リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

11月29日付の讀賣新聞のサイトに,熊本の慈恵病院が設置する「赤ちゃんポスト」に関して,少々詳しい記事が載っていたのでご紹介。
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/kyousei_news/20061129ik02.htm

以下,一部抜粋。

赤ちゃんポストの歴史は古い。中世ヨーロッパでは修道院などに設けられ、江戸時代にロシアに漂着した日本人を描いた井上靖の小説「おろしや国酔夢譚」には捨て子を入れる引き出しを持つ施設が登場する。

 現代のポストの“先進地”はドイツで、慈恵病院も視察し、参考にしている。6年前に始まり、福祉団体、公私立病院など約80か所に増えている。イタリアやスイス、ルーマニアにも広がっており、社会に一定の理解を得ていると見るべきだろう。

 その一方で、ドイツでは養育放棄を助長するとの批判があり、ポスト設置の合法化を求める動きも起きたが、棚上げ状態になっている。子どもを引き取ろうと思い直した母親を巡り、身元を秘匿する施設側と、開示を求める捜査当局とが裁判で争うトラブルに発展したこともあるという。

 日本でも、子捨てを助長しかねないと危惧(きぐ)する声がある。日大大学院法務研究科の板倉宏教授(刑法)は「安易な養育放棄につながりかねず、病院は親から養育できない理由を聞き出す工夫が必要だ」と話す。これに対し、蓮田副院長は「ドイツでは捨て子は増えていない。あくまで緊急避難的な措置」と理解を求める。

 捨て子は戸籍法では棄児とみなされる。病院は新生児を預かったら警察、熊本市児童相談所に通知し、熊本市長は2週間以内に名前を付けて戸籍を作る。原則として2歳まで乳児院で育てられ、児童養護施設に移したり、里親が引き取ったりする。

 一方、連絡を受けた警察は、保護責任者遺棄容疑に該当しないか捜査することになる。法務省刑事局熊本県警ともに「犯罪が成立するかは、個々の事案について判断される」と違法性は個別に検討するとの見解を示しており、ポストは適法と言い切れない微妙な状態に置かれる。

大阪大の阪本恭子特任研究員(哲学・生命倫理)は、子どもの出自を知る権利への配慮を求めるコメントを寄せている。