リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

優生保護法と母体保護法ができた時

・母体保護法(◆昭和23年07月13日法律第156号)

母体保護法

(昭和二十三年七月十三日)

(法律第百五十六号)

第二回通常国会

芦田内閣

優生保護法をここに公布する。

母体保護法

(平八法一〇五・改称)

平八法一〇五についての説明:
・母体保護法の施行について(◆平成08年09月25日発児第122号)

母体保護法の施行について

(平成8年9月25日)

(厚生省発児第122号)

(各都道府県知事・各政令市市長・各中核市市長・各特別区区長あて厚生事務次官通知)

(公印省略)

優生保護法の一部を改正する法律が平成8年法律第105号をもって公布されたところであるが、母体保護法の実施に当たり、留意すべき点は以下のとおりであるので、遺漏のないよう配慮されたい。なお、本通知の実施に伴い、本職通知昭和28年6月12日厚生省発衛第150号「優生保護法の施行について」は廃止する。



第1 不妊手術について

1 一般的事項

(1) 法第2条の「生殖を不能にする手術の術式」は、規則第1条各号に掲げるものに限られるものであって、これ以外の方法、例えば、放射線照射によるもの等は、許されないこと。

(2) 法第28条は、健康者が経済的理由とか、単なる産児制限のためとか、又出産によって容ぼうが衰えることを防ぐため等、この法律の目的以外に利用することを防ぐため、この法律で認められている理由及びその他正当の理由がない限り生殖を不能にすることを目的として手術又はレントゲン照射を行うことを禁止したものであること。

従って、この法律の規定による場合又は医師が医療の目的のため正当業務又は緊急避難行為として行う場合以外にこれを行えば、法第28条違反として法第34条の罰則が適用されるものであること。


2 不妊手術

(1) 未成年者に対しては、不妊手術を行うことはできないこと。

(2) 法第3条第1項第1号の「母体の生命に危険を及ぼすおそれのあるもの」とは、当該具体的状況において医学的常識経験からみて死亡の結果が予想される場合をいうものであること。

(3) 法第3条第3項の「配偶者が知れないとき」とは、民法上不在者として取り扱われる等配偶者の所在が知れないことが法的手続により確認されているときだけでなく、事実上所在不明の場合も含むものであること。

(4) 法第3条第3項の「その意思を表示することができないとき」とは、禁治産の宣告等意思能力のないことが法的手続により確認されているときだけでなく、事実上その意思を表示することができない場合も含むものであること。しかしながら遠隔地へ出稼しているときのように配偶者の所在が判明しており、何らかの方法でその意思を表示することが可能である場合は、これに当たらないものであること。


第2 人工妊娠中絶について


1 一般的事項

法第2条第2項の「胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期」の基準は、通常妊娠満22週未満であること。

なお、妊娠週数の判断は、指定医師の医学的判断に基づいて、客観的に行うものであること。


2 指定医師

母体保護法指定医師でない者は、本法による人工妊娠中絶は行うことができないこと。ただし、母体の生命が危険にひんする場合、例えば妊娠中の者が突然子宮出血を起したり、又は子癇の発作が起って種々の危険症状を呈し、急速に胎児を母体外に出す必要がある場合に、緊急避難行為として、人工妊娠中絶を行うことはもとより差し支えないこと。


3 人工妊娠中絶の対象

(1) 法第14条第1項第1号の「経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」とは、妊娠を継続し、又は分娩することがその者の世帯の生活に重大な経済的支障を及ぼし、その結果母体の健康が著しく害されるおそれのある場合をいうものであること。

従って、現に生活保護法の適用を受けている者(生活扶助を受けている場合はもちろん、医療扶助だけを受けている場合を含む。以下同じ。)が妊娠した場合又は現に生活保護法の適用は受けていないが、妊娠又は分娩によって生活が著しく困窮し、生活保護法の適用を受けるに至るような場合は、通常これに当たるものであること。

(2) 法第14条第1項第2号の「暴行若しくは脅迫」とは、必ずしも有形的な暴力行為による場合だけをいうものではないこと。ただし、本号に該当しない者が、この規定により安易に人工妊娠中絶を行うことがないよう留意されたいこと。

なお、本号と刑法の強制性交等罪の構成要件は、おおむねその範囲を同じくする。ただし、本号の場合は必ずしも姦淫者について強制性交等罪の成立することを必要とするものではないから、責任無能力等の理由でその者が処罰されない場合でも本号が適用される場合があること。

(3) 法第14条第2項の「配偶者が知れないとき」及び「その意思を表示することができないとき」とは、前記第1の2の(3)及び(4)と同様に解されたいこと。