リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

公園トイレで出産し遺棄、未婚中絶へ「男性同意」が壁に…堕胎時期を逃す

病院はトラブルおそれ「念のために同意書」を求める

公園トイレで出産し遺棄、未婚中絶へ「男性同意」が壁に…堕胎時期を逃すyomiuri 2021/9/24

愛知県西尾市で昨年6月、当時20歳の未婚女性が公園のトイレで赤ちゃんを出産し、そのまま死なせる事件が起きた。2か所で中絶手術を断られ、堕胎時期を逃した末の犯行だった。背景には、医療現場が、中絶時に配偶者の同意を必要とする法律の規定を「拡大解釈」していることがある。(山崎成葉)


 昨年6月2日、西尾市内の公園の植え込みで袋に入った乳児の遺体が見つかった。近くのトイレで出産後に遺棄したとみられ、その後、専門学校に通う女性(22)が死体遺棄、保護責任者遺棄致死容疑で逮捕、起訴された。


 公判での女性の供述などでは、乳児の父親は小中学校の同級生の男性。経済状態から産むのが厳しく、2人で中絶を決めた。女性が同県刈谷市内の病院で中絶手術を希望すると、男性の同意書を求められた。


 母体保護法は中絶時に原則、女性本人と配偶者(事実婚を含む)の同意を必要としている。厚生労働省は2013年、医師向けの講習会で受けた質問に対し、未婚の場合は本人の同意のみでよいと回答している。

女性はそのことを知らず、男性に相談。男性は同意書への署名を約束した。しかし署名がもらえず、女性は手術をキャンセル。翌月、名古屋市内の病院を受診した際も同意書を求められたが、男性との連絡が途絶え、再びキャンセルに。


 女性はそれ以降も5~6か所の病院に電話やメールで相談したが、「相手の同意が必要」と言われたという。その後、同法が中絶を認めていない妊娠22週目に入っていると診断され、手術は受けられなかった。


 女性は法廷で「自分のせいで死なせてしまった。ごめんね」と謝罪。名古屋地裁岡崎支部は今年5月、懲役3年執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。女性は控訴せず、判決は確定した。

 女性は未婚であることを病院側に伝えていた。なぜ病院は男性の同意を求めたのか。刈谷市内の病院の医師は「個別のことには応じられないが、トラブルを避けるためにも、基本は相手側の同意を得る」と説明。


 愛知県産婦人科医会の沢田富夫会長は「事実婚かもしれず、初診で同意を求めるのは基本の対応」と語る。2017年には妻の同意のみで中絶手術をした兵庫県内の病院側が夫側への賠償を命じられたこともある。現場には男性側との紛争を恐れる傾向が強い。


 一方で、沢田会長は「医師向けの講習会では、『相手と連絡がとれなくなった場合は本人の同意のみでよい』と指導している。女性からもっと詳しく事情を聞けていたら、手術する判断もあり得た」と話した。


 厚労省は「個別事案には答えられないが、未婚の場合、同意は不要」としている。