リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

生活保護と中絶費用

生活保護受給者の医療扶助による中絶料金支払いは「流産手術」の保険点数に準ずる

2006年に以下のような通知が出ている。
・生活保護法による医療扶助と母体保護法との関係について(◆平成08年09月25日児発第830号社援保第186号)

生活保護法による医療扶助と母体保護法との関係について

(平成八年九月二五日)

(児発第八三〇号・社援保第一八六号)

(各都道府県知事・各政令市市長・各中核市市長・各特別区区長あて厚生省社会・援護局長・児童家庭局長通知)

標記の件については、今般その取扱に関する通知を左記の通り一括整理したから今後これによって処理されたい。なお、本通知の実施に伴い、厚生省社会局長・公衆衛生局長連名通知昭和二九年一一月一七日社発第九〇四号「生活保護法による医療扶助と公衆衛生法規との関係について」の「第一 生活保護法と優生保護法との関係について」を削る。


一 経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれの認定について

 母体保護法第一四条第一項第一号に掲げる経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれの認定は、一切母体保護法による指定医師に委ねられているのであるが、疑わしいときは、指定医師が関係者から証明書又はこれに代わるべき事実を証する書面等を徴することは差し支えないとされているので、福祉事務所及び民生委員は、指定医師から右の証明書等を求められた場合にあっては、これに協力すること。

二 人工妊娠中絶手術に対する医療扶助の適用について

(一) 困窮のため人工妊娠中絶の手術の費用の全部又は一部を負担することができない者には、生活保護法の医療扶助が適用されること。

 この場合において、医療扶助の要否及び程度の決定その他の手続等については、一般の取り扱いによって厳正に実施すること。

 なお、この場合には、本人に交付する医療券に、母体保護法第一四条の規定による人工妊娠中絶の手術を行う旨を記載すること。

(二) 前記(一)の場合において医療扶助による人工妊娠中絶を担当する医師は、生活保護法による指定医療機関たる病院若しくは診療所に所属する医師又は指定医療機関として指定された医師であると同時に、母体保護法による指定医師であることを要すること。

(三) なお、母体保護法第一四条第一項第一号に掲げる経済的理由により人工妊娠中絶を受けることのできる者の範囲と、手術について生活保護法による医療扶助が適用される者の範囲とは、必ずしも一致するものではないから、人工妊娠中絶手術を受けることのできる者の全部に直ちに医療扶助を適用することのないよう留意すること。

三 不妊手術に対する医療扶助の適用について

 生活困窮者が母体保護法第三条の不妊手術を受けようとする場合の取り扱いは、前記二に準じて処理すること。

「生活保護問題対策全国会議 資料室(仮稼働中)」というサイトに、次のような資料が見られる。
人工妊娠中絶 「生活保護法による医療扶助と母体保護法の関係について」 (平成8年9月25日厚生省発児第186号厚生省社会・援護局長通知) 母体保護法第14条に基づく人工妊娠中絶・・・医療扶助

これによると手術の場合は「流産手術で算定」して「医療扶助」になるが、妊娠12週以降で「分娩」させれば「出産育児一時金」の対象になる。

厚労省のサイトで見つけた「別表第一 医科診療報酬点数表」によると

K909 流産手術
1 妊娠11週までの場合
イ 手動真空吸引法によるもの 4,000点
ロ その他のもの 2,000点
2 妊娠11週を超え妊娠21週までの場合 5,110点
K909-2 子宮内容除去術(不全流産) 1,980点

これが現行? だとして、1点=10円なので、流産手術は真空吸引法だと4万円、その他だと2万円、中期だと5万1100円、子宮内容除去術だと1万9800ということになる。


つまり、生活保護の場合は真空吸引でも4万円、その他(掻爬や電動吸引)では2万円しか医療扶助が出ないことになるので、通常の中絶を10万円で行っているところだと大損になる。


だから、生活保護受給者(医療扶助による支払い)の中絶は引き受けないところが出てくる。中絶手術に携わる医師アンケートによると、病院(n=182)の56.6%はこの種の手術を引き受けていたが、診療所(n=92)は30.4%しか引き受けていない。その理由として医療機関として生活保護の診療を受け入れていないは病院35.4%、診療所62.5%だったが、医療扶助での中越費用支払いが安価過ぎるとしたのは病院19.0%、診療所3.1%だった。安すぎるから診療所は「医療機関として受け入れないことにしている」のではないのかな?