リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

プレグランディンの承認と事故と国の管理

資料 『生 と死 を巡 る環 境 』一生命観 は この 4半世紀で どう変わ ったか
正木晴彦 長崎大学総合環境研究 第 1巻 第 2号 (1999)

上記資料の年表に以下の2点が書き込まれている。

1984年5月30日 厚生省、小野薬品工業の 「人工流産剤プレグランディン認可」。


1996年12月20日 中央薬事審議会副作用調査会、妊娠中絶薬 「ゲメプロスト膣座剤」で今年 7月以降に子宮破裂が2件発生と報告。商品名 「プレグランディン」は中絶のほとんど(12-21週)で使われるが、副作用も多く起きている。


さらに、なぜ一製造会社の「特約店名簿」を国がわざわざ関与して配布しているのか?
ますます利権が絡んでいるような気がしてならない……。

プレグランディン膣坐剤取扱い特約店名簿の送付について

事 務 連 絡
令 和 2 年 8 月 2 6 日
都道府県薬務主管課 御中
厚生労働省医政局経済課


プレグランディン膣坐剤取扱い特約店名簿の送付について


 本剤については、平成8年9月25日付け薬務局長通知(薬発第874-2号)により、その管理・取扱いの周知徹底をお願いしているところですが、このたび製造販売業者である小野薬品工業株式会社から取り扱い特約店名簿について2020 年6月版の特約店名簿が提出されましたので、送付いたします。


これに応じて、厚生省は次の通知を発している。
○ゲメプロストを含有する腟坐剤(プレグランディン腟坐剤)の管理、取扱いについて

○ゲメプロストを含有する腟坐剤(プレグランディン腟坐剤)の管理、取扱いについて
(平成八年九月二五日)
(薬発第八七四号・児発第八三一号)
(社団法人日本母性保護産婦人科医会長あて厚生省薬務局長・厚生省児童家庭局長連名通知)
 標記医薬品は、妊娠中期における治療的流産を適応とした、母体保護法指定医師のみが使用する医薬品です。
 このような本医薬品の特殊性にかんがみ、その管理、取扱いについては厳重かつ慎重な対応が必要であるとの観点から、関係者への指導、徹底を図ってきたところでありますが、今般、優生保護法の一部を改正する法律が平成八年法律第一〇五号をもって公布されたことに伴い、「ゲメプロストを含有する腟坐剤の管理・取扱い要領」を別添のとおり定めることとしました。
 貴会におかれましても、本要領をご理解の上、各都道府県支部及び会員への周知徹底を図られたくお願いいたします。
 なお、本通知の実施に伴い、厚生省公衆衛生局長・薬務局長連名通知昭和五九年五月三〇日衛発第三七一号・薬発第三七六号「ゲメプロストを含有する腟坐剤(プレグランディン腟坐剤)の管理、取扱いについて」は廃止します。


(別添)
ゲメプロストを含有する腟坐剤の管理・取扱い要領


一 本剤の流通過程における管理

A 一般事項
 (一) 本剤の母体保護法指定医師(以下「指定医師」という。)への提供の単位は五個入りの包装とする。
 (二) 本剤は指定医師又は指定医師のいる医療機関(以下「指定医師等」という。)からの注文により販売されるもので、医療機関への試供品・臨床試用医薬品の提供、薬局での販売等は行われない。
 つまり、本剤は医薬品製造業者↓卸売業者↓指定医師等のルートのみを通じて販売されるものである。

B 医薬品製造業者
 (一) 本剤については(Ⅰ)出庫年月日(Ⅱ)出庫数量・ロット番号(Ⅲ)出庫先を出庫の都度、書面を備え記載し、最終の記載の日から二年間保存する。
 (二) 前項(一)の記載は管理薬剤師が行う。
 (三) 卸売業者から本剤の販売数量等の状況について報告を求め、本剤が指定医師等のみに販売されていることを確認するとともに毎月在庫状況を把握する。
 (四) 前項(三)の報告に基づき、毎月、販売数量、販売先等を各都道府県ごとに分類の上、都道府県医師会及び日本母性保護産婦人科医会都道府県支部(以下「日母支部」という。)に報告する。
 (五) 卸売業者への販売に当たり、保健衛生上の危害を生ずるおそれがあると判断される場合には、当該卸売業者に本剤の販売を行わない。
 (六) 二のDの(三)により都道府県医師会から供給停止要請があった場合には、当該医師会との緊密な連絡の下に所要の措置を講ずる。

C 卸売業者
(一) 本剤については(Ⅰ)入庫年月日(Ⅱ)入庫数量・ロット番号(Ⅲ)出庫年月日(Ⅳ)出庫数量・ロット番号(Ⅴ)出庫先を入・出庫の都度、書面を備え記載し、最終の記載の日から二年間保存する。
(二) 前項の(一)の記載は管理薬剤師が行う。
(三) 管理薬剤師は出庫先が指定医師等であることを確認した上でなければ本剤の出庫を認めてはならない。
(四) 責任者は前記書面の記載内容を毎月医薬品製造業者に報告する。


二 本剤の保管・管理

A 一般事項
 (一) 本剤は冷所(五℃以下)で保管する。
 (二) 本剤の保管場所は他のものの保管場所と明確に区分された、本剤専用のものであることを原則とし、鍵をかける設備があることとする。
 (三) 本剤の有効期間は二年である。外函に表示された使用期限に留意する。

B 卸売業者
 (一) 管理薬剤師は前記二のAに定める事項を指揮監督する。

C 指定医師等
 (一) 病院又は診療所の管理者(以下「病院等の管理者」という。)は本剤の取扱責任者として、(Ⅰ)購入年月日(Ⅱ)購入数量・ロット番号(Ⅲ)使用年月日(Ⅳ)使用数量・ロット番号(Ⅴ)返品(損耗分を含む。以下同じ。)年月日(Ⅵ)返品数量・ロット番号(Ⅶ)施用患者氏名・カルテ番号・施用理由をその都度書面を備え記載し、最終の記載の日から二年間保存する。
 (二) 病院等の管理者は、四半期ごとに、その期間満了後一五日以内に当該日母支部に前項(一)の書面を基に(Ⅰ)~(Ⅵ)及びカルテ番号を報告する。日母支部は六カ月ごとに当該報告を取りまとめ都道府県医師会に送付する。
 (三) 病院等の管理者は、指定医師との本剤の授受について、(Ⅰ)出庫年月日(Ⅱ)出庫数量・ロット番号(Ⅲ)返品年月日(Ⅳ)返品数量・ロット番号を記載し、自ら署名又は捺印した書面により行うものとし、その書面はその完結の日から二年間保存する。
 (四) 病院等の管理者は前項(三)で定める行為を薬剤部(科)長に委嘱することができる。
 (五) 指定医師は、本剤施用の都度(Ⅰ)施用年月日(Ⅱ)施用にあたって受理した数量・ロット番号(Ⅲ)実際に施用した数量・ロット番号(Ⅳ)未施用(損耗分を含む。以下同じ。)の数量・ロット番号(Ⅴ)施用患者氏名・カルテ番号・施用理由(Ⅵ)未施用分の返却年月日・返却先を帳簿を備え自らの署名又は捺印とともに記載し、その内容を病院等の管理者に報告するとともに、最終の記載の日から二年間保存する。
 (六) 前各項は、病院等の管理者、薬剤部(科)長、指定医師等の関係者が相互に緊密な連携を保ちながら行うものとする。
 (七) なお、指定医師本人が病院等の管理者である場合においては、指定医師は病院等の管理者に定められた行為を行うものとする。

D その他
 (一) 都道府県医師会及び日母支部は必要に応じ、医薬品製造業者、卸売業者から本剤の出庫数量、販売数量、販売先等に関する報告を求めるものとする。
 (二) 都道府県医師会及び日母支部は必要に応じ、指定医師に対し本剤の取扱い等に関する指導を行うものとする。
 (三) 前項(二)の指導に従わない等、本剤の取扱いを指定医師等が適正に行うことができないと判断される場合においては、都道府県医師会は日母支部と協議の上、当該指定医師に対する本剤の供給停止要請等所要の措置を講ずる。


三 本剤の適応、使用上の留意事項

A 適応範囲
 (一) 本剤の適応は「妊娠中期の治療的流産」に限定されている。
 なお、妊娠中期とは子宮内容を通常の分娩様式で娩出できるおおむね妊娠一二週から同二二週未満までをいう。

B 使用上の留意事項
 (一) 本剤は指定医師が投与すること。
 (二) 本剤の投与(挿入)は、入院の上厳重な監視の下で行うこと。
 (三) 通常一回一個(一mg)を三時間ごとに後腟円蓋部へ挿入する。一日最大投与量は五個
(五mg)とすること。
 (四) 本剤は生児を出産する際の分娩誘発には使用しないこと。
 (五) 本剤投与により子宮内容物の排出が認められた後、器械的子宮内容清掃術を必要とする場合があることに留意すること。
 (六) 中期中絶時に併発しやすい諸異常(子宮破裂、頚管裂傷、異常出血など)を予測し、本剤挿入のたびに子宮収縮の状態と子宮頚部の軟化度、頚管の開大度、血性分泌物の量、子宮内容物の排出の程度を注意深く観察すること。また、場合によってはラミナリア杆等を挿入し、頚管を開大させた後、本剤を投与すること。
 (七) 禁忌(次の患者には投与しないこと。)
 一) 前置胎盤、子宮外妊娠等で操作により出血の危険性のある患者。(経腟分娩ができず、大量出血のおそれがある。)
 二) 骨盤内感染による発熱のある患者。(炎症、感染を増悪させるおそれがある。)
 (八) 慎重投与(次の患者には慎重に投与すること。)
 一) 緑内障、眼圧亢進のある患者。(類似化合物のプロスタグランジン E1で眼圧を上昇させる作用が報告されている。)
 二) 頚管炎又は腟炎のある患者。(炎症、感染を増悪させるおそれがある。)
 三) 帝王切開又は子宮切開等の既往歴のある患者。(子宮が脆弱になっていることがあり、過度の子宮収縮による破裂の危険がある。)
 四) 多胎妊娠、多産婦の患者。(子宮が脆弱になっていることがあり、過度の子宮収縮による破裂の危険がある。)

C 本剤の副作用
 (一) 重大な副作用
 子宮 子宮破裂、子宮頚管裂傷が表れることがある。
 (二) その他の副作用
 一) 循環器 ときに血圧上昇及び降下、心悸亢進等が表れることがある。
 二) 過敏症 ときに発疹、かゆみ等が表れることがある。
 三) 消化器 悪心、嘔吐、下痢等が表れることがある。
 四) その他 発熱、ときに頭痛、下腹部痛、腰痛、めまい、顔面潮紅、悪寒、また、まれにのぼせ感が表れることがある。

D その他
 オキシトシン、ジノプロストとの併用により、子宮破裂、子宮頚管裂傷が表れたとの報告がある。

E 本剤の使用に当たっては、添附文書を熟読し、インフォームド・コンセントに十分留意すること。


四 その他
 国は本剤の管理・使用・取扱い等に関し、必要に応じ報告の提出を求めるほか、適切な指
導監督を行うものとする。


 なぜ、ここまで麻薬のような管理が必要なのか? それほど「危険」な薬であれば、世界中でより安全性が高いことが確認されているミソプロストールのような薬に切り替えていかないのか? わざわざ国が関与してまで厳重管理が必要で、現場でも保管にも気を使わねばならない危険な薬しか、この国では使っていないのか。