リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

でき婚と中絶 福島のケース

福島県が《「できちゃった婚」の割合、全国3番目 中絶も4番目》という記事(文 池田拓哉記者)がasahi.comのMY TOWN福島に載っています。

 妊娠してから結婚する「できちゃった結婚」の割合が、県内は全国で3番目に高い。子どもの誕生は等しく喜ばしいが、無計画な妊娠は時に中絶の悲劇もはらむ。県内では、中絶に踏み切る割合も全国で4番目に高い。医師や助産師は避妊や出産の正しい知識を子どもも大人も理解するよう、社会全体で性教育に取り組む必要性を訴える。

 厚生労働省の「出生に関する統計」によると、2009年中に最初の子どもを産んだ全国の女性のうち、結婚前に妊娠したいわゆる「できちゃった結婚」は25.3%だった。年齢層が若いほど割合が高く、15〜19歳は約8割、20〜24歳は約6割、25〜29歳は約2割、30歳以降は約1割だった。都道府県別で福島は36.7%で沖縄、佐賀に次いで3番目に高かった。

「でき婚」は、予定外妊娠もしくは「不慮の妊娠」とでも呼べる事態を「望まれた妊娠」に変える特効薬の役目をはたしている可能性があります。

 一方、県内の人の中絶率は低下傾向にあるが、全国平均よりも高い状態が続いている。2004年度以降は全国で5番目以内だ。

 同省の「衛生行政報告例」によると、09年度に中絶した女性は全国で1千人あたり8.2人で、福島は11.7人。鳥取、佐賀、福岡に次ぎ、全国で4番目に高かった。

こうした状況を改善するために、福島県では性教育を強化し、効果を上げてきたようです。この記事からは、かつて10代の中絶率が全国3位だったことで、様々な形で正しい性情報の普及に努めた形跡がありありとうかがわれます。

かつては10代でも中絶率がかなり高く、02年度は1千人あたり20.5人で全国で3番目だった。こうした状況を改善しようと、県は06年度から高校1年生を対象に、避妊や出産など性の知識を盛り込んだ小冊子を配り、授業などで活用している。県内6カ所に電話相談窓口「思春期相談ほっとライン」を設け、青少年の性の悩みにも応じている。

 さらに06年度から3年間は高校生の親を対象とした性教育の勉強会を開催。保健師が講師を務め、3年間で約3600人の親らが参加した。

 09年度の10代の中絶率は1千人あたり8.1人に減った。

ところが、性教育だけでは20代以上の年齢層での中絶率が下がらない。

 年齢別でみると、10代では16番目だが、20〜24歳で3番目、25〜29歳と30〜34歳では2番目、35〜39歳で5番目、40〜44歳で4番目。全国の傾向に比べ、県内では20代以上で割合が高いようだ。

成人に関しては、手をこまねいているんですね。その理由としてひとつ考えられるのが、「予期せぬ妊娠」をしたときに、10代だと親がかりで(あるいは当人が熟慮しないままに)産むことにしているが、20代以上になると親の意図が働きにくくなるのと同時に、結婚についても冷静な判断をするようになるため、中絶が増えているというシナリオ。

つまり、「予期せぬ妊娠」自体はさほど減ってない可能性があります。どのような「性教育」が行われているのか、一歩踏み込んで調べる必要がありそうです。

(分析のために記事中の文章の順番を変えています。)