リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

ayumi_aさんから昨日コメントいただいて思い出した映画(もともとテレビ映画のようですが,わたしはレンタルビデオで観ました)について,手持ち情報からあらすじを紹介します。それぞれの時代のアメリカの中絶事情を非常によく描いている作品だと思います。

「この壁が話せたら(スリー・ウイメン)」 デミ・ムーア&シェール監督 1996年

第1話、1952年、戦争で夫を亡くした若い看護婦が、感情的混乱のなかで夫の弟に迫られ,妊娠してしまう。何も知らず彼女をなじる親戚たちに,彼女は義弟をかばって沈黙を守る。産むわけにはいかないと,編み針で子宮を突こうとするが失敗し,どうにか見つけたヤミ堕胎医は,金を掴んだ不潔な手で麻酔もせずに掻爬を施し去っていく。高熱と苦痛と血の海のなか,助けを求めようと手にした受話器を彼女は取り落としてしまう……。

第2話、1974年(米国で中絶合法化された翌年)、4人の子どもたちを育てあげた母親が、ようやく自分の時間ができたと,意気揚々とウーマンリブの雰囲気であふれるキャンパスに戻った。そのとたん,彼女は5人目を妊娠したことに気づく。妊娠を喜んでくれない夫。女同士として母への共感を示すティーンエイジャーの娘。千々に乱れる思いの末に,結局,彼女は産むことを決意する。

第3話、1996年、既婚者の大学教授との不倫で妊娠した大学生が,手切れ金として中絶費用を渡され,なすすべもなく中絶クリニックへ。クリニックの周囲は中絶反対派の抗議活動で大混乱だったが,クリニックのスタッフは共感的で,安心して処置を終えることができた……と思ったとたん,飛び込んできたプロライフの若者の銃が火を噴き,医師は血を流して床に倒れる。

中絶問題を考えたい方には,ぜひお薦めします!(ただし,第3話で描かれる手厚い中絶ケアの状況は,日本の平均的な状況とはかけ離れているように思いますが……。)

なお,ayumi_aさんのこの映画+「サイダーハウス・ルール」の説明はこちらにあります。→http://d.hatena.ne.jp/ayumi_a/20060205/p3