リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

医師が不倫の後始末で不同意堕胎か!?

以下は東京新聞のサイトに掲載された2010年5月18日付け夕刊の記事です。

タイトルは「医師薬で不同意堕胎容疑 交際女性に『栄養剤』

衝撃的な事件です。本当なんでしょうか? 刑法堕胎罪による逮捕だけでも珍しいというのに、この事件では、医師が不倫の後始末をつけるために、当人の同意なく堕胎(=違法の中絶)を行ったというのです。法廷の審議がどうなるのか、医師会がどう対応するのか、じっくり見守りましょう。

 交際していた妊娠中の女性に子宮収縮剤を投与して流産させたとして、警視庁捜査一課と本所署は十八日、不同意堕胎の疑いで、金沢大学付属病院(金沢市)に勤務する医師の小林達之助容疑者(36)=金沢市もりの里一=を逮捕。同院などを家宅捜索した。同課によると、小林容疑者は「知りません」と容疑を否認している。

 不同意堕胎容疑での強制捜査は極めて異例。警視庁は、医師の知識や立場を悪用した犯行として、強制捜査が必要と判断した。

 逮捕容疑では、東京慈恵会医科大学付属病院(東京都港区)に勤務していた昨年一月、交際していた三十代の看護師の女性に「ビタミン剤」と偽り、都内にある女性の自宅で複数回、子宮収縮剤の錠剤をのませたり、点滴をしたりして、胎児を流産させたとされる。女性は当時、妊娠約六週だった。

 捜査一課によると、女性は「薬をのまされて流産させられた」と昨年末、警視庁に被害を届け出た。女性の自宅に子宮収縮剤の錠剤が残っていた。小林容疑者は女性の妊娠時、既に結婚していたが、女性は流産後に結婚の事実を知り「信じていたのに裏切られた」と話しているという。

 子宮収縮剤は本来、陣痛が来る前に子宮を収縮させて分娩(ぶんべん)を誘発したり、陣痛を促進させるために使われる。

 慈恵医大病院では、専門医が薬剤部に必要な薬剤を発注する仕組みになっているが、子宮収縮剤は小林容疑者が所属していた腫瘍(しゅよう)・血液内科が扱う薬剤でないため、同病院は事件当時の薬剤部の記録を調査している。同病院によると、小林容疑者は二〇〇四年五月から昨年八月まで勤務。「国内留学」として同九月から金沢大付属病院に勤務している。

子宮収縮剤というだけでは、どのような種類のものが使われたか全く分からない。RU486と併用される収縮剤は、単独使用でも初期妊娠を終わらせうる(確実性は下がる)という報告があるが……。まさか中期中絶に使われる薬なのだろうか……日本の病院では、そうした薬はいったいどのように扱われているのか。気になるところだ。

◆「頼られる存在」同僚医師ら驚き 金沢大付属病院

 小林容疑者が勤務する金沢大付属病院では十八日、関係者が情報収集に追われた。

 金沢大付属病院の同僚医師は、小林容疑者のことを「東京から出向してきて、一目置かれる存在」と語る。「上品な感じで物腰が柔らかい。皆に頼られる存在だった。報道された内容が事実なら、期待されていた先生だけに本当に残念」と驚きを隠せずにいた。

 同病院の別の関係者は「非常におとなしい人だと聞いていた」と慌ただしげに話した。

 金沢大広報担当者は本紙の取材に「情報収集している段階で、回答には時間がかかる」と話した。小林容疑者は金沢市内の民間病院など二カ所でも勤務しているという。金沢市内の小林容疑者の自宅マンションには午前十一時すぎ、捜査員が捜索に入った。

 小林容疑者が事件当時、勤務していた慈恵医大病院にも早朝から報道陣が詰め掛けたが、病院側は電話対応のみ。広報担当者は「報道で事実を知り、驚いております。事実であれば、大変遺憾です」とのコメントを発表した。

それにしても……この事件が起きたのは、またしても金沢大。医師の倫理が問われることになりそうだ。

ついでに、東京新聞の用語解説も紹介しておく。

 <不同意堕胎罪> 女性の嘱託や承諾なく故意に妊娠中絶させる行為で、刑法215条で規定。法定刑は懲役6月以上7年以下。中絶行為そのものが刑法上は犯罪だが、母体保護法により経済的、身体的理由など一定条件を満たせば認められている。

こんな事件で、こんな用語が一般の人に知られるようになるとは、なんだかなぁ……。