リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

昨日の訳がちらっと目に入って,technological ethosの訳が良くないなって思った。でも名案なし。思いついたら直すけど。

さらに,上の石井さんの定義を見てて,医療技術の進歩が性と生殖の分離の原因とは言い切れないように思った。その因果は一方的なものではない。「性と生殖の分離」への願望は太古からあったし,医療技術が未発達な時代にも,その願望を充たすために,世界各地でなにかしらの行為が行なわれてきた。その願望充足行為の中には,無害だけれども効果のない呪いや祈祷も含まれれていたけど,たいていは有害で効力のほうはまちまちな堕胎行為であった。危険な堕胎で命を落とす女性もいれば,一生,身体が不自由になる女性もいた。中絶合法化以前の欧米諸国では,悲惨な状況を目の前にしたからこそ,どうにかせねばと中絶技術の改善に赴いた医師たちが少なくない。その場合,前記とは因果が逆転する。性と生殖を分離させようとするがむしゃらな願望が,医療技術の進歩を促したのだ。

ただし医療技術の進歩によって人があまり死なないようになったことは,多産多子から少産少子の生殖パターンへの移行を促す要因のひとつだと考えられるし,その新しい生殖パターンを希求することが「性と生殖の分離」の願望をさらに強めることになったのも間違いないだろう。