毎日新聞 社説 2024/11/6 東京朝刊
社説:女性差別で国連委勧告 根絶に動くのが国の責任 | 毎日新聞
女性が不利益を受ける制度や社会システムの存在が、多岐にわたる分野で指摘された。政府と国会は重く受け止める必要がある。
国連の女性差別撤廃委員会が、日本政府に女性政策の改善を勧告する「最終見解」を公表した。
女性差別撤廃条約にのっとった対応を取っているか、締約国を定期的に審査しており、日本政府への対面審査は8年ぶりだった。ジェンダー平等に取り組む市民団体の関係者からも意見を聞いた。
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女性差別撤廃条約の履行状況を審査する国連の会合に向け、各省庁の担当者(写真左側)から取り組みを聞く女性団体のメンバーら=東京都千代田区の衆院第1議員会館で2023年12月4日午後3時21分、大和田香織撮影
最終見解がまず勧告したのは、選択的夫婦別姓制度の導入だ。夫婦が同じ姓を名乗るか、結婚前の姓をそれぞれ維持するか選べる仕組みである。条約は、姓を選択する権利を夫と妻に平等に保障するよう定める。夫婦同姓を義務づけている国は日本だけとされ、夫婦の95%が夫の姓を選んでいる。
選択的夫婦別姓の実現は2003年から求められており、今回で4度目だ。いまだに民法などが改正されていないのは、条約の趣旨をないがしろにしていると言わざるを得ない。
最終見解は国会で女性議員が少ないことにも懸念を示した。女性候補者を増やすため、供託金を一時的に減額する措置を提案した。
先月の衆院選では、過去最多となる73人の女性が当選し、割合も15・7%で最高を更新した。ただ、人口の半数が女性であることを考えれば、不十分だ。
政党の自主的な取り組みに任せていては、迅速な改善は見込めない。政党交付金の配分に女性候補者の比率を反映させるなど、実効性のある対策を講じるべきだ。
「性と生殖に関する健康と権利」への対応も取り上げられた。緊急避妊薬を利用しやすくし、人工妊娠中絶に配偶者の同意を不要とするよう求めた。
委員会は今回、皇位継承を男系男子に限る皇室典範に言及し、条約の理念と相いれないとして、改正を勧告した。政府は「国家の基本に関わる事項だ」として抗議したが、安定的な皇位の継承は喫緊の課題である。国会が主体的に議論を進めなければならない。