リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

日本はビジネスと人権で前進を遂げるも、システミックな課題に対処する 必要あり、と国連専門家

国連作業部会のプレスリリースとミッション終了ステートメント

ジャニー北川氏の性加害問題を機に行われた国連専門家の訪日調査が終了しました。

https://www.ohchr.org/sites/default/files/2023-08/230804-WGBHR-JAPAN-EOM-PR-Japanese.pdf

国連ビジネスと人権の作業部会 訪日調査、2023 年 7 月 24 日~8 月 4 日 ミッション終了ステートメント

 リスクにさらされているステークホルダー集団の筆頭に「女性」が掲げられました。ミッション終了ステートメントから引用します。

ステークホルダー集団と関心のある課題領域
 作業部会はさまざまなステークホルダーから、その深刻度や認知度の点で多種多様なビジネス関連の人権問題に関する情報提供を受けました。作業委員会はこのステートメントで、協議中にも長く議論された次のテーマ別課題分野に関する暫定的評価を行います。その分野とは、ダ イバーシティとインクルージョン、差別とハラスメント(ヘイトスピーチを含む)、労働関係の人権侵害、先住民族の権利、バリューチェーンの規制のほか、健康に対する権利、きれいで健康的かつ持続可能な環境を得る権利および気候変動に対するインパクトです。
 特に、女性や LGBTQI+、障害者、部落、先住民族少数民族技能実習生と移民労働者、労働者と労働組合のほか、子どもと若者については、特に明らかな課題が浮かび上がりました。しかし、これだけで全部ではないことは強調しておくべきです。作業部会は、セックスワーカーの搾取やホームレスに対する差別などの問題についても、情報を得ています。


リスクにさらされているステークホルダー集団
女性
 日本で男女賃金格差がなかなか縮まらず、女性の正社員の所得が男性正社員の 75.7%にすぎないことは、憂慮すべき事実です。日本のジェンダーギャップ指数のランキングが 2023 年の時点で 146 か国中 125 位と低いことを考えれば、政府と企業が協力し、この格差解消に努めることが欠かせません。女性はパートの労働契約を結んでいることが多く、非正規労働者全体の 68.2%と高い割合を占めている一方で5、男性の非正規労働者の 80.4%の賃金しか稼いでおらず、日本の労働構成におけるジェンダーの不平等をよく物語っています。政府が最近、大企業を対象に、格差を開示するよう義務づけたことは称賛できますが6、この取り組みをさらに拡大することで、ジ ェンダーや性的指向に関係なく、すべての労働者が平等な賃金と機会を得られるようにするための包括的対策みの確保が欠かせません。
 さらに、2018 年には「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が採択され、 「第 5次男女共同参画基本計画」も承認されてはいるものの、企業幹部に女性が占める割合は 15.5%にすぎないことを考えれば、女性の社会進出の遅れは依然として、官民がさらに懸念すべき動向となっています。女性が昇進を阻まれたり、セクシュアル・ハラスメントを受けたりする懸念すべき事例が報告されていることは、リーダーシップと決裁権者のレベルでジェンダーの多様性 を促進する必要性を物語っています。性差別と闘い、安全で各人が尊重される職場を作るためには、政府が厳格な措置を導入するとともに、企業がこれを実施に移さねばなりません。