リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

讀賣新聞のオンラインニュース(8/22)よりご紹介。

出生数、6年ぶり増加
上半期出生率も上昇の可能性

 厚生労働省が21日発表した人口動態統計(速報)によると、2006年上半期(1〜6月)の出生数は計54万9255人で、前年同期より1万1618人増え、6年ぶりに増加に転じた。

 出生数の回復傾向により、女性が一生に産む子供の数の推計である合計特殊出生率も、06年は6年ぶりに上昇に転じる可能性が高まった。

……―中略―……

 05年は出生率が1・25と過去最低を更新し、死亡数が出生数を上回ったことで、初めて人口が自然減となった。日本の人口を維持するためには出生率が2・07以上に回復する必要があるとされる。同省は「少子化は改善傾向がみられるが、人口減少の大きな流れを変えるまでには至っていない」と見ている。
(2006年8月22日 読売新聞)

どうもはしゃいでいる口調に読めるのですが,「人口を維持する必要性」については,何も語られていない。いったい誰のための「必要」なんだろう……。数値の増減というのは多様な要因が絡んでいるものだし,前年比較での増えた減ったよりも,少子化状態を招いている社会的サポート状況の改善のほうが重要だと思うのだが,この種の記事でそこまで分析したものって,あまりみかけない。

おまけですが……
1949年(昭和24年)5月12日の衆議院本会議の「人口問題に関する決議」によれば,1948年8月時点で日本の人口は8000万人を超過。明治25年に比べて倍加しているが,その頃に比べて国土は若干減少しており,おまけに戦争による国力疲弊,資源消耗,産業壊滅状態,かてて加えての出生増加にあえいでいる様子が明らか。その結果,前年に制定された優生保護法の条件が緩和され,公的統計だけで中絶が年間100万件時代を迎えたのでした。当時は,「無責任にぼこぼこ産む女たち」が批判されたのでした。

なのに10年ちょっとで,今度は若年労働者不足から,またしても人口増加策に転じ,今度はフリーセックスや道徳的退廃に向けて非難囂々。

女たちは人口調節弁?

こんなんだから,リプロダクティヴ・ライツを唱える必要があるのだと思う。リプロの基本は,産む・産まないに関する国の押しつけを拒否すること。