リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

日本の中絶法規

こんな法律もあったのか……

ASAJのメンバーに教わりました。

医師法」 第二十一条 医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に所轄警察署に届け出 なければならない。

あらためて「死産」で検索をかけていたら、次の記述が見つかりました。ついでに、独占禁止法の議論があったとの記述も見つけたので、そこからコピペします。ふと思ったのですが、メフィーゴパックで体外に出てくるのは「胎嚢」と言われており、実は「胎児」がまだ存在していないのですよね。堕胎罪も「自然の分娩より前に、人為的に胎児を母体から分離・排出する罪」と考えられており、母体保護法にも刑法堕胎罪にも当たらないのではないのでしょうか……。

日産婦誌59巻3号研修コーナー

(2)人工妊娠中絶
1)定義の確認
人工妊娠中絶とは,胎児が,母体外において,生命を保続することのできない時期に,人工的に,胎児およびその附属物を母体外に排出することをいう.と定義されている.
胎児が生命を保続することができない時期については,昭和28年では,妊娠 8 月未満,昭和51年では,妊娠満24週未満,平成 2 年には現行の妊娠22週未満となっている.これらの時期に関しては,いずれも厚生事務次官通知による.また,附属物とは,胎盤,卵膜,臍帯,羊水のことである.
2)人工妊娠中絶と他の医療との差異
人工妊娠中絶手術は,次の諸点において,中絶以外の医療行為とは大きい差異がある.
①人工妊娠中絶の影響は大きい
本来,この手術は,個人の生命,健康の保持・増進の目的をもって行うものであるが,妊娠が成立する背景には多くの複雑な社会事情が存在している.これには,人口問題や社会道義,秩序とも深いつながりをもっている.
②指定医師のみが行いうること
人工妊娠中絶手術は,指定医師のみが行い得るもので,指定医師以外は行うことができない.このことについては,過去,指定医師以外と指定医師の格差,独占禁止法との関係について激しく協議された時期もあるが,現行のままというところに落ち着いている.
母体保護法に定められた適応(表 2 )のある場合にのみ行い得ること
母体保護法により規定されている.したがって,この適応を無視した場合は母体保護法違反となる.
④中絶は患者の求めに応じて行うものではないこと
中絶以外の医療については医師法第19条(後述)にあるように拒むことができない.
本手術は患者の求めに応じ,希望によって行うものではなく,中絶の適応があると指定医師が判断した場合にのみ行うべきもので,この点が前述の医療法との大きな差異がある点である.つまり,適応がないと指定医師が判断した場合には,これを拒まなければならないということである.
⑤人工妊娠中絶後は届出の義務があり(第25条),これに反した場合には罰則があること(第32条)も知っておかなければならない.

4.母体保護法とその他の主な関連法
(1)母体保護法軽犯罪法
母体保護法と無関係に思われる軽犯罪法の中にも,第 1 条18項に自己の占有する場所内に,老幼,不具若しくは傷病のため扶助を必要とする者または人の死体若しくは死胎のあることを知りながら,速やかにこれを公務員に申し出なかった者.とある.
すなわち,胎児の死体を発見した場合は,所轄の警察へ届出の義務が課せられている.
(2)母体保護法医師法
母体保護法と関連する医師法には,以下の条項が存在しこれらを遵守しなければならない.
医師法19条(診療に応ずる義務等)2 項に,診察若しくは検案をし,または出産に立ち会った医師は,診断書若しくは検案書または出生証明書若しくは死産証書の交付の求があった場合には,正当の事由がなければ,これを拒んではならない.
医師法第20条(無診察治療等の禁止)には,医師は自ら診察しないで治療をし,若しくは診断書若しくは処方箋を交付し,自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証明書を交付し,または自ら検案をしないで検案書を交付してはならない.但し,診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については,この限りではない.
医師法第21条(異状死体等の届出義務)には,医師は,死体または妊娠 4 月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは,24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない.
5.妊娠中絶実施前後の書類
妊娠中絶の実施前とその後では,必要な書類の作成・提出が妊娠週数によって定められている.
(1)妊娠中絶実施前
人工妊娠中絶は患者の求めや希望であっても,法に定められた適応がないと指定医師が判断した場合には行うべきではない.母体保護法第14条には,2 項の適応基準が存在するが,第14条 1 項の内,身体的理由,経済的理由の認定基準を以下に示す.なお,第14条 2 項はその状態を把握するのは非常に難しい.刑事事件として被害届が出る場合は,現在各県によって若干の差異はあるものの担当警察官が立会い,その状況を把握している
ので被害者が妊娠した場合には,その確認を行うことを勧める.しかし,被害届の出ていない場合には本人の話しだけでの状況判断は危険であり,保護者や第 3 者となる者との十分な了解を必要とする.
1)身体的理由の認定基準
医学的適応については,母体に何らかの疾患があり,妊娠・分娩によって悪化して,母体の健康がそこなわれ生命を危うくすると予想される場合である.
①疾患を有している母体の場合
カルテには単に病名だけを記載でなく,
a.その疾患が治療を要すべき状態であったかどうか
b.具体的な治療内容を記載するとともに
c.その疾患に対する主治医の診断書
をとっておくことも勧める.
疾患によっては一過性であって,適切な処置・治療によって妊娠中に経過,治癒すると思われるものは中絶の適応にはならない.
例えば,感冒,インフルエンザ,風疹,トキソプラズマ,梅毒,淋疾などである.
②妊娠経過に異常がある場合
例えば重い妊娠悪阻があり治療によっても悪化して,母体の健康が著しく害されるおそれがある場合などである.
流産や胞状奇胎は治療であるので人工妊娠中絶ではない.
③現在特別の疾患はないが,身体虚弱で妊娠の継続,分娩によって健康を著しく害すると予測される場合
特に疾患がない場合には,妊娠を持続することにより母体の健康を著しく害するおそれがあると認められると,カルテ・中絶報告書に記載する.
2)経済的理由の認定基準
経済的理由は母体の健康がそこなわれるおそれがあるための一要件である.
医師による「経済的理由」の判断は甚だ困難であるが,現在なお存続する厚生省の運用通知(昭和28年 6 月12日厚生事務次官通知)には,この条項の該当理由として次のように指示している.
①現在生活扶助,医療扶助を受けているか,またはこれと同様な生活状態にある場合
②生活の中心になっている本人が妊娠した場合
③上に該当しなくても,その世帯が妊娠の継続または分娩によって生活が著しく困窮し,生活保護の適用を受けるに至るべき場合
①の場合には明らかに認定できるが,それ以外の場合には,家族の構成,生活の中心が誰であるのか,収入はどの位あるのかなどを聴取すること.また,人工妊娠中絶を受ける者が妊娠,分娩によって如何なる身体的障害を受けるおそれがあるかを記載しておく必要がある.
3)同意書
①人工妊娠中絶の同意書
母体保護法による不妊手術または人工妊娠中絶を実施するには,すべての場合に本人の同意と配偶者の同意を得なければならない.
配偶者とは,
a.民法上に記す届出によって成立した婚姻関係にあるもの
b.届出はしていないが実質的に夫婦と同様の関係にあるもの
民法上の規程が適応される.ただし,母体保護法では本人および配偶者が成年に達しているかどうかは問題にされていない.したがって,一方または双方が未成年者であっても適法な同意を行うことができる.ただし,不妊手術の場合は,未成年者は適法な同意をすることはできない.
②中絶方法と麻酔に関する同意
一般の手術と同様,人工妊娠中絶を行う場合にも,具体的な中絶方法,麻酔を必要とする場合,それらに対する説明と同意を得ておくことは必要なことである.
③外国籍者の中絶希望者
国籍が日本国籍を有している外国人は別として,外国籍の者が妊娠中絶を希望する場合には,外国人登録の有無などの確認以外に,配偶者の同意を表示する電報その他の文書をとっておくこと,適応項目は国によって異なる.それぞれの適応要件に関するその国での事実関係の有無の確認,宗教上の事由なども十分確認する.したがって,特に緊急を要する場合を除いては,帰国後にその国の方法による処置が行われることが望ましい.
(2)妊娠中絶実施後の書類
妊娠中絶実施後の書類記載にあたって,まず,用語の整理をする必要があるので記載する.
1)死産の定義
死産とは,妊娠12週以後における死児の出産をいい,死児とは,出産後においても心臓膊動,随意筋の運動および呼吸のいずれをも認めないものをいう.
なお,届出は 7 日以内に出さなくてはならない.
①人工死産
胎児の母体内生存が確実であるときに,人工的処置を加えたことにより死産に至った場合をいう.
人工的処置とは,胎児または附属物(病的附属物を含む)に加えた措置および陣痛促進剤の使用をいう.
②自然死産
人工死産以外の場合はすべて自然死産とする.
人工的処置を加えた場合でも次のものは自然死産とする.
a.胎児を出生させることを目的として,人工的処置を加えたにもかかわらず死産した場合
b.母体内の胎児が生死不明であるとき,または死亡しているときに人工的処置を加えて死産した場合
と定義されている.
2)母体保護法による人工死産
母体保護法に基づいて人工妊娠中絶を行った場合を,人工死産のうち,母体保護法による死産とする.
この場合,人工妊娠中絶報告書の他に,死産の届出も必要である.
3)母体保護法によらない人工死産
母体保護法第14条 1 項に定める指定医師によらない人工妊娠中絶で胎児が母体外において生命を保続することができる時期(妊娠22週以降)における人工死産がこれに該当する.
これは主に,母体の生命を救うための緊急避難の場合等に限られている.この場合は,指定医師である必要はない.
(2)―1)死産証明書
死産証明書(死体検案書)の作成は,妊娠12週以後の死産が該当する.なお,妊娠12週以後の死産であっても,次の場合は死産証明書(死体検案書)を作成する必要はない.
・子宮内容物が胎児の形を成していない場合
・胎児を認めない場合
・妊婦が死亡し,胎児の死亡も確実な場合
(2)―2)中絶実施報告書と死産証明書との関係
指定医師ばかりでなく,産婦人科医師であれば以下の届出については熟知していなければならない.中絶実施報告書,死産証明書と妊娠週数との関係を以下の表 3 に示す.
①妊娠12週未満
妊娠12週未満の場合,指定医師は中絶の実施報告書を記載し届出る必要がある.しかし,死産証明書の用紙記載,死産届は必要ない.
②妊娠12週以後~22週未満
妊娠12週以後~22週未満の場合,指定医師が行った人工妊娠中絶後は,中絶実施報告書を提出する.
中絶実施報告書が不要な場合(法第38条)もある.とは,死産証明書の証明者と死産の届出人が同一医師である場合であり,実際には殆どあり得ない.
死産証明書の死産の自然人工別欄,2.母体保護法による人工死産に〇を記して,その下段にある母体保護法による場合で人工死産の場合の欄に 1.母体側の疾患による場合には,その疾患名を記載する.2.その他とは,経済的理由または暴行,脅迫による妊娠などである.
③妊娠22週以降
妊娠22週以降の場合,母体保護法に関係なく,母体の生命の危険を救うための緊急避難行為で行い,不幸にして死産になった場合である.医療行為であり,母体保護法の適応外である.したがって,指定医師以外の医師も記載する必要があり,この場合,中絶実施報告書の記載は不要である.
死産証明書には,自然死産に〇を記して証書を完成させる.ただし,緊急のためやむを
えず生胎児に尖頭術などを行った場合には,人工死産・母体保護法によらないものに〇を記して証明書を完成させる.
胎児死亡の時期については,分娩前とは陣痛の開始前をいい,分娩中とは陣痛開始から胎児が娩出し終わるまでをいう.なお,陣痛開始前の帝王切開分娩においては,執刀開始から胎児が娩出し終わるまでの間の胎児死亡は分娩中とする.
死産証明書は,死産した児の数分を作成することを忘れてはならない.例えば,品胎( 3 胎)の場合,2 児が死産で,1 児が生児の時で,取り出した順により,3 子中第 1 子が死産,第 2 子が生児,第 3 子が死産の場合には,出生証明書 1 通,死産証明書を 2 通作成する.単胎・多胎の別の欄には,死産証明書 2 通のうち,3 子中第 1 子,3 子中第 3子と対応する数字をそれぞれ記載する.