忘備録:人口動態統計のまとめ+α
平成29年人口動態統計
死産統計を観察する場合、次の沿革を考慮する必要がある。
昭和23年以降:優生保護法の施行( 7 月)により、人工妊娠中絶の中の、妊娠第 4 月以降のものも人工死産に含むことになった。
昭和24年以降:優生保護法の改正( 6 月)により、人工妊娠中絶の理由に「経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」も含むことになった。
昭和27年以降:優生保護法の改正( 5 月)により、優生保護審査会の審査を廃止するなど、その手続きが簡素適正化され、優性保護法による指定医師は本人及び配偶者の同意を得て、要件に該当する者に対し、人工妊娠中絶を行うことができるようになった。
1953年 昭和二八年六月一二日厚生省発衛第一五〇号
厚生事務次官通知「優生保護法の施行について」第二の一「満二三週以前」
>1953昭和28年6月の厚生事務次官通知「優生保護法の施行について」をもってその時期の基準は、通常妊娠8月未満とされてきた人工妊娠中絶の定義
平成 2 年 3 月20日付け厚生省発健医第55号厚生事務次官通知
優生保護法により人工妊娠中絶を実施する時期の基準の変更について
1990年(平成二年三月二〇日)(健医精発第一二号)
(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省保健医療局精神保健課長通知)「満二二週未満」に改める
実施は、平成三年からとされたい。
○優生保護法により人工妊娠中絶を実施する時期の基準の変更について
(平成二年三月二〇日)(健医精発第一二号)(各都道府県衛生主管部(局)長あて厚生省保健医療局精神保健課長通知)
標記については、平成二年三月二○日厚生省発健医第五五号厚生事務次官通知をもつて、平成三年一月一日から優生保護法第二条第二項の「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」の基準が「通常妊娠満二三週以前」から「通常妊娠満二二週未満」に改められることとされたところであるが、その円滑な実施を図るため、左記の事項に十分留意されたい。
なお、この改正に際しての公衆衛生審議会の答申及び関係学会の意見を別添のとおり送付するので執務の参考とされたい。
記
一 優生保護法第二条第二項の「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」の基準の変更は、最近における未熟児に対する医療水準の向上等により、妊娠満二四週未満においても生育している事例がみられることにかんがみ行われたものであること。
二 事務次官通知により示している基準は、優生保護法第二条第二項の「胎児が、母体外において、生命を保続することができない時期」に関する医学的な観点からの基準であり、高度な医療施設において胎児が生育できる限界に基づいて定めたものであつて、当該時期以降のすべての胎児が生育することを必ずしも意味しないものであること。
三 優生保護法により人工妊娠中絶を実施することができる時期の判定は、優生保護法第一四条の規定に基づき都道府県の医師会が指定した医師が個々の事例において、医学的観点から客観的に判断するものであること。
四 前記一、二及び三の事項について、都道府県、保健所、市町村、保健関係機関、医療関係機関等を通じ十分周知徹底を図るとともに、福祉関係機関や教育関係機関の協力を得て連絡会議等を開催し、若年者等に対する妊娠等に関する適正な知識の普及や相談指導等を行うこと。
〔別添一〕
優生保護法(昭和二三年法律第一五六号)第二条第二項の「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」の基準について
(平成元年一二月一八日)(厚生大臣あて公衆衛生審議会答申)
平成元年一二月一八日厚生省発健医第二六九号をもつて諮問のあつた標記の件については、諮問のとおりとすることが適当であるが、その実施は、平成三年からとされたい。
なお、以下の点についても十分配慮されたい。
一 基準は、極めて高度な医療施設において胎児が生育することができる限界に基づいたものであり、妊娠満二二週以降のすべての胎児が生育するという意味ではないことを広く周知させること。
二 基準の変更が実施されるに当たり、都道府県、保健所、市町村等の関係行政機関、医師会、日本母性保護医協会、産科婦人科等の医療機関等を通じ周知徹底を図り、また、特に若年者に対する妊娠等に関する適正な知識の普及を行うこと。
三 個々の事例における時期の判定は、都道府県の医師会が指定した医師により判断されるものであること。
四 人工妊娠中絶は、母体の健康等の見地から、一定の要件に該当する場合に認められているものであるが、母体の生命の維持、健康の増進及び周産期医療の一層の充実に最大限の努力を払うこと。
〔別添二〕
(平成元年九月一九日)(厚生省保健医療局長あて社団法人日本産科婦人科学会・社団法人日本母性保護医協会意見)
拝復
時下ますます御清栄のこととお慶び申し上げます。
さて、平成元年七月二八日付けにてお問い合わせの「妊娠二四週未満の胎児が母体外において生命を保続することの可能性についての最近の傾向」について回答いたします。
日本産科婦人科学会では、昭和六三年を調査対象期間として超未熟児の保育状況を調査した結果、妊娠二四週未満の胎児が母体外において生命を保続する可能性を有し、その限界は妊娠二二週であると結論いたしました。
なお、前記調査の詳細は添付資料に示す通りですが、一般の水準をはるかに越えた高度医療が実施された場合でかつ、生後六か月まで生存する症例が一例でも存在する限界として得られた結論であることを付記いたします。敬具
資料:超未熟児の保育状況ならびに予後調査
一 調査対象および方法
日本産科婦人科学会内に設置されている周産期管理登録委員会の委員が属する二四施設において、昭和六三年一月一日より昭和六三年一二月三一日までの一年間に、流早産により出産した症例のうち妊娠一八週○日より妊娠二八週未満の症例を対象とした。なお、妊娠二四週未満の人工妊娠中絶例は対象から除外した。また、自然流産の症例で、出産時に児が呼吸するか、生存の兆候がみられる児については、最大の救命処置を施行した。出産時の生存の兆候とは、出産時に心拍動、臍帯拍動、随意筋の明らかな運動等のいずれかを認めた場合とした。妊娠週数の決定について、従来の報告では妊娠週数が必ずしも正確ではない症例も含められていたが、今回の調査においては、妊娠初期の超音波断層法における胎児の計測値も参考にし、妊娠週数の確定に重点をおいた。また、少しでも妊娠週数が不明確なものは対象から除外した。
二 調査結果ならびに見解
二四施設における妊娠一八週○日から妊娠二七週六日までの出産数は二四○症例であつた。その中で、妊娠週数が正確であると思われる二○三例の出生後六か月までの予後調査の結果は、付表に示す通りである。
本調査によると、妊娠二二週までに出生した児は七症例あつたが、いずれも出生後二四時間未満に死亡している。妊娠二三週では、五例中三例は出生後二四時間未満で死亡、一例が出生後二八日未満で死亡、一例のみが生存しているが、現在もNICUに入院し、気管内にチューブを挿管したままであり、抜管できない状態である(BPD:bronchopulmonary dysplasia)。今回の調査での出生六か月後の生存率は、妊娠二三週では出生数に対して二○%、また、自然流産の出産数からみた六か月後の生存率は四・三%である。
生命を保続(以下生育と略す)する可能性の解釈はいろいろあるが、「一例でも生育した例が存在する限界」を意味するならば、また「出生後六か月まで生存していることを生育」とするならば、妊娠二三週の胎児には、僅かながら母体外において生命を保続する可能性はある。今回の調査で見られた生育例のうち、最短の妊娠期間は二三週○日であつた。
妊娠期間の推定に用いられる方法で、今日もつとも誤差が少なく信頼性が高いとされるのは、最終月経から起算した妊娠期間を超音波計測等により確認・修正することであり、今回の調査はすべてこの方法を採用した。したがつて、前記妊娠二三週○日は厳密には妊娠二二週○日より二三週六日の間を意味する。
今回の調査結果は、日本におけるトップレベルの周産期医療、とくに充実したNICUを備えた機関で出生した児に対し最大の救命措置を施した結果である。
表 超未熟児の保育調査(昭和63年1月~12月)周産期管理登録委員会(24施設)
――――――┬―――┬―――┬―――┬――――┬―――――――――――――
妊娠週数 │症例数│出生数│死産数│生存 │死亡
│ │ │ │ 1 2│ 1 2 3 4
――――――┼―――┼―――┼―――┼――――┼―――――――――――――
18週│ 8 │ 0 │ 8 │ 0 0│ 0 0 0 0
9 │ 6 │ 0 │ 6 │ 0 0│ 0 0 0 0
20 │ 11 │ 1 │ 10 │ 0 0│ 1 0 0 0
21 │ 13 │ 1 │ 12 │ 0 0│ 1 0 0 0
22 │ 22 │ 5 │ 17 │ 0 0│ 5 0 0 0
3 │ 23 │ 5 │ 18 │ 0 1│ 3 0 1 0
24 │ 16 │ 11 │ 5 │ 2 3│ 4 1 1 0
25 │ 32 │ 18 │ 14 │ 8 3│ 3 3 1 0
26 │ 27 │ 25 │ 2 │10 5│ 3 2 3 2
27 │ 45 │ 39 │ 6 │22 9│ 5 2 0 1
――――――┴―――┴―――┴―――┴――――┴――――――――――――――計 203 105 98 42 21 25 8 6 3
生存 1 出生後6か月の時点で生育が順調な症例
2 出生後6か月の時点で生存しているが疾患を有する場合
死亡 1 出生後24時間未満の死亡
2 出生後24時間以後7日未満の死亡
3 出生後7日以上28日未満の死亡
4 出生後28日以後の死亡
〔栄養改善法〕
1996年
○母体保護法の施行について
(平成8年9月25日)
(厚生省発児第122号)
(各都道府県知事・各政令市市長・各中核市市長・各特別区区長あて厚生事務次官通知)
(公印省略)優生保護法の一部を改正する法律が平成8年法律第105号をもって公布されたところであるが、母体保護法の実施に当たり、留意すべき点は以下のとおりであるので、遺漏のないよう配慮されたい。なお、本通知の実施に伴い、本職通知昭和28年6月12日厚生省発衛第150号「優生保護法の施行について」は廃止する。
記
第1 不妊手術について
1 一般的事項
(1) 法第2条の「生殖を不能にする手術の術式」は、規則第1条各号に掲げるものに限られるものであって、これ以外の方法、例えば、放射線照射によるもの等は、許されないこと。
(2) 法第28条は、健康者が経済的理由とか、単なる産児制限のためとか、又出産によって容ぼうが衰えることを防ぐため等、この法律の目的以外に利用することを防ぐため、この法律で認められている理由及びその他正当の理由がない限り生殖を不能にすることを目的として手術又はレントゲン照射を行うことを禁止したものであること。
従って、この法律の規定による場合又は医師が医療の目的のため正当業務又は緊急避難行為として行う場合以外にこれを行えば、法第28条違反として法第34条の罰則が適用されるものであること。
2 不妊手術
(1) 未成年者に対しては、不妊手術を行うことはできないこと。
(2) 法第3条第1項第1号の「母体の生命に危険を及ぼすおそれのあるもの」とは、当該具体的状況において医学的常識経験からみて死亡の結果が予想される場合をいうものであること。
(3) 法第3条第3項の「配偶者が知れないとき」とは、民法上不在者として取り扱われる等配偶者の所在が知れないことが法的手続により確認されているときだけでなく、事実上所在不明の場合も含むものであること。
(4) 法第3条第3項の「その意思を表示することができないとき」とは、禁治産の宣告等意思能力のないことが法的手続により確認されているときだけでなく、事実上その意思を表示することができない場合も含むものであること。しかしながら遠隔地へ出稼しているときのように配偶者の所在が判明しており、何らかの方法でその意思を表示することが可能である場合は、これに当たらないものであること。
第2 人工妊娠中絶について
1 一般的事項
法第2条第2項の「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」の基準は、通常妊娠満22週未満であること。
なお、妊娠週数の判断は、指定医師の医学的判断に基づいて、客観的に行うものであること。
2 指定医師
母体保護法指定医師でない者は、本法による人工妊娠中絶は行うことができないこと。ただし、母体の生命が危険にひんする場合、例えば妊娠中の者が突然子宮出血を起したり、又は子癇の発作が起って種々の危険症状を呈し、急速に胎児を母体外に出す必要がある場合に、緊急避難行為として、人工妊娠中絶を行うことはもとより差し支えないこと。
3 人工妊娠中絶の対象
(1) 法第14条第1項第1号の「経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」とは、妊娠を継続し、又は分娩することがその者の世帯の生活に重大な経済的支障を及ぼし、その結果母体の健康が著しく害されるおそれのある場合をいうものであること。
従って、現に生活保護法の適用を受けている者(生活扶助を受けている場合はもちろん、医療扶助だけを受けている場合を含む。以下同じ。)が妊娠した場合又は現に生活保護法の適用は受けていないが、妊娠又は分娩によって生活が著しく困窮し、生活保護法の適用を受けるに至るような場合は、通常これに当たるものであること。
(2) 法第14条第1項第2号の「暴行若しくは脅迫」とは、必ずしも有形的な暴力行為による場合だけをいうものではないこと。ただし、本号に該当しない者が、この規定により安易に人工妊娠中絶を行うことがないよう留意されたいこと。
なお、本号と刑法の強制性交等罪の構成要件は、おおむねその範囲を同じくする。ただし、本号の場合は必ずしも姦淫者について強制性交等罪の成立することを必要とするものではないから、責任無能力等の理由でその者が処罰されない場合でも本号が適用される場合があること。
(3) 法第14条第2項の「配偶者が知れないとき」及び「その意思を表示することができないとき」とは、前記第1の2の(3)及び(4)と同様に解されたいこと。