルーチンなスキャニングを行うことを支持する科学的根拠はない」とし、薬で中絶を開始してから、必要な人だけ子宮内妊娠を超音波検査で確認する方法を勧めています https://www.figo.org/FIGO-endorses-telemedicine-abortion-services


WHOの「中絶ケアガイドライン」のエグゼクティブサマリーは日本語版があります。こちらの勧告10にも、「薬剤による中絶と外科的中絶の両方において:中絶サービスを提供するための前提条件として超音波検査を用いることを推奨しない」と書いてあります。https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/352342/9789240045163-jpn.pdf


FIGOが参照しているNICEのガイドラインでは、エコー検査を行わない場合と行った場合の中絶の成功率は変わらず、子宮外妊娠の見逃しや妊娠継続に重要な差異があるとの証拠もでていないので、早期に終わらせることを望む女性が多いので、女性自身に選ばせるべきとしています。
https://www.nice.org.uk/guidance/ng140/resources/abortion-care-pdf-66141773098693

以下はツイッターには長くて書き込めなかったものです。FIGO声明の私訳はこちらWHOガイドは日本語版の勧告10をご覧ください


以下は、NICE(英国王立産婦人科カレッジRCOGの健康とケアの優れた方法に関する国立研究所)の中絶前の超音波検査(エコー検査)の必要性に関する個所を私訳しました。子宮外妊娠自体の数が少ないため、エビデンスがあるとは言い切れないことを背景にしながら、エコーをすれば安全というわけではないことが説明されています。
https://www.nice.org.uk/guidance/ng140/resources/abortion-care-pdf-66141773098693

この分野に関しては、限られた証拠しかありません。しかし、中絶(薬による中絶または外科的中絶)は、超音波検査で子宮内妊娠(つまり卵黄嚢)の決定的な証拠が出る前でも、出た後でも同じようにうまくいくことが示唆されました。完全流産の割合に臨床的に重要な違いはありませんでしたが、子宮外妊娠の見逃しや妊娠継続の割合に臨床的に重要な違いがあるかどうかも不明でした。


これらの知見は、子宮外妊娠の徴候や症状がない女性に対するこの段階での薬による中絶に関する委員会の臨床経験と一致しています。さらに、本ガイドラインの他の領域から得られたエビデンスは、女性は中絶をできるだけ早く行うことを好むことが示されています。


エビデンスは限られているため、委員会は、子宮外妊娠を特定できない潜在的なリスクと、問題が起きた場合にどうすべきかを女性自身に認識させておくことが重要であると考えました。

現在、一部のサービスでは、超音波検査で妊娠が確認される前に中絶を行っていません。結果的に、そうしたサービスでは、この勧告に従うことで現在提供されているよりも早い段階で中絶を行えるようになります。そうすると、女性たちはサービスをより利用しやすくなり、待ち時間も短縮されます。手術による中絶は、薬による中絶ほど早い段階で提供されていない可能性があるため、この勧告は、手術による中絶の提供者に対して、より大きな影響を持つ可能性があります。


超音波検査によって(子宮外妊娠がないことの)証拠を得る前に外科的中絶を提供するサービスでは、妊娠(産物)が吸引されたことを確認するシステムが必要になります。例えば、絨毛や妊娠嚢があるかどうか受胎産物を検査するために訓練を受けているスタッフを配置し、そのために必要な機器(通常、ライトボックスと透明な受信機)を用意するか、超音波検査をすぐに利用できるようにする必要があります。超音波検査で妊娠が確認される前に、外科的中絶または薬による中絶を提供するサービスでは、(血液検査の)血清ヒト絨毛性ゴナドトロフィン(hCG)を評価することができ、検査結果を解釈する訓練を受けたスタッフがいることも必要です。子宮外妊娠が疑われる場合には、その女性を妊娠初期評価機関に速やかに紹介するための手続きを整備しておく必要があります。