リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

第131回国会 参議院 外務委員会 第2号 平成6年11月1日

ICPDからの帰国直後「リプロダクティブ・ライツ」は重要と河野外務大臣が発言

040 大渕絹子
大渕絹子君 日本では一八八〇年に堕胎罪というものが制定をされますね。そして、その堕胎罪によってどういうことが図られてきたかといえば、いわゆる国の政策にのっとって産めよふやせよというような形の中で人口増加政策がとられてくる。その後、敗戦後一転して今度は人口が急激にふえていくことを抑えるために優生保護法が一九四八年につくられます。そして、その優生保護法の中で人工妊娠中絶というのを認めていくわけですよね。その認めていく中で、さらに今度は人口が増加をしていくという状況になってきて、それに対応するかのごとく、一九四九年に優生保護法の中に初めて今度は、母体の保護というのが前提ですけれども、経済的な理由で産めない人にも中絶が適用されて、そして日本の人口の急増というのは抑えられていくわけなんです。
 この一九四九年当時というのは、日本ではまだ避妊の技術といいますかそういうものも、あるいは唯一の避妊方法であるコンドームさえも全国的には普及をしていないという状況の中で、この優生保護法の経済的理由というところにとらえられて中絶が行われていったということが実際なんですよね、日本の歴史の中で。これは私の母親の時代ですけれども、そういう実態というのはよく聞かされてきておりました。
 そういう中で日本の人口抑制がされてきたということは世界の人は知らないわけで、この演説を見る限りでは、日本は女性の男女平等が非常に進み、女性の教育が進み、情報公開もされて、そして抑制をされてきたというふうに広げられていくということに対して、私はそうではなくて、事実はこうだったけれどもという、そういう事実を踏まえながら、しかし今、少子化社会に入ってしまっているということをやっぱり言っていかなければならないのじゃないかなというふうに強く思うわけでございます。
 大臣は、自分から申し出てそこの部分は削ったと言われておりましたので、大臣が認識をしておられたので安心をしましたけれども、そういうのがわかっておらない男性たちもたくさんおるのではないかと思うのですね。だから、そういう中で厳然として今この堕胎罪というものがまだ日本の法律の中にあるということ自体、この国際人口会議で採択をされた女性の権利とも絡めて私は非常にこれは時代におくれている、そういう時代とギャップの持った法律ではないかと思うのですけれども、大臣はいかがお考えでしょうか。
041 河野洋平
国務大臣河野洋平君) 外務大臣としては非常に難しい質問をされているわけで、私の認識がもし浅く、間違っているようだったら厚生省に訂正をしていただかなきゃならぬと思います。
 先ほど私申し上げたように、リプロダクティブライツという視点というものは実は非常に重要なのではないか。これは女性、それから生まれてくる子供たち、生まれるであろう、生まれるはずであったと言ってもいいかもしれません、あるいは生まれるであろう子供たち、こういった人たちに視点をきちっと当てて議論をするということが実は非常に重要だという感じを私は持っておったわけです。
 それと同時に、経済的理由による中絶が日本の人口を抑制する一つの要素になっていたかもしれないというもし御指摘であるとすれば、私は人口増加を抑制するための、あるいは人口増加が抑制された理由というものはたくさんあって、そのうちのそれは一つであるいはあったかもしれないというふうには思います。ただし、それが人口増加の抑制の主要な原因であったかと言えば、それはそうも実は思わないのでございます。
 戦後の日本社会の中における女性の地位、女性の権利あるいは女性の発言権、そういったものほかなり早く認められたと考えていいのではないでしょうか。これはアメリカがそういう指導をかなり積極的にしたということもきっとあると思います。つまり、女性が衆議院参議院議員となって相当多数の女性議員が発言をするということもございましたし、それはもっと以前のそうでなかった時代に比べればかなり発言権を持ったというふうに思います。しかし、それはどの社会でも非常に厳しい状況を通過する、経験をしてきたということもまた私は否定できないというふうに思います。
042 大渕絹子
大渕絹子君 この女性の権利、産む産まないということまで含めて女性の権利として確立をしていこうというのが今回のリプロダクティブヘルスとライツの精神ですよね。その精神とこの日本の法体系が合わなくなっているということなんですね、私が申し上げたいのは。堕胎罪の存在ももちろんそうですけれども、その堕胎罪から逃れるために優生保護法が制定されて、そして人工妊娠中絶が認められているわけですけれども、この法律の中でさえも主体は女性ではないのですね。それを選ぶのは女性ではないんです。中絶できるかどうかを決定するのは、あくまでも法的に決められたお医者さんなんですね。そこが手術をするかどうかの権限を持つというところに私は非常に納得できない部分があるわけです。
 今回、この人口会議でもそこのところ、女性の産む産まないの権利というところで一番議論が沸騰したわけですけれども、先進国だと言われている、あるいは人口抑制に成功したと言われている日本でさえも、厳然としてこの二つの法律によって女性の産む産まないの権利は阻害をされているということに非常にギャップといいますか開きを感ずるわけですね。だからこそ、この人口会議で二十年の行動計画に示されたこの権利、女性の権利として確立をしていこうという提唱がなされたこの時期に、日本においても堕胎罪のあり方や優生保護法のあり方というものを根本的にとらえ直して、今の時代にマッチをした新しい女性の生き方として認められるようなそういう新しい法律、システムをつくっていく時期が来たのではないかと思うんですね。
 そのことを強く今訴えたいし、そのことを副総理、人にやさしい政治をする村山内閣の副総理でいらっしゃいますよね、そして自民党総裁でもあられますので、そういう議論といいますか、そういうものを出していっていただきたいなと心から思うわけでございますけれども、その御決意をひとつ聞かせていただきたいと思います。
043 河野洋平
国務大臣河野洋平君) 医師の判断というものがかなり重要だという視点もあると思うんです。それは医学的知識を持たずに産むか産まないかという判断をするということについて、医師がその判断について医学的に医師としての判断をするということも、それも私は全く否定するわけにはいかないだろうと思うんです。
 私がこういうことを申し上げておりますのは、人工妊娠中絶についての議論はさまざまな角度から、宗教的見地から御議論をなさった方もありますし、医学的見地からなさった方もありますし、人権といいますか権利として議論をなさった方もありますが、それはさまざまな角度からさまざまな議論がこれまでもあったし、あの会議でもあったわけでございまして、これらのことは、今委員御指摘のような視点も、私は全くそういう視点を考えないというわけにはいかない大事な御指摘だと思います。
 しかし、いずれにしても、私が申し上げたように、一つの議論としては医学的な判断というものも重要だということもあるわけで、さまざまな議論を経て判断をされるべきもので、私のような人間の一方的な判断というものはまだまだこの議論からいえば不十分だというふうに自分自身思っております。
044 大渕絹子
大渕絹子君 しかし外務大臣、大臣は演説の中で、女性の権利としてリプロダクティブライツを認めていくということはこれから先の重要な課題であるというふうにもおっしゃっておりますし、そのことを実現するために行動計画も示されているわけですから、日本が率先してそういう日本の中にある法体系を変えていくということに踏み出すことに私は大きな意義があると思うんです。
 今このままの法体系で残しておきますと、一九九〇年にもあったわけですけれども、中絶ができる妊娠の時期というのがあるんですけれども、それを二週間ほど縮めてしまった通達が出されたということがあったわけですね。そういうことも、これから先も医学が進めば進むほど母体外で生きられる子供の時期というのは短くなっていくと思うんですけれども、そのたびごとに通達が出されて中絶の幅が狭められていくという危険性が非常にあるんですね、このままの法体系でいくと。だから、女性の権利としてそのことが認められるのであるならば、この法体系は変えていかなければならないと思っています。
 女性議員を中心にしましてこういうことの改正についても話し合われていますので、これから先もどうぞ積極的にかかわっていっていただきたいことをお願い申し上げます。
045 河野洋平
国務大臣河野洋平君) 御意見は十分伺いました。

医会には「中期中絶」という概念がない!?

ホームページ>研修ノート >No.99 流産のすべて> 5.後期流産の処置

5.後期流産の処置
(1)手続き
○妊娠12 週以降の後期流産(死産)では,死産届書,死産証書及び死胎検案書に関する省令第12 条に基づき,死産証書を作成する(図12).(患者が死産届・死産証書とともに死胎(埋)火葬許可証申請書を市町村役場に提出すると,死胎火葬許可証が発行される.)
○妊娠12 週以降の死産であっても,子宮内容物が胎児の形を成していない場合および胎児と認め得ない場合や,妊婦が死亡し,胎児の死亡も確実な場合は死産証書を作成する必要はない.
○人工妊娠中絶の処置として行う場合は,母体保護法第14 条に基づく夫婦の同意書が必要となる(図13).また,母体保護法第25 条に基づき,都道府県知事への届け出が必要となる.この届け出は母体保護法施行細則第27 条の別記様式第13 号による報告書(図14)によって行う.
○健康保険の被保険者が出産したときは出産育児一時金が,被扶養者が出産したときは出産育児一時金が支給される.この場合の出産とは妊娠85 日(4 カ月)以後の生産,死産(流産),人工妊娠中絶をいう.


(2)流産処置
 子宮頸管拡張→子宮収縮薬投与→子宮内容遺残確認の3 段階で行う.本人とパートナーに手順を説明した上で,書面による同意を得る.

1 )子宮頸管拡張
○妊娠12 週以降の流産処置を安全に行うために最も重要な手順は,子宮頸管拡張である.
○時間をかけて子宮頸管拡張を行うことが,安全な流産処置につながり,かつ2)で述べるゲメプロストの使用量を低減できる可能性がある.
○使用可能な頸管拡張材とその詳細については,次項「Ⅲ- 6.頸管拡張法について」で述べる.図15 に具体的な子宮頸管拡張のスケジュールの一例を示す.

2 )子宮収縮薬
①ゲメプロスト(Gemeprost,プレグランディン®)
○ゲメプロストとして1 回1㎎(1 個)を3 時間ごとに後腟円蓋部へ挿入する.
○1 日最大投与量は5㎎(5 個)までであり,効果の認められない場合は本剤の投与を中止し,翌日あるいはそれ以降に投与を再開するか,あるいは他の方法に切り替える.
○投与は,母体保護法指定医が行う(詳細は平成29 年10 月1 日発行『日産婦医会報』*116 頁参照).
○添付文書では,前置胎盤,骨盤内感染がある場合は,投与は禁忌とされている.
○妊娠中期では,経腟超音波検査により内子宮口付近に胎盤辺縁を認めることも稀ではない.このような状況では,人工妊娠中絶の場合は勿論,子宮内胎児死亡となっている場合であっても,大量出血に注意をしつつ慎重に処置を行う.
○既往帝王切開症例,特に2 回以上の既往がある妊婦において妊娠12 週以降に人工妊娠中絶を行う場合は,頸管拡張を十分にするなどして子宮破裂に特段の注意を払う必要がある.帝王切開の既往がある妊婦にゲメプロストを投与することは禁忌ではないが,類似の構造を有するジノプロスト(Dinoprost,プロスタルモンF®),ジノプロストン(Dinoprostone,プロスタグランジンE2® 錠0.5㎎)など他のプロスタグランジン製剤は,帝王切開や子宮切開の既往がある場合には投与禁忌である.
気管支喘息合併妊娠では,前述のジノプロストおよびジノプロストンは喘息発作を誘発する可能性があるため,添付文書上ジノプロストは禁忌,ジノプロストンは慎重投与となっている.ゲメプロストは禁忌となってはいないが,理論的には発作を誘発しうるため,慎重に投与する必要がある.
オキシトシン(Oxytocin,アトニン®-O 注)
○ゲメプロスト投与により胎児および胎児附属物が娩出された後,5~10 単位を筋肉内に緩徐に注射する.
○流産,人工妊娠中絶においてゲメプロストのかわりに用いられることがある.
○点滴静注法では,オキシトシンとして,通常5~10 単位を5 %ブドウ糖注射液(500㎖)等に混和し,子宮収縮状況等を観察しながら適宜増減する.
○胎児心拍数のモニタリングを行わずに投与する点および,流産期では子宮が小さいため子宮収縮のモニタリングが困難であることから,過強陣痛には十分に留意する必要がある.
※ Williams Obstetrics (24th edition)*2では,高濃度オキシトシン静注単独による妊娠中期の人工妊娠中絶法が記載されている.成功率は80~90 %であり,オキシトシンを高濃度とすることで過剰輸液を回避できるため,低ナトリウム血症や水中毒は稀であるとされるがわが国ではこの方法は使用されない。
③ジノプロスト(Dinoprost,プロスタルモンF®)
○治療的流産を目的として本剤を生理食塩液により希釈した液を子宮壁と卵膜の間に注入投与する方法が添付文書に記載されている.

3 )子宮内容遺残
○後期の流産または人工妊娠中絶では,高頻度に胎盤遺残が生じ,放置すると子宮内感染を起こす原因となる.
○子宮内容(胎児および胎児附属物)が娩出された後は,超音波断層法により,子宮内遺残物の有無を必ず確認する.

(3)乳汁分泌抑制
○後期流産または人工妊娠中絶後に,乳汁漏出を来すことがある.
○冷庵法等により軽快することがあるが,ブロモクリプチンメシル酸塩(パーロデル®錠2 . 5 ㎎)あるいはカベルゴリン(カバサール® 錠1 . 0 ㎎)の投与が必要となることもある.
○カベルゴリンについては添付文書で「本剤投与開始に際しては,聴診等の身体所見の観察,心エコー検査により潜在する心臓弁膜症の有無を確認すること.」となっていることに注意する.

唯一「妊娠中期の人工妊娠中絶法」という言葉が出てくるのは、Williams Obstetrics (24th edition)の記述について述べたところである。

*1:10月号(第69巻第9号No.801)

*2:2014年発行

月刊「正論」10月号に中條高徳先生と山谷議員の対談

山谷えり子議員関連資料


スタッフメール バックナンバー
【参議院議員 山谷えり子〜yamatani-eriko.com】

月刊「正論」10月号に中條高徳先生と山谷議員の対談
(「経済界も注目!男女共同参画の欺瞞と驚愕の性教育」250頁~)
が掲載されています。
 中條先生は、崖っぷちに立たされたアサヒビールを大胆不敵な「アサヒビール生まれ変わり作戦」の総指揮官として見事に立て直した知将としてご高名です。経営・経済問題にとどまらず、国家論、教育論や歴史など「この国のあり方」について格調高い言論活動をされています。
<対談の概要>
 今年3月4日の参議院予算委員会で、山谷の「過激な性教育」についての質疑がテレビ放映され大変な反響がありました。この質問がきっかけとなり、安倍晋三自民党幹事長代理が座長、山谷が事務局長を務める「過激な性教育ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」(以下PT)が自民党に設置されました。
 今年4月から6月にかけて、PTが問題ある性教育の事例の情報提供を求め、全国から集まった約3500件事例の一部を紹介し、これまで行政が実態調査をできなかった理由や、学校現場の問題点を明らかにしています。
 英米の現状にふれ、以前のアメリカは即物的性教育、コンドーム技術教育が盛んであったが、モラルや人間性、生命を大切にする教育、禁欲や我慢の大切さを教える方向に舵を切り、成果が上がっている具体例が紹介されています。イギリスのゆがんだ歴史・性教育に対するサッチャー首相の改革ついても話されています。
 今年7月の日教組定期大会《2003・2004年度運動総括》として、「性教育ジェンダー・フリー教育実践をめぐって、保守的な国家観、性別、役割、分業意識にもとづく家族観、男女の特性論を強調した政治的批判がおこなわれている。」と書かれていること、日教組《05-06年度運動方針》が「ジェンダー・フリーの理念の定着をはかる」「平和や人権とジェンダー・フリーの視点を関連づけた教育実践をさらに深める」と宣言していることを指摘しています。
 「自民党PTは女性を家庭に押し込める封建的で時代錯誤の運動をしている」と根も葉もない中傷を経済団体、経営者にしているとの話もあるが、PTはジェンダー・フリーにもとづく教育と過激な性教育を問題と考えているのであって、女性の社会進出を進めるのは当然であり、いわれなき待遇差別をなくすよう働いていくことを明らかにしています。
 全国の大学の約3割でジェンダー学が選択科目ではなく必修科目化されているが、その問題点について具体的な事例を挙げています。そして、本年度は男女共同参画基本計画の改定期にあたり、次期5ヵ年計画が年末に閣議決定に向けて議論されていく中で、計画には多くの問題点があることを示しています。
 このホームページ“プレスルーム”に全文を紹介しています。

山谷えり子事務所
〒100-8962 東京都千代田区永田町2-1-1 参議院議員会館611号室
TEL:03-3508-8611/FAX:03-5512-2611

男女共同参画の欺瞞と驚愕の性教育 対談(正論 平成17年10月号)
http://yamatani-eriko.com/old/press/press47_01.html

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過激な性教育ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチームというのをつくりました

第163回国会 参議院 予算委員会 第2号 平成17年10月5日
041 山谷えり子
山谷えり子君 これは国の未来をすばらしくするための重点でございますので、是非関係省庁でお話合いをしていただきたいと思います。
 続いて、資料二をお出しくださいませ。カラーコピー、男女が裸になってというイラストがございます。これは参議院予算委員会、三月四日、私が出したものでございます。神奈川県の小学校三年生の授業でございまして、小泉総理はひどいと絶句され、こういうことこそ中教審で議論すべきだというふうにおっしゃられました。また、中山文部科学大臣は、教育御意見箱を作って広く意見を集めたいというふうにおっしゃられました。自民党の方にも、テレビ中継があったものですから大変な声が参りまして、過激な性教育ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチームというのをつくりました。毎週活動をいたしまして、三千五百の過激な性教育ジェンダーフリーの実態が集まってきております。
 例えば、この小学校、イラストのコピーのある小学校からは、父兄が、上の二つ目丸ぽつ、学区内の周辺宅を訪ね、授業の一環なので御協力お願いします、おじさん、おばさんは週何回、どんなふうにしているのと質問に回ったとか。次の次、グループワーク、コンビニでエッチな雑誌を買って、拡大コピーをしてノートに張り発表、この時間に五時間掛けた、信じられない。これ、地元の人たち、保護者が文句言っているわけですよ、とんでもない授業をする。ところが、うちは性教育の先進校ですと言って全くはね付けられちゃう、教育委員会も動かない、こういう実態なんですね。学習指導要領違反、そして子供の発達段階を無視し、親の教育権を無視している。
 次の資料三でございます。これもプロジェクトチームに来た京都、小学校三年の子供を持つお父さんでございます。「いのちのたん生」、かわいいイラストです。そして隣のページ、マーカーしてあります。ある静かな夜のこと、お母さんが、私、赤ちゃんが欲しいなと言うと、お父さんは、そうだね、かわいい赤ちゃんが欲しいなと答えました。お父さんがお母さんをしっかりと抱き合いました。そして、お父さんは、ペケペケペケをお母さんのペケペケペケに入れて精子をあげたのです。隣が裸のイラストになっていますね。これ、小学校三年生ですよ。親の権威はどうなるんですか。親子関係壊れますね。
 このようなものを自民党の党本部に展示いたしました。千人の入場者がありました。中山文部科学大臣はこうしたものをごらんになられて、悪意を感じると言われました。下村文部科学大臣政務官、何か御感想ございますでしょうか。
042 下村博文
大臣政務官下村博文君) これは普通の常識の感覚からいって、とても考えられない教育が学校現場で行われているというふうに思います。
 具体的に委員からも以前にも指摘をされておられましたので、文部科学省としてもこの横浜の事例と宇治の事例についてはきちっと調査をし、そして対策をし、現在ではこれは使用されないようになっておりますが、改めて確認をしました。
 横浜の事例については、これ、今御指摘のように、小学校三年生の授業で使っていた教材でございますけれども、神奈川県の教育委員会が改めて昨年、平成十六年の二月にこの小学校の実態調査を行いまして、そして指導計画や教材の見直しを図るように指導し、そして昨年から横浜においては使われなくなったということを聞いております。
 また、この宇治の、もう一つの小学校の方の性教材、やはり三年生で使われているものでありますけれども、これについても京都府教育委員会に確認をし、これは京都市教育委員会が、この府からですね、市に対して事実確認を行うように指導し、そしてこの教材は今後一切使用させない、しないと。また、性教育を行う際には学校全体で共通認識を図ると。一部の教師たちが使用していたということで、学校全体でそれについて了解を取っていたわけではなかったと。そして、当然保護者の理解得られてなかったわけでございまして、今後保護者の理解を得ながら性教育を行うということで市の教育委員会が指導したということでございます。
 文部科学省としては、改めて適切な性教育が実施されるように、これから悉皆調査をしながら、様々な機会を通じて国として責任を持ってこの性教育については適切な指導が行われるように各教育委員会を通じながら学校現場に対してフォローアップをしていきたいというふうに思っております。
043 山谷えり子
山谷えり子君 グロテスクな紙芝居が全国各地から見付かったり、何か組織的な動きがあるんですね。下村政務官は副教材、全国いろいろ集められたとおっしゃいましたけれども、何か感想は。
044 下村博文
大臣政務官下村博文君) 自民党のプロジェクトチームでも大変な全国で協力いただいて膨大な資料を集められ、またそれも拝見をいたしました。
 東京都の養護学校で人形を使った、セックス人形というふうに通称言われているそうですが、そういうものとか、あるいは、今日の資料を含めて、小学校低学年で驚くようないろんな副教材が実際に市の教育委員会の下に出版されたという事例もございまして、こういうものについても分かった段階で、先ほどのような観点から、保護者の理解とかそれから学校全体のコンセンサスが得られているとかいうことを前提にですね、これは基本的にすべて使用が今はされないというように文部科学省としても指導しているところでございます。
045 山谷えり子
山谷えり子君 私の、参議院予算委員会で小泉総理が中教審で議論しなければいけないと言われ、そして中教審で議論進んでおるようでございますが、性教育に関してはどのような内容になっておりますでしょうか。
046 下村博文
大臣政務官下村博文君) お答えいたします。
 中教審の中で健やかな体を育む教育の在り方に関する専門部会というのがございまして、これはこの中教審の初等中等教育分科会の教育課程部会というところで議論されているところでございます。
 これはまだ途中段階でございまして、今後こういう観点から議論をしていくということでございますけれども、性教育については、特に学校における教育についてこれまで体育とか保健体育を始めとする関係教科ということで指導をしてきたわけでありますけれども、今御指摘のように、この性教育について様々な考え方が論じられている状況でありますので、是非、中教審としても、改めてこの性教育の在り方、それから教科における性教育に関する指導内容の体系化、これをきちっと議論をしながら、各学年、各成長過程に合った適切な教育をする必要があるのではないかというような議論がされているというふうに聞いております。
047 山谷えり子
山谷えり子君 性差否定、男女ごちゃ混ぜのジェンダーフリー教育の実例も寄せられております。
 男女のトイレが一緒で女の子がトイレに行くのを嫌がっているとか、男の子にスカートをはかせる授業、男女でおんぶしたりだっこしたり、中学生です、体ほぐし体操というものだそうですが、やっている。また、林間学校で男女同室、同じテントで寝かせる、小学校五年生。福島県で五百九校中百五十六校、仙台市で百二十二校中三十三校、地方議会で問題となりました。この夏も山形市で三十六校中六校が同宿しております。
 ジェンダーフリー教育なんですが、今年夏の日教組の定期大会で、平成十五、六年度の運動総括として、憲法教育基本法の改悪の動き、性やジェンダーフリー教育への組織的攻撃など、平和が危機的状況にあると総括し、今年、来年度の運動方針として、ジェンダーフリーの理念の定着を図るとうたっております。
 ジェンダーフリーという言葉は細田官房長官も使わないことが望ましいとおっしゃっているわけでございますが、この男女ごちゃ混ぜジェンダーフリー教育、日教組は来年も理念の定着を図るそうでございますが、これに対して何か御感想あれば、下村政務官
048 下村博文
大臣政務官下村博文君) お答えいたします。
 今年の七月に開催された日教組の第九十三回定期大会において、今御指摘されたように、ジェンダーフリーの理念の定着を図るという運動方針が決定されたということを聞いております。
 このジェンダーフリーという用語は、今、男女共同参画社会基本法あるいは男女共同参画基本法においては使用されていないわけでございますし、また、現在、一部に男性と女性の区別をなくして画一的に男性と女性の違いを一切排除しよう、そういう意味でこのジェンダーフリーという言葉が使われているという事例がございまして、実際に日教組においてこのような観点から使われているかどうかということは明確には承知していないところでございますけれども、この男女共同参画社会というのはそういう意味でのジェンダーフリーというのを目指しているわけではありませんので、政府としては、性別にかかわりなくその個性と能力が十分に発揮できることができる社会、そういう社会を目指しているということでございまして、日教組がどういう意味でこのジェンダーフリーというのを使われているかどうかというのは理解していないところでありますが、本来の、先ほど申し上げましたような画一的な男性と女性の違いを一切排除するという意味であれば、それは違うのではないかというふうに思っております。
049 山谷えり子
山谷えり子君 差別ではなく性差否定教育というのはやはり見直してほしいと思います。

第12回男女共同参画基本計画に関する専門調査会議事録
日時: 平成17年7月11日(月) 13:00~15:00
場所: 経済産業省別館825号会議室
開会
報告書案について
その他
閉会
(配布資料)

資料1
自民党過激な性教育ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム会合(7月7日)提出資料
[https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/keikaku/siryo/pdf/12-1-1.pdf:title=その1 [PDF形式:30KB] ]
[https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/keikaku/siryo/pdf/12-1-2.pdf:title=その2 [PDF形式:914KB]]

上記2つの資料、特に「その2」は驚きです。

この資料の末にできた第2次男女共同参画基本計画の「8.生涯を通じた女性の健康支援」の章が以下です。
https://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/2nd/pdf/2-08.pdf

9頁中、なぜか8ページが真っ白で、あちこち空白になっています。

死産後、母たちは絶望の淵で逮捕される…ベトナム人技能実習生の最高裁上告に見る“法律の穴”

弁護士JP編集部 2022年04月20日 11:47

www.ben54.jp

 自宅で死産した双子の赤ちゃんを遺棄したとして逮捕・起訴され、1審・2審ともに有罪判決を受けたベトナム人技能実習生の女性レー・ティ・トゥイ・リンさん(23、以下リンさん)が、4月11日、無罪判決を求めて最高裁に上告趣意書(※1)を提出した。

(※1)上告の理由を記載した書面。上告後、最高裁が指定した期限までに提出する必要がある

 この事件は、表面上は「死体遺棄事件」だ。しかしその背景には「外国人技能実習生を受け入れる日本社会のあり方」「孤立出産・死産に対する法律の穴」という二重の問題が潜んでいる。


妊娠を明かせないまま、双子の赤ちゃんを死産
 熊本県内のミカン農家で技能実習生として働いていたリンさんは、ある日、パートナーとの子を妊娠していることに気が付く。しかし、強制帰国を恐れて雇用主や監理団体に事実を明かせないまま、2020年11月15日午前9時頃、自宅で双子の赤ちゃんを死産した。

 産後の疲労と死産のショックのなか、リンさんは「血まみれの布団の上で子どもたちを冷たくさせることはできない」と、タオルで包んだ遺体を“棺”に見立てた段ボール箱に入れて、セロハンテープで蓋を閉じた。母国ベトナムには、棺をドア近くに置く風習があることから、自宅ドアのそばにあったキャビネットに安置し、その晩は二児の遺体とともに過ごしたという。


 ところが翌日(16日)、リンさんの異変に気が付いた監理団体の担当者とともに訪れた病院で医師に死産の事実を告げると、19日に死体遺棄容疑で逮捕される。12月10日に死体遺棄罪で起訴後、2021年7月20日熊本地裁が「懲役8月、執行猶予3年」の有罪判決を、2022年1月19日に福岡高裁が「懲役3月、執行猶予2年」の有罪判決を下した。


男女雇用機会均等法」は本来、技能実習生にも適用される
 リンさんは妊娠の発覚による強制帰国を恐れ、雇用主にも監理団体にも打ち明けることができなかった。しかし本来、技能実習生には日本人の労働者と同様に労働関係法令等が適用されることになっている。よって、妊娠を理由とした解雇など不利益な扱いをすることは、日本人と同じように「男女雇用機会均等法」で禁止されている。

 労働力不足にあえぐ現在の日本で、技能実習生を含む外国人労働者は必要不可欠な存在だ。だからこそ、持続的な雇用関係を築くことは急務であるはず。

 入管、厚労省、外国人技能実習機構は、実習実施者や監理団体に対し「妊娠等による不利益取り扱いの違法性」について、繰り返し通知を行ってきた。しかし、参議院議員・牧山ひろえ氏が厚労省に問い合わせた結果によると、妊娠・出産を理由に技能実習が困難になったケースのうち、技能実習を再開できた成功事例はわずか1%(2021年9月公表)。思うように改善が進んでいないのが現状だ。


自治体や警察に助けを求めると、死体遺棄容疑で逮捕される
 死体遺棄罪は、刑法第190条で「死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する」と定められている。

 一連の裁判で争点となったのは、死産後にリンさんがとった行動が「遺棄にあたるか」ということ。リンさんと弁護団は「双子の子どもたちの体を傷つけたり、捨てたり、隠したりしていない」と無罪を主張しているが、過去には日本人が死産後に逮捕された事例でも、「死体遺棄罪」に当てはまるのか議論を呼んだケースがある。

 以下は、リンさんの弁護団が運営するサイト「孤立出産.jp」で紹介されている事例だ(年齢はいずれも当時)。


2021年9月/香川県
 妻(22)が自宅で流産したものの、かかりつけ医が臨時休診中だったため、遺体が腐敗しないよう袋に包み、冷蔵庫に入れた。夫(26)が自治体に助言を求めると、自宅に警察が訪れ、夫婦とも死体遺棄容疑で逮捕された。


2020年12月/東京都
 女性(26)は死産後、「こうのとりのゆりかご」「内密出産」で知られる熊本県の慈恵病院に「死産したがどうしていいか分からない」と相談した。慈恵病院は警察に女性の保護を求めたものの、警察は死体遺棄容疑で女性を逮捕。慈恵病院の院長は「保護を優先し、事情を慎重に聞くべきだった」と警察を批判した。
なお、上記の事例はいずれも不起訴となっているが、リンさんは起訴され、有罪判決を受けている。その理由について、リンさんの代理人・石黒大貴弁護士は、「不起訴事案は検察側から見て犯罪の成立が立証できない場合(嫌疑不十分)もあれば諸事情を考慮して不起訴にした場合(起訴猶予)もあるため、不起訴の理由としては正確なことはわからない」とした上で、以下の考えを述べた。

 「リンさんの場合は、外国人であるということと孤立出産、ベトナムにおける文化(土葬文化であり、死産した場合家庭内のみで弔うことが多い)に対する無理解があったからと考えています。つまり、他の不起訴事案で私が確認する限りでは、孤立出産であるという事情で、慈恵病院が声を上げたケースやベトナムの文化について捜査機関が調査し、不起訴にしている事案が見受けられます」


「妊娠・出産の責任をすべて女性にのみ負わせて罰しようとする差別がある」
 病院外で突然死産・流産してしまった人たちが死体遺棄容疑で逮捕されるケースが相次いでいることについて、上告趣意書提出後に記者会見を開いたリンさんの弁護団は「現在のところ、彼女たちがどうすれば死体遺棄罪に問われないのかは、判断がなされていません。今の運用では、警察が赤ちゃんの遺体を『隠した』と判断すれば逮捕できてしまう。個々のケースによってかなりバラつきがありますし、恣意的にもなります」と問題視した。

 また、その背景として「婚姻外で出産する女性への差別や、妊娠・出産の責任をすべて女性にのみ負わせて罰しようとする根深い差別がある」と指摘。

 「本件については形だけ見れば死体遺棄罪で、しかも刑罰はそこまで重くない判決(1審:懲役8月、執行猶予3年/2審:懲役3月、執行猶予2年)が言い渡されていますが、その根底にはものすごく深い問題がある。今回、リンさんが上告することで、孤立出産・死産、そして外国人技能実習生を受け入れる日本社会のあり方への問題提起として、最高裁がモデルを示すような形で無罪判決を出してほしいと思っています」と語った。

輪島病院新生児死亡で輪島市、産科医を戒告処分

医療ニュース

地域 2022年6月14日 (火)配信北國新聞

 輪島市の市立輪島病院で昨年6月、新生児が死亡した医療事故で、市は13日、主治医の男性産科医を戒告の懲戒処分とした。品川誠院長を訓告、助産師2人を文書による注意処分とした。

 事故では、産科医が出産前に胎盤が子宮からはがれる「常位胎盤早期剥離(はくり)」を早産と誤診し、胎盤の剥離を進行させる陣痛促進剤の投与を続けた。市は全面的に責任を認め、遺族に損害賠償金5825万円を支払い、示談が成立した。

 病院は再発防止策として、早産や低体重、妊婦に異常出血がある場合は、産科医が複数人いる病院に搬送することなどを決め、別の病院の産科医に相談できる体制を確保した。

 奥能登2市2町で常勤産科医は輪島病院の1人のみの状況で、石川県は奥能登の周産期医療体制強化に向け検討を進めている。

中絶可能期間の変遷と母体保護法への改正時の厚生事務次官通知

忘備録:人口動態統計のまとめ+α

平成29年人口動態統計
死産統計を観察する場合、次の沿革を考慮する必要がある。

昭和23年以降:優生保護法の施行( 7 月)により、人工妊娠中絶の中の、妊娠第 4 月以降のものも人工死産に含むことになった。
昭和24年以降:優生保護法の改正( 6 月)により、人工妊娠中絶の理由に「経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」も含むことになった。
昭和27年以降:優生保護法の改正( 5 月)により、優生保護審査会の審査を廃止するなど、その手続きが簡素適正化され、優性保護法による指定医師は本人及び配偶者の同意を得て、要件に該当する者に対し、人工妊娠中絶を行うことができるようになった。

1953年 昭和二八年六月一二日厚生省発衛第一五〇号
厚生事務次官通知「優生保護法の施行について」第二の一「満二三週以前」
>1953昭和28年6月の厚生事務次官通知「優生保護法の施行について」をもってその時期の基準は、通常妊娠8月未満とされてきた人工妊娠中絶の定義


平成 2 年 3 月20日付け厚生省発健医第55号厚生事務次官通知
優生保護法により人工妊娠中絶を実施する時期の基準の変更について
1990年(平成二年三月二〇日)(健医精発第一二号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省保健医療局精神保健課長通知)「満二二週未満」に改める
実施は、平成三年からとされたい。

優生保護法により人工妊娠中絶を実施する時期の基準の変更について
(平成二年三月二〇日)(健医精発第一二号)(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省保健医療局精神保健課長通知)
 標記については、平成二年三月二○日厚生省発健医第五五号厚生事務次官通知をもつて、平成三年一月一日から優生保護法第二条第二項の「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」の基準が「通常妊娠満二三週以前」から「通常妊娠満二二週未満」に改められることとされたところであるが、その円滑な実施を図るため、左記の事項に十分留意されたい。
 なお、この改正に際しての公衆衛生審議会の答申及び関係学会の意見を別添のとおり送付するので執務の参考とされたい。


一 優生保護法第二条第二項の「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」の基準の変更は、最近における未熟児に対する医療水準の向上等により、妊娠満二四週未満においても生育している事例がみられることにかんがみ行われたものであること。

二 事務次官通知により示している基準は、優生保護法第二条第二項の「胎児が、母体外において、生命を保続することができない時期」に関する医学的な観点からの基準であり、高度な医療施設において胎児が生育できる限界に基づいて定めたものであつて、当該時期以降のすべての胎児が生育することを必ずしも意味しないものであること。

三 優生保護法により人工妊娠中絶を実施することができる時期の判定は、優生保護法第一四条の規定に基づき都道府県の医師会が指定した医師が個々の事例において、医学的観点から客観的に判断するものであること。

四 前記一、二及び三の事項について、都道府県、保健所、市町村、保健関係機関、医療関係機関等を通じ十分周知徹底を図るとともに、福祉関係機関や教育関係機関の協力を得て連絡会議等を開催し、若年者等に対する妊娠等に関する適正な知識の普及や相談指導等を行うこと。


〔別添一〕

優生保護法(昭和二三年法律第一五六号)第二条第二項の「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」の基準について
(平成元年一二月一八日)(厚生大臣あて公衆衛生審議会答申)
 平成元年一二月一八日厚生省発健医第二六九号をもつて諮問のあつた標記の件については、諮問のとおりとすることが適当であるが、その実施は、平成三年からとされたい。
 なお、以下の点についても十分配慮されたい。


一 基準は、極めて高度な医療施設において胎児が生育することができる限界に基づいたものであり、妊娠満二二週以降のすべての胎児が生育するという意味ではないことを広く周知させること。

二 基準の変更が実施されるに当たり、都道府県、保健所、市町村等の関係行政機関、医師会、日本母性保護医協会、産科婦人科等の医療機関等を通じ周知徹底を図り、また、特に若年者に対する妊娠等に関する適正な知識の普及を行うこと。

三 個々の事例における時期の判定は、都道府県の医師会が指定した医師により判断されるものであること。

四 人工妊娠中絶は、母体の健康等の見地から、一定の要件に該当する場合に認められているものであるが、母体の生命の維持、健康の増進及び周産期医療の一層の充実に最大限の努力を払うこと。


〔別添二〕

(平成元年九月一九日)(厚生省保健医療局長あて社団法人日本産科婦人科学会・社団法人日本母性保護医協会意見)

拝復

 時下ますます御清栄のこととお慶び申し上げます。

 さて、平成元年七月二八日付けにてお問い合わせの「妊娠二四週未満の胎児が母体外において生命を保続することの可能性についての最近の傾向」について回答いたします。

 日本産科婦人科学会では、昭和六三年を調査対象期間として超未熟児の保育状況を調査した結果、妊娠二四週未満の胎児が母体外において生命を保続する可能性を有し、その限界は妊娠二二週であると結論いたしました。

 なお、前記調査の詳細は添付資料に示す通りですが、一般の水準をはるかに越えた高度医療が実施された場合でかつ、生後六か月まで生存する症例が一例でも存在する限界として得られた結論であることを付記いたします。敬具

資料:超未熟児の保育状況ならびに予後調査


一 調査対象および方法

 日本産科婦人科学会内に設置されている周産期管理登録委員会の委員が属する二四施設において、昭和六三年一月一日より昭和六三年一二月三一日までの一年間に、流早産により出産した症例のうち妊娠一八週○日より妊娠二八週未満の症例を対象とした。なお、妊娠二四週未満の人工妊娠中絶例は対象から除外した。また、自然流産の症例で、出産時に児が呼吸するか、生存の兆候がみられる児については、最大の救命処置を施行した。出産時の生存の兆候とは、出産時に心拍動、臍帯拍動、随意筋の明らかな運動等のいずれかを認めた場合とした。妊娠週数の決定について、従来の報告では妊娠週数が必ずしも正確ではない症例も含められていたが、今回の調査においては、妊娠初期の超音波断層法における胎児の計測値も参考にし、妊娠週数の確定に重点をおいた。また、少しでも妊娠週数が不明確なものは対象から除外した。


二 調査結果ならびに見解

 二四施設における妊娠一八週○日から妊娠二七週六日までの出産数は二四○症例であつた。その中で、妊娠週数が正確であると思われる二○三例の出生後六か月までの予後調査の結果は、付表に示す通りである。

 本調査によると、妊娠二二週までに出生した児は七症例あつたが、いずれも出生後二四時間未満に死亡している。妊娠二三週では、五例中三例は出生後二四時間未満で死亡、一例が出生後二八日未満で死亡、一例のみが生存しているが、現在もNICUに入院し、気管内にチューブを挿管したままであり、抜管できない状態である(BPD:bronchopulmonary dysplasia)。今回の調査での出生六か月後の生存率は、妊娠二三週では出生数に対して二○%、また、自然流産の出産数からみた六か月後の生存率は四・三%である。

 生命を保続(以下生育と略す)する可能性の解釈はいろいろあるが、「一例でも生育した例が存在する限界」を意味するならば、また「出生後六か月まで生存していることを生育」とするならば、妊娠二三週の胎児には、僅かながら母体外において生命を保続する可能性はある。今回の調査で見られた生育例のうち、最短の妊娠期間は二三週○日であつた。

 妊娠期間の推定に用いられる方法で、今日もつとも誤差が少なく信頼性が高いとされるのは、最終月経から起算した妊娠期間を超音波計測等により確認・修正することであり、今回の調査はすべてこの方法を採用した。したがつて、前記妊娠二三週○日は厳密には妊娠二二週○日より二三週六日の間を意味する。

 今回の調査結果は、日本におけるトップレベルの周産期医療、とくに充実したNICUを備えた機関で出生した児に対し最大の救命措置を施した結果である。


表 超未熟児の保育調査(昭和63年1月~12月)周産期管理登録委員会(24施設)

――――――┬―――┬―――┬―――┬――――┬―――――――――――――
妊娠週数  │症例数│出生数│死産数│生存  │死亡
      │   │   │   │ 1   2│  1   2   3   4
――――――┼―――┼―――┼―――┼――――┼―――――――――――――
    18週│  8 │  0 │  8 │ 0   0│  0   0   0   0
     9 │  6 │  0 │  6 │ 0   0│  0   0   0   0
    20 │ 11 │  1 │ 10 │ 0   0│  1   0   0   0
    21 │ 13 │  1 │ 12 │ 0   0│  1   0   0   0
    22 │ 22 │  5 │ 17 │ 0   0│  5   0   0   0
     3 │ 23 │  5 │ 18 │ 0   1│  3   0   1   0
    24 │ 16 │ 11 │  5 │ 2   3│  4   1   1   0
    25 │ 32 │ 18 │ 14 │ 8   3│  3   3   1   0
    26 │ 27 │ 25 │  2 │10   5│  3   2   3   2
    27 │ 45 │ 39 │  6 │22   9│  5   2   0   1
――――――┴―――┴―――┴―――┴――――┴――――――――――――――

    計   203   105   98  42  21  25   8   6   3

生存 1 出生後6か月の時点で生育が順調な症例

2 出生後6か月の時点で生存しているが疾患を有する場合

死亡 1 出生後24時間未満の死亡

2 出生後24時間以後7日未満の死亡

3 出生後7日以上28日未満の死亡

4 出生後28日以後の死亡

〔栄養改善法〕

1996年
母体保護法の施行について
(平成8年9月25日)
(厚生省発児第122号)
(各都道府県知事・各政令市市長・各中核市市長・各特別区区長あて厚生事務次官通知)
(公印省略)

 優生保護法の一部を改正する法律が平成8年法律第105号をもって公布されたところであるが、母体保護法の実施に当たり、留意すべき点は以下のとおりであるので、遺漏のないよう配慮されたい。なお、本通知の実施に伴い、本職通知昭和28年6月12日厚生省発衛第150号「優生保護法の施行について」は廃止する。

第1 不妊手術について

1 一般的事項

(1) 法第2条の「生殖を不能にする手術の術式」は、規則第1条各号に掲げるものに限られるものであって、これ以外の方法、例えば、放射線照射によるもの等は、許されないこと。

(2) 法第28条は、健康者が経済的理由とか、単なる産児制限のためとか、又出産によって容ぼうが衰えることを防ぐため等、この法律の目的以外に利用することを防ぐため、この法律で認められている理由及びその他正当の理由がない限り生殖を不能にすることを目的として手術又はレントゲン照射を行うことを禁止したものであること。

従って、この法律の規定による場合又は医師が医療の目的のため正当業務又は緊急避難行為として行う場合以外にこれを行えば、法第28条違反として法第34条の罰則が適用されるものであること。

2 不妊手術

(1) 未成年者に対しては、不妊手術を行うことはできないこと。

(2) 法第3条第1項第1号の「母体の生命に危険を及ぼすおそれのあるもの」とは、当該具体的状況において医学的常識経験からみて死亡の結果が予想される場合をいうものであること。

(3) 法第3条第3項の「配偶者が知れないとき」とは、民法上不在者として取り扱われる等配偶者の所在が知れないことが法的手続により確認されているときだけでなく、事実上所在不明の場合も含むものであること。

(4) 法第3条第3項の「その意思を表示することができないとき」とは、禁治産の宣告等意思能力のないことが法的手続により確認されているときだけでなく、事実上その意思を表示することができない場合も含むものであること。しかしながら遠隔地へ出稼しているときのように配偶者の所在が判明しており、何らかの方法でその意思を表示することが可能である場合は、これに当たらないものであること。

第2 人工妊娠中絶について

1 一般的事項

法第2条第2項の「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」の基準は、通常妊娠満22週未満であること。

なお、妊娠週数の判断は、指定医師の医学的判断に基づいて、客観的に行うものであること。

2 指定医師

母体保護法指定医師でない者は、本法による人工妊娠中絶は行うことができないこと。ただし、母体の生命が危険にひんする場合、例えば妊娠中の者が突然子宮出血を起したり、又は子癇の発作が起って種々の危険症状を呈し、急速に胎児を母体外に出す必要がある場合に、緊急避難行為として、人工妊娠中絶を行うことはもとより差し支えないこと。

3 人工妊娠中絶の対象

(1) 法第14条第1項第1号の「経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」とは、妊娠を継続し、又は分娩することがその者の世帯の生活に重大な経済的支障を及ぼし、その結果母体の健康が著しく害されるおそれのある場合をいうものであること。

従って、現に生活保護法の適用を受けている者(生活扶助を受けている場合はもちろん、医療扶助だけを受けている場合を含む。以下同じ。)が妊娠した場合又は現に生活保護法の適用は受けていないが、妊娠又は分娩によって生活が著しく困窮し、生活保護法の適用を受けるに至るような場合は、通常これに当たるものであること。

(2) 法第14条第1項第2号の「暴行若しくは脅迫」とは、必ずしも有形的な暴力行為による場合だけをいうものではないこと。ただし、本号に該当しない者が、この規定により安易に人工妊娠中絶を行うことがないよう留意されたいこと。

なお、本号と刑法の強制性交等罪の構成要件は、おおむねその範囲を同じくする。ただし、本号の場合は必ずしも姦淫者について強制性交等罪の成立することを必要とするものではないから、責任無能力等の理由でその者が処罰されない場合でも本号が適用される場合があること。

(3) 法第14条第2項の「配偶者が知れないとき」及び「その意思を表示することができないとき」とは、前記第1の2の(3)及び(4)と同様に解されたいこと。