リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

虐待、妊娠、一人で出産 赤ちゃん抱き立ち尽くす19歳

内密出産 いのちをつなぐ①

朝日新聞で全4回シリーズの①回目(2020.3.22 白石昌幸、山田佳奈)。有料記事なので抜粋で紹介します。

 昨夏、熊本市の慈恵病院でナースステーションなどのブザーが鳴った。親が育てられない子どもを匿名で預かる「こうのとりのゆりかご」(赤ちゃんポスト)の小さな扉が開いた知らせだ。看護師が駆けつけると、生まれてまもない赤ちゃんを抱いた女性が、真っ青な顔色で立ち尽くしていた。

 女性は19歳、学生だと明かした。白いおくるみの中の赤ちゃんにはへその緒が短くついていた。約3千グラムの男の子だった。2日前の早朝、アパートの自室でひとり、出産したという。……

……
 できるなら一緒にいたかった。でも、親に頼れず、学校に通いながらアルバイト代で生計を立てている状況では赤ちゃんを育てられない。預けた子は、いま、里親のもとで一時的に養育されている。将来は特別養子縁組を望む人に引き取ってもらえれば、と願う。

 病院には、赤ちゃんと自分の写真をアルバムにまとめ、自分の名前を記した書類とともに託した。自分がどうやって生まれたのか知りたいと、いつか子どもが思うかもしれないからだ。

 内密出産ができる病院が近くにあれば、危険な孤立出産を選ぶ必要はなかったはずだ。男の子は体重が7キロを超えてスクスクと育った。女性は半年ぶりに会った男の子をあやしながら、「私に必要だったのは、相談体制の充実より、匿名で妊婦健診を受け、安心して出産できる場所。それがなければ、つらい思いをする女性は減らないでしょう」と話した。……

以下は内密出産に関する説明です。

内密出産

匿名での出産を望む女性が、専門機関などにだけ身元を明かして病院で出産する制度。医師や助産師が立ち会わない危険な孤立出産を思いとどまらせて母子の命を守るとともに、子が出自を知る権利を保障することが狙い。2014年から実施しているドイツでは、母親は相談機関に実名で相談し身元を明かす証書を封印して預け、医療機関では仮名で出産する。子は原則16歳になったら出自を知ることができる。出産前後の費用は国が負担する。慈恵病院では新生児相談室長が母親の情報を保管。母親の名前を記さず出生届を出し、戸籍にも出産の事実が記載されない仕組み。子が一定の年齢に達し希望した場合は母親の情報を開示する。

なお、内密出産は、「母親の情報を保管し将来的に出自を知る権利に応えられる点で「匿名出産」と異なる」と説明されています。