リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

ルポ貧困女子 飯島裕子著

忘備録

婚活ブームに関して興味深いデータが集められているので、メモしておきます。

  • 2009の流行語「婚活」~最初に用いたのは社会学山田昌弘少子化ジャーナリスト白河桃子(『「婚活」時代』ディスカヴァー・ツウェンティワン 2008年)(p.141)
  • 1965年以来、長期にわたって、恋愛結婚全盛の時代が続いてきたが、婚活ブーム以降、かつての見合い結婚に近い形の知人からの紹介や結婚情報サービスを使う人も増えてきている。こうした婚活ブームの背景には、「負け犬」の先に待っている無縁社会への恐怖もあったに違いない。(p.142)
  • 震災後、結婚に向かう人も増えた。ある百貨店では、震災翌月の婚約指輪の売り上げが通常より四割増え、結婚情報サービスの資料請求や入会が軒並み増加したという。女性誌では「「いますぐ結婚したいっ!」はダメですか? 寄り添いたいからキズナ婚:(『MORE』2011年9月号)などの特集が組まれている。(pp.142-3)

少子高齢化に対する施策についても。

  • 安倍政権は、女性の活躍を成長戦略の柱とし、女性が働き、子を産み、育てやすい環境を整えるため、としてさまざまな政策を打ち出している。

 しかし、少子高齢化社会に対する施策は、安倍政権成立のずっと以前から進められてきた。

  • 「改正育児・介護休業法」(2001年)」
  • 「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」(2007年) (以上、p.143)
  • 2015年9月第三次安倍内閣成立と同時に「一億総活躍社会」実現が掲げられ、新「三本の矢」の一つとして、「夢を紡ぐ子育て支援」(希望出生率1.8)が大々的に掲げられた。……政府は早速、子育て支援として「三世代同居・近居の推進」を閣議決定したほか、待機児童ゼロへの「積極的取り組みを行う」としている。(pp.143-4)
  • また同じ月に菅義偉官房長官は、国民的人気俳優と女優の結婚に対して、「結婚を機に、やはりママさんたちが、一緒に子どもを産みたいとか、そういう形で国家に貢献してくれればいいなと思っています」と発言。(p.144)

*産経ニュースによれば、『正論』10月号に八木秀次(麗澤大教授)が「福山雅治さん、ぜひとも「国家に貢献」を!」という記事を寄せている中で、菅義偉内閣官房長官が9月29日のテレビ番組で行った発言として引用している。この引用によれば、最後に「たくさん産んでください」とも付け加えていたようだ。https://www.sankei.com/premium/news/151109/prm1511090007-n1.html

  • トップアイドル(23歳)がフジテレビ系のトークショーに出演した安倍首相を前に、「体の限界がくるまで子どもをたくさん産んで国に貢献したい。しっかり仕事もします」といった趣旨の発言をしている。(pp.144-5)

Biglobeニュースによれば、この発言主はHKT48指原莉乃
https://news.biglobe.ne.jp/entertainment/0503/mcz_160503_4167370363.html

  • 「出産」「国家」「貢献」といったキーワードが結びつき、戦前の「産めよ殖やせよ国のため」を連想させられる。(p.145)

以下の表も役立ちそう。

表5-1 近年の少子化対策関連法等一覧
1994年 エンゼルプラン
2000年 新エンゼルプラン
2001年 改正育児・介護休業法
2003年 次世代育成支援対策推進法少子化社会対策基本法
2004年 少子化社会対策大綱、子ども・子育て応援プラン
2007年 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章
2010年 子ども・子育てビジョン
2013年 待機児童解消加速化プラン
2015年 一億総活躍――希望出生率1.8

おまけ。

  • 安倍政権は成長戦略の柱として、女性活躍推進を掲げてきた。しかし、女性活躍に関わる政策はいずれも、日本の喫緊の課題とされる少子化対策と表裏となっているものばかりだ。そに違和感と窮屈さを感じる人は少なくないだろう。
  • かつて”女性は産む機械”というストレートな発言をし、集中砲火を浴びた大臣がいた。しかし経済的功利と少子高齢化対策のため、女性活躍を推進するという発想は、女性を”モノ扱い”するのと同じであり、この発言と同根ではないか。(p.162)

*以下、Wikipediaより
柳澤 伯夫(やなぎさわ はくお、1935年8月18日 - )は、日本の大蔵官僚、政治家。
2007年1月27日、島根県松江市で開かれた自民党県議の集会で『これからの年金・福祉・医療の展望について』を議題に講演した際、少子化対策について、「機械って言っちゃ申し訳ないけど」「機械って言ってごめんなさいね」との言葉を挟みつつ、「15-50歳の女性の数は決まっている。産む機械、装置の数は決まっているから、あとは一人頭で頑張ってもらうしかない」と女性を機械に例えた発言として報じられた。
(出典: “女性は「産む機械、装置」 松江市柳沢厚労相”. 共同通信社. 47NEWS. (2007年1月27日) 2014年4月19日閲覧。)