リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

まず速報を3つ。

ワシントン・ポスト紙早版ヘッドライン(19日付) 【1面】より

 ★米最高裁、部分出産中絶の禁止は合憲と判断。ブッシュ大統領が任命した2人の判事は、議会は「まだ生まれていない命も含む生命の尊重」を実践しようとしていると述べ、多数派に加わる。

【19日 ロイター】2007/04/19 15:59

ニューヨーク・タイムズ紙早版ヘッドライン(19日付) 【1面】

 ★米連邦最高裁、部分的妊娠中絶を禁止した法律を5対4で合憲と判断。最高裁の保守色が鮮明になり、中絶論議の再燃は必至。

 [19日 ロイター】2007/04/19 19:10

ワシントン・ポスト紙早版ヘッドライン(19日付) 【1面】

 ★米最高裁、部分出産中絶の禁止は合憲と判断。ブッシュ大統領が任命した2人の判事は、議会は「まだ生まれていない命も含む生命の尊重」を実践しようとしていると述べ、多数派に加わる。

 【19日 ロイター】2007/04/19 15:59

上記速報は,いずれも引用者が他の記事を省略。

四国新聞もこの問題を取り上げていました……が。

妊娠後期中絶禁止法は合憲/米連邦最高裁が判決

2007/04/19 09:06

 【ワシントン18日共同】米連邦最高裁は18日、ブッシュ政権の後押しで成立した妊娠後期の人工中絶を禁止する法律を5対4で合憲とする判決を出した。

 妊娠中絶の一部禁止を合憲とする最高裁判決は、中絶の権利を認めた1973年の最高裁判決以降初めて。ブッシュ大統領が指名した2人の保守派判事が合憲判断に加わっており、女性団体などからは、女性の健康を保護する判例が覆ったとして強い批判の声が上がっている。

 判決は、胎児が成長した妊娠後期に胎児の体の一部を母親の子宮の外に出して死亡させる「部分分娩中絶」を全国的に禁じた法律について、「政府は胎児の生命を保護する法律的権限がある」として、支持した。

 米国では妊娠中絶の是非が国論を二分する大きな内政問題となっており、次期大統領選でも争点の一つに浮上しそうだ。

四国新聞の「女性団体などからは、女性の健康を保護する判例が覆ったとして強い批判の声が上がっている」という記述には補足が必要だろう。

ここで問題になっている中絶技法は,D&Xと呼ばれる緊急時の“救命法”である。出産後期になって,主に遷延分娩などのために母子ともに命が危ぶまれるような状況になった際に,どうにか母の命だけでも救う目的で取られる最後の手段なのである。そのことを見落としてはならない。D&Xが行なわれる対象は,妊娠間際になって「やっぱり産むのはやめとくわ〜〜」などと言う気まぐれ女ではありえない。

プロライフ派が批判するように,D&Xで行なわれる処置自体に残虐さが伴うことは,だれもが認めるだろう。しかし,それを行なわなければ,目の前の女性の命を救えない……そのような,ぎりぎりの局面で,医師が意を決して行なってきた救命法なのだ。実際,日本の産科医も最後の救命法としてこの手術を教えられている。ただ,それが該当するケース自体が少ないので,この手術の件数も非常に少ない。とはいえ,この最後の手段が残されているからこそ,命を取り留めきた女性たちが存在していることも確かなのである。(つまり,この手術が全面禁止されると,みすみす命を失う女性たちが出てくることも確かなのである。)

「女性の最後の命綱の保護」とでも言うべき措置を,何の説明もなく「女性の健康を保護」と表現して終わらせるのはあまりに軽すぎる。それは,プロライフが誘導している方向への“誤読”を招く結果にもなりかねない。

新聞たるもの,もっと事実を調べてから書いてほしいものだ。

それで思い出した。蛇足だが……

四国新聞のことではないが,わたしに対して“取材”と称していろいろと情報を聞き出した某誌は,わたしの意見とは正反対の考えを,わたしの「コメント」として名前入りで載せた。わたしはそれを人づてで知り,クレームをつけたが,それにきちんとした対処をすることもなく,わたしが知らないうちにその連載は終わっていた。しかも連載の終わりらしき頃に,わたしの名をもう一度出すとの電話が一本あったきりで,その二度目の記事はコピーすら送ってきてもいない。呆れてものも言えない。