リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

FIGO STATEMENT: Abortion access and safety with COVOD-19

2020年3月30日 FIGO声明

Abortion Access and Safety with COVID-19 – March 2020 guidance | Figo

試訳します。

COVID-19に伴う中絶へのアクセスと安全性


 COVID-19クライシスは、入院患者や外来患者、救急医療、外科的サービスを含む医療システムにかつてないほどの緊張をもたらしている。このような制約にかかわらず、女性は安全な中絶へのアクセスを含め、セクシュアル&リプロダクティブ・ヘルスケアを常に必要としている。実際、この危機が人々の生活に与える甚大な影響により、妊娠の予防、COVID-19への曝露などの要因の影響を受けた妊娠の継続、収入の喪失、およびパンデミックによってもたらされた他の多くの健康上の懸念を含むリプロダクティブ・ヘルスケアの必要性が高まることを意味していると思われます。さらに女性に対するレイプや家庭内暴力のリスクも高まると考えられる。


 今もなお進展しているCOVID-19クライシスによって、避妊や安全な中絶サービスへのアクセスが制限されつつあり、最も貧しく、最も疎外された女性や女児が最悪の影響を受けている。ネパールの山間部からケニアの平原まで、サプライチェーンの混乱が薬や避妊薬の不足をもたらしている。経済的な不安によって、人々のサービスに対する支払い能力は制限されている。感染症により医師や看護師の人員は減りつつある。検疫、渡航禁止、国境の閉鎖により、安全なサービスへの物理的なアクセスがますます困難になっている。


 世界では、毎日約15万件の妊娠が中絶で終わっている。COVID-19のパンデミックが拡大し続ける中、医療サービスと医療システムは膨れ上がり一部では限界まで張りつめた状態にある。安全な中絶の提供は、非常に時間的な制約があり、忘れてはならない重要な保健サービスである。これは女性の健康管理に不可欠な要素であり、緊急ではないサービスや選択的なサービスが中断されている場合でも維持されなければならない。中絶ケアへのアクセスは時間的な猶予がなく、これを遅延してしまうと、女性たちは中絶不可能な時期に追いやられ、すでに困難になっている手術サービスにさらなる負担がかかり、医療従事者をさらなるリスクにさらすことになる。


 中絶による死亡率と罹病率は低く、妊娠を継続する場合に比べてもより低い。妊娠8週目以降、リスクは妊娠週数が増えるにつれ急激に増していく。中絶へのアクセスが自由であるか制限されているかによって中絶率は変わらないということは立証されているが、アクセスが制限されている場合に、女性たちが医療制度の規制を受けないところで安全でない中絶に頼る可能性は高くなる。このような状況は、女性とその家族、そして医療制度にとって有害である。


 しかし、医療システムへの圧力を緩和し、提供者を解放し、救命サービスへのアクセスを確実に維持するための効果的で簡単に実施できる解決策がある。その解決策には、遠隔医療、ミフェプリストンとミソプロストールへの容易なアクセス、不必要な待機期間の廃止、中絶の安全性に的を当てたデジタル患者教育の取り組み、さまざまな環境における中絶の利用可能性を現地の法律の範囲内で確保することなどが含まれる。


 遠隔医療は、診療所を訪れることなく妊娠初期の中絶を行える安全でプライベートな方法であり、遠隔地で暮らす女性や育児のために家を離れられない女性と同様に、孤立した状況にある人にとっても重要なものである。今回のCOVID-19のパンデミックの間、遠隔医療は女性を保護し、女性たちの喫緊の医療ニーズに応える手段となる。安全で効果的な中絶サービスを提供するために、対面診療が不可欠でないことは明らかであり、世界保健機関(WHO)は、女性たちが安全に自己管理中絶を行うために、適切な情報を提供し、プロセスのどの段階でも医療サービスが必要になったり、受けたいと思ったりした際にはいつでもアクセスできるようにすることを推奨している。


 この現代的で実用的な中絶ケアの方法は、すでにマリー・ストープス・オーストラリアで使われてきた。英国では、ウェブを介して医師に相談したり、離れたところから医療にアクセスしたりするために遠隔医療が利用されている。しかし、中絶の提供を規定している1967年の法律では、望まない妊娠をしている女性にそのような方法を取ることを認めていない。しかしながら、COVID-19のクライシスの間は、女性やその医療従事者への感染拡大を最小限に抑える必要性に応じて、イングランドウェールズの保健省は、病院や診療所に通うことなく妊娠初期の中絶に必要な2種類の錠剤を女性が自宅で服用できるようにするために必要なシンプルな変更を行うことを発表した。この事例が他の国々でも変化が起こるきっかけになることが期待されている。米国では、選択的医療処置の中止を中絶へのアクセスを妨げる手段として利用している州も出ている。ACOGが指摘するように、世界の多くの国では中絶治療のほとんどは外来で行われており、たとえばインドでは90%以上が外来診療で行われているが、なかには入院や手術施設が必要になるケースもある。中絶は我々の医療システムにとって不可欠な要素であり、時間的な制約のある手続きである。数日間あるいは数週間でも中絶が遅れれば、女性の健康と幸福に多大な影響が及ぶ可能性がある。


 インドは最も早く妊娠20週まで様々な理由による中絶を合法化した国の一つであり、現在、法律を最新の内容にすることが試みられている。世界の多くの国々で中絶とリプロダクティブ・ライツが脅かされている今、インドの中絶法の改正のタイミングと範囲は、COVID‐19のパンデミックでサービスがどのように継続されていくかは不明であるものの、とりわけ称賛に値するものである。


 FIGOは医療サービスを支援しており、医療サービスは持続可能で弾力性のあるものでなければならない。FIGOはこれら未知の領域を進んで行きながら女性に安全なサービスを提供するために献身しており、各国政府にも同様の献身を求める。人々の命を救い、医療サービスへのさらなる負担を防ぐために、迅速に変化を進める必要があり、また安全でない方法を求めざるを得ない女性たちを守るために、長期的な変化も必要である。


 女性たちは常に中絶を必要としている。女性が安全に尊厳を持って中絶にアクセスできるかどうかは、我々一人一人が中絶提供というチャレンジに立ち向かっていくかどうかにかかっている。