リプロな日記

日本のアボーション(中絶と流産)にまつわる諸問題を研究しています

後日談

東京新聞が2008年1月18日付けで「特急内の暴行 傍観するのは“共犯”だ」という社説を掲載していたことを知ったので紹介します。

 凶悪な犯行で犯人が罪に問われるのは当然だ。だが現場に居合わせた人々も見て見ぬふりをしていたら、良心に恥じることはないのか。警察と防犯カメラ頼みでは、犯罪はなくせない。

 JR北陸線上り特急「サンダーバード」車内で、乗客の二十代女性をトイレや洗面所に連れ込み暴行し、強姦(ごうかん)罪などに問われた解体工の被告(36)に大津地裁が、懲役十八年を言い渡した。

 判決の指摘通り、例のない凶悪、卑劣な犯行だ。被告はおとなしそうな女性の隣席に座り、「殺すぞ」などと脅し、わいせつ行為の末、二度にわたり暴行している。

 被害者の心には、癒やし難い傷が残った。被告はこのほかJR湖西線電車内や駅のトイレでも相次いで女性に暴行しており、情状を考慮しても、厳罰は当然だろう。

 事件で明らかになったのは、多くの乗客の目があるはずの鉄道の車両内が、時には凶悪犯罪の危険な舞台になる事実である。

 公共交通機関を利用する乗客を、安全に目的地まで輸送するのは、まず何より事業者の責任である。安全には事故など運行の障害を防ぐと同時に、乗客が犯罪などに巻き込まれないことも、当然含まれる。

 事件の前から各車両の連結部近くには、緊急通報用非常ボタンがあったが、今回は役に立たなかった。JR西日本などはステッカーを張り、活用を呼びかけている。東海道・山陽新幹線のN700系車両では、防犯カメラの設置も進んでいる。

 だが人員を削減し、機器に頼るだけで、真の安全は確保できるのか。車掌ら乗務員が巡回を繰り返し、不審な事態に積極的に介入することが一番有効だろう。

 さらに恐ろしいのは、事件が起きている間、同じ車両に乗り合わせた約四十人の他の乗客が、被告を制止はおろか、乗務員への通報もせず、見て見ぬふりをしたことだ。

 被害者は恐怖で助けを求められなくても、女性の泣く姿など異常に気づきながら他の乗客はなぜ傍観したのか。犯人に立ち向かわなくても、乗務員にこっそり知らせたり、非常ボタンを押したりすることはできる。携帯電話もこんな時こそ役立てるべきだろう。

 英国には、犯罪の被害者や目撃者が叫び声を上げると、居合わせた市民が犯人の制圧などに協力する「ヒュー・アンド・クライ」という伝統がある。わが国でも、暴力団追放など住民が協力した例はある。できる範囲で犯罪を食い止めるのは、市民の義務だ。無法者を放置すると、つけは必ず自分に回ってくる。

「ヒュー・アンド・クライ」とは、英語ではhue and cryと書き、世間やマスコミなどが非行に対して非難の声を上げることを意味するようです。