リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

内閣府共通意見等登録システム 「子ども・子育て」に関する御意見について

少子化」「子ども・子育て」に関する御意見を、次のフォームからご入力下さい。

回答の中で引用した『世界人口白書2018』は日本語版の9頁を参照してください。

 日本の少子化の根本原因の一つは、子を妊娠・出産・育む負担が女性に大きく偏る政策がとられる一方で、女性個人のリプロダクティブ・ヘルス&ライツが蔑ろにされる人権侵害的な状況が続いてきたことにあると筆者は考える。しかし、このことは従来ほとんど指摘されてこなかった。
 世界人口白書2018年では、出生率によって国々を4パターンに分けている。そのうち、日本は「長いこと低出生率が続いている」パターンにあてはまるが、このグループの国々の多くと特徴を異にしている。すなわち、このパターンの国々は「教育も所得も高い水準で、女性の権利の実現についても進んでいる傾向がある。基本的なリプロダクティブ・ライツとその他の権利はほぼ実現している。ただし安価で質の高い保育サービスが不足しているため、仕事と家庭生活の両立が困難ということがあり、自分たちが望む子どもの人数よりも少なく産んでいる。高齢者の増加と労働人口の減少が進んでおり,これらの国々は近い将来に経済力が低下する可能性もある。」とされている。ところが、日本は女性の権利やリプロダクティブ・ライツ等の権利保障がほとんど実現できておらず、両立支援も不足しているために、女性の経済力も妊孕力も社会に全く還元できてなく、結果的に少子化の悪化と経済力の低下が進んでいる最悪のパターンを突き進んでいる。
 白書では、どの人口減少パターンであろうとも、「人々が権利を実現し、家族計画について自ら選択することを阻んでいる原因は、形態と程度の差こそあるものの、共通点がある。広く見ると、カップルや個人が出産に関する目標や希望を満たせるよう支援するか、またはそれを妨げるかは、制度的、経済的、社会的要因による。カップルや個人が充分に支援を受けられた場合、出生率は女性1人当たり子ども2人程度で推移し、国際人口移動を考慮に入れなければ、人口を安定的に保つのに十分なレベルとなる。」と指摘している。
 子産み・子育てを自己責任として押しつけながら、人権としてのリプロダクティブ・ヘルス&ライツの保障を徹底していかないようであれば、今後も子を産む女性は増えないだろうし、幸せな子育ても望めない。翻って幸福に育つ子どもたちの数も減少の一途を辿るばかりである。
 子どもの幸福のためにも、子を産む女性の権利保障と、子育ての社会的支援は不可欠である。もはや時間はない。迅速な転換が必要である。