リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

Supreme Court Strikes Down Louisiana Abortion Restrictions

ルイジアナの中絶規制を最高裁が否定!

アメリカってつくづく不思議な国だと思います。

近隣の病院に「入院特権要件」*1を持っている中絶クリニックでなければ、中絶できない……という主張が、否定されました。

不当な負担を課している……という判断です。

そもそも、「入院特権」がなくても、何かトラブルがあった女性は病院に受け入れられているし、そういう事態に陥る女性は、23年間に3000人の中絶患者がいたHopeクリニックでも4人しかいなかったというのです。0.1%いるかどうかという話です。

でも、この裁判が日本で起きていたらどうなっていたのかなーと思うと、ちょっと怖いです。

完璧な黒をいやいや白だと言いくるめる日本よりも、アメリカの司法の良心は少しはマシなのかなーと思いました。

タイトルに示したのはNY Timesの記事の見出しです。
Louisiana Abortion Law Struck Down by Supreme Court - The New York Times

abc newsはタイムラインが分かりやすかったので貼り付けておきます。
Supreme Court hands down major decision reaffirming abortion rights in Louisiana case - ABC News

CNNの記事も読みやすい。
Supreme Court: John Roberts sides with liberals to block controversial Louisiana abortion law - CNNPolitics


判決文も貼り付けておきます。
JUNE MEDICAL SERVICES L. L. C. ET AL. v. RUSSO,

この*ルイジアナの中絶規制を最高裁が否定!


以下のPodcastで裁判長のロバーツが驚きの一票を投じた理由があれこれ推察されています。本当にどんでん返しのような意外な判決だったんだなーということが分かります。スクリプトもあるし、リスニングの練習にもってこいかも。
Listen to ‘The Daily’: A Major Ruling on Abortion
A Major Ruling on Abortion - The New York Times

日本語でも続々と報道され始めたようです。JIJI.COMの記事を貼り付けておきます。

中絶規制の州法は違憲 米最高裁、判例を踏襲

 【ワシントン時事】米連邦最高裁は29日、妊娠中絶を行う医師に厳しい条件を課す南部ルイジアナ州の州法を違憲とする判断を下した。トランプ政権で保守派が最高裁の多数派を占めて以降、妊娠中絶が争点になる初めてのケースで、最高裁の判断が中絶禁止へと傾くかが注目されていた。トランプ大統領は中絶反対の姿勢を打ち出しており、政権は今回の判決に反発している。
歴史的な米中絶合法化裁判の原告女性、金銭と引き換えに反中絶派の顔に

 判決は5対4で、保守派のロバーツ長官が4人のリベラル派判事と共に違憲判断を支持した。ルイジアナ州法は、中絶手術で問題が生じた場合、近隣の病院に患者を引き受けてもらう同意を取り付けていない医師に手術を認めない内容。ほぼすべての州内の医師が手術できなくなるとされ、中絶容認派から「事実上の中絶禁止」という批判が出ていた。

BBCの日本語の記事はこちら。
中絶規制のルイジアナ州法は違憲、女性に不当な負担=米最高裁 - BBCニュース

*1:これまで「入院枠」としてきましたが、根本猛先生の訳を使うことにします20200704のブログ参照