リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

戦後の死産届に関する疑惑

自然死産のうち相当数が中絶だった可能性も

戦後の自然死産届け出数が異様に多いことに気づいて、複数の統計を組み合わせてグラフを作ってみました。

f:id:okumi:20210613154511p:plain
総出産数と中絶数、死産率

戦前、おそらく医学的な改善のために減少の一途をたどってきた戦後の自然死産数が非常に高いこと、おそらくそのためもあって周産期死亡率が本来より高くなっていたことが疑われる。

自然死産率が戦前(4%程度)と同等になっていくのは1970年代であり、人工死産と合わせて出産のうち1割が死産だった時期も長い。

f:id:okumi:20210613161501p:plain
死産の変遷

そのように死産が多かったことは掻爬による中絶のスティグマ化と合わせて、日本人の中絶観に相当な影響を与えている可能性がありそうだ。しかも、中期中絶後にじつは生きて産まれた嬰児をあえて放置するなどして死なせている施設もあったとする内部告発本などもある。実際には人工死産でありながら、あるいは実際には生産していたにも関わらず、自然死産であったと偽って報告していた例も、もしかしたら少なからずあったのかもしれないと疑われる。

こうした疑いはいまさら明らかにすることはできないにしても、グラフに見られる通り、戦後の「自然流産」の微増となかなか減少しなかった傾向には何か不自然なものを感じずにはいられない。

予備情報として、日本で合法的な中絶が満8カ月未満と定められたのは昭和28年(1953年)、妊娠24週未満に変更されたのは1976年(昭和51年)、妊娠22週未満に変更されたのは1991年(平成3年)である。
日本産婦人科医会の人工妊娠中絶の定義参照。

データは以下などを参照。
令和元年(2019)人口動態統計の年間推計|厚生労働省
令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況|厚生労働省
http://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2020.asp?fname=T04-20.htm
http://www.chugaiigaku.jp/upfile/browse/browse1186.pdf