武蔵野市の産婦人科病院で、母体保護法指定医ではない医師が中絶手術を行った数日後に女性が死亡して、「指定医でなかった」ことに注目が集まっているようです。もちろん、現在のルールでは「母体保護法指定医」でなければ合法的に中絶を行ってはいけないというのが日本のルールですから、ルールに違反したことは問題かもしれません。
でも、それでは母体保護法指定医が行っていたら死亡事故は起こりえなかったのかと言えば、話はまた別でしょう。
今回の手術で具体的にどのような処置が行われたのかは、まったく明らかにされていません。妊娠週数も分かりません。なので杞憂かもしれませんが、その手術が世界スタンダードの中絶方法ではなく、比較的リスクの高い方法で行われたのではないかということが気になっています。問題なのは資格の有無ではなく、選択された術法の問題かもしれません。
日本では、たとえ母体保護法指定医が行う中絶の場合でも、世界的に見ると「安全でない中絶」が行われているのです。WHOが推奨している方法の一つ(プラスチック製カニューレを用いた妊娠初期の吸引法)を用いる医師もようやく増えつつありますが、その場合でも一律に全身麻酔をすることがほとんどで、妊娠初期にも中期にも安全に使えることが確認されてWHOが推奨している人工流産薬ミフェプリストンが日本では未認可であるため、とりわけ妊娠中期で中絶をする日本女性は「分娩」と同じ形で胎児を娩出するという辛い経験を強いられています。おまけに、カウンセリングやインフォームド・コンセントも欠落している医療施設が多いようです。
日本の中絶医療は変わっていかねばなりません。
まずは「女性の自己決定」「リプロダクティヴ・ヘルス&ライツ」を尊重した体制づくりが望まれます。
そして、世界ですでに安全性が確認されている中絶の技術とケアを取入れる必要があります。
それと同時に予定外の妊娠を減らしていくために、避妊や妊娠に関する知識を広める教育や広報活動も必要です。
どこから手をつけていけばいいのか、自分に何ができるのかと考えています。