リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

少子化対策の課題

2015年の季刊「個人金融」㈱日本総合研究所 主任研究員 池本美香

第二次安倍内閣少子化対策の問題点を突いています。

少子化対策の課題

政府は 2013 年 6 月に「少子化危機突破のための緊急対策」を打ち出し、従来の子育て支援働き方改革に加えて、結婚・妊娠・出産支援に力を入れるほか、2014 年 6 月には「50年後に 1 億人を維持」という人口目標に初めて言及するなど、少子化対策に力を入れるが、その内容には課題が多い。第一に、民主党政権が 2010 年に策定した「子ども・子育てビジョン」や海外の取り組みと比較すると、多様な家族形態、男女平等、子どもの権利など、人権をベースにした議論が不十分である。第二に、出生数を増やすことに重点が置かれ、生活の質向上に向けた検討が弱いこと、第三に、財源の制約のもとで公的投資の効果を最大化する工夫が足りないことである。

夫婦同姓を法で強制するのは女性差別

女性差別撤廃条約一般勧告にありました!

女性差別撤廃条約一般勧告第21号
婚姻及び家族関係における平等(第13回会期 1994年)

第16条 1. 締約国は、婚姻及び家族関係に係るすべての事項について女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし、特に、男女の平等を基礎として次のことを確保する。
(g)夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)

より詳しく言うと:

第 16 条1(g)
24. 安定した家族とは、各構成委員の平等、正義及び自己実現の原則に基礎づけられる家族である。従って各パートナーは、条約第 11 条(a)及び(c)に規定されるように、自己の能力、資格及び意欲に最もふさわしい職業もしくは雇用を選択する権利を有さなければならない。さらに各パートナーは、共同体における個性及びアイデンティティーを保持し、社会の他の構成員と自己を区別するために、自己の姓を選択する権利を有するべきである。法もしくは慣習により、婚姻もしくはその解消に際して自己の姓の変更を強制される場合には、女性はこれらの権利を否定されている。

つまり法によって夫婦別姓を選べないのは女性差別なんです!

閉塞感を破るために声を上げよう

もうじきオリンピック

国の経済指標としてGDP国内総生産)に対する債務残高(国の借金)の比率を見る方法がある。日本は借金大国だということは漠然と理解していたけど、財務省のデータによれば、2020年の時点でGDPの2.4倍、次点のイタリアでも1.3倍程度で、先進国の中で図抜けて高かった。https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/007.pdf


つまり未来にツケを回していることになるのだが、ご存じの通りの超少子化。子どもたちや孫たちの世代は、今の大人が享受してきたような便利で快適な環境や公共サービスを受けられなくなる可能性が大だということだ。これは政治的な過ちの結果だし、そんな政治家を選んできた国民の選択の結果でもある。


カナダでは49.5度を記録した熱波で何十人も死亡したという。地球温暖化による自然災害は、もはや予想不能な規模の被害を各地にもたらしている。元々地震の多い島国日本に、後々処分に困ると分かっていた原発をいくつも建て、フクシマの汚染水海洋放出を決めて、コロナ・オリパラも決行という暴挙ぶり。


「安心・安全」と唱えていればカミカゼが吹くとでも思っているのだろうか。決して反省されずエビデンスのない「やっている感」を演出するがための突飛な対策、何も説明しないままの我慢の要請、場当たり的で無計画的で無謀な方針決定、個人の政治生命を賭した一世一代のギャンブルに国民を巻き込むな。


欧米では未来に夢を描けなくなった人々の絶望死が今後10年間に増えるのではないかと懸念されている。日本は未だに昨年秋の10代の少女の自死増加の原因さえ明らかにされていない。不都合な真実は隠蔽されたまま、一番苦しめられるのは若い人々。全世界で若い女性が職に就けず生活困難に陥っている。


コロナ禍と今回のオリパラ騒ぎで見えたのは、最も弱い人々を徹底的に搾取しているごく一部の「貴族」たちが、べらぼうな日当を受け取り、超高級ホテルに宿泊するという事実だ。彼らとつるんで自らの利権を守るために巧みに立ち回り、傲慢に国民の「安心・安全」を奪う政治家たちにノーを突きつけよう。

<法廷の窓>予期しなかった妊娠、孤立を深めた末に…

中日新聞の動画ニュース 2021.6.27


愛知県産婦人科医会の産婦人科お悩み相談

こんなお悩みのある方は産婦人科に受診してください

F.人工妊娠中絶
1)安全に手術が出来る時期 - 妊娠6~8週(日帰り可)
2)中絶が出来る時期 - 妊娠22週未満
3)入院が必要な時期 -10週頃~21週
4)中絶のための費用 - 10万~30万円(妊娠週数が進むと高くなる
5)手術の同意書 - 本人と相手の男性のサインと印鑑が必要。未成年の場合は親権者のサインが必要

同意書は何度か画面で示されますが4分あたりの画面で正面から映し出され、以下の文言が読み取れる。本人、配偶者、親権者が住所と署名を書く欄があることも分かる。

 母体保護法第一四条  号により人工妊娠中絶を行うことに合意します。
 就いては以後如何なることがございましても一切異議は申しません。

4分50秒あたりの愛知県産婦人科医会会長のコメントに注目。
www.chunichi.co.jp

「束縛されるのは困ると考えた」国内未承認の中絶薬飲まされた少女が流産、男に有罪判決

読売新聞 2021/06/29 10:11

 交際相手の少女に中絶薬を飲ませて流産させようとしたとして、不同意堕胎未遂罪に問われた会社員の男の被告(21)に対し、福岡地裁は28日、懲役2年6月、執行猶予4年(求刑・懲役3年6月)の判決を言い渡した。伊藤寛樹裁判長は「母体や胎児の安全を脅かす身勝手で卑劣な犯行」と述べた。

福岡地裁
 判決によると、被告は昨年9月24日夜、福岡市内の親族方で、性病の治療薬と偽って少女(当時18歳)に妊娠中絶薬を飲ませ、流産させようとした。


 少女は流産したが、因果関係は不明。判決は動機について「妊娠の責任を負って結婚を余儀なくされ、束縛されるのは困ると考えた」と指摘した。

 被告は国内で承認されていない海外製の中絶薬をインターネットで購入した。妊娠中絶薬を巡っては、違法な通販サイトでの売買が後を絶たず、健康被害も起きている。

www.yomiuri.co.jp

20210719に朝日の記事も

女子学生の進路決定の要因(ピルの力)

第136回国会 参議院 法務委員会 第4号 平成8年3月28日

政策決定の場に女性がいない理由として山崎順子議員が指摘していた。

女性たちがまず文学部ですとか教育学部ですとか家政学部に行ってしまうというところも一つ問題で、小さいうちから女性も法学部ですとか経済ですとか理工学部ですとか、どんどんそういうところに行けるように私はすべきだと思います。残念ながら日本ではまだ、女性がそう思っても、例えば県立の学校などで大変優秀な女子高生が東京の大学の理工学部へ行きたいと言いますと、進学指導の先生が、「おまえ、そんなところへ行ったら嫁のもらい手がないぞ」といまだに言うような状況がございまして、女の子が一生懸命勉強しているとそんなに勉強しなくていいと。逆に男性には、自分の家の男の子にはもっと勉強しなきゃいけないと言う。まだまだ親の側でもそういう女性に対する教育の面での、差別とまでは言いませんけれども、偏見があるように思われてなりません。

The Power of the Pill: Oral Contraceptives and Women's Career and Marriage Decisions

アメリカの女性たちが避妊ピルを獲得したことでキャリア選択が変化していったことを論じた中で、対比として「日本はピルがないけど少子化になった」ことが紹介されている。要は、自分で自分の生殖をコントロールできないのでは、(資金的・時間的に)大きな自己投資ができなくなるということだ。キャリアが中断してもそこそこ働き続けられるような資格があれば十分、大きな投資をしても、思わぬ妊娠でキャリアが中断されたり、資格が取れなかったりしたら無駄になるだけ、と女性自身も周囲も考えるというのだ。

1970年代のアメリカの大学では、女子学生のドロップアウトを防ぐために保健室で避妊ピルが配られていたそうだ。女性の心がけの問題というよりも、社会的なバックアップの有無の問題が大きい。

国会答弁「リプロダクティブライツ」

平成6年(1994年)カイロ会議前後の攻防

①第129回国会 参議院 予算委員会 第17号 平成6年6月17日
大内啓伍厚生大臣に「リプロダクティブライツ」の定義を質問⇒「確たる定義はない」、事務方に質問⇒「通常、性と生殖に関する権利と訳している」(高野幸二郎 外務省総合外交政策局国際社会協力部長)⇒「カイロ会議に出席するか」羽田孜総理大臣「何とか出席したい」
⇒「経済発展に比べて女性の地位が不十分だというのが偽らざる外国の目でございます。それから、日本の女性の顔が見えない国際貢献だというこの声も強い。こういうことをちゃんとしていただくのがむしろ総合安全保障であるということだけ申し上げまして、終わらせていただきます。」
川橋幸子(日本社会党・護憲民主連合)

②第130回国会 参議院 決算委員会 閉会後第3号 平成6年9月1日
山崎順子(新緑風会
性教育と絡めて質問

③第131回国会 参議院 外務委員会 第2号 平成6年11月1日
大渕絹子社会党・護憲民主連合)
堕胎罪とリプロダクティブ・ライツを河野洋平外務大臣に直球で質問

④第136回国会 参議院 法務委員会 第4号 平成8年3月28日
山崎順子(★精査すべき)
本人の意思によらない不妊手術が暴力
このような法律が行動綱領の採択に賛成した日本にいつまでもあるということは、女性やまた女性障害者のリプロダクティブライツ、これはセクシャルが入った方がいいと思いますが、セクシャル・リプロダクティブライツに対する侵害でありますし、国際社会に対しても恥ずべきこと
堕胎罪は憲法十四条違反ではないか、そして堕胎罪は女性に対する人権侵害ではないか
原田明夫 法務省刑事局
基本的にはなお堕胎罪の存廃問題につきまして過去積極、消極両論、それぞれ、さまざまな角度から議論がなされてきたろうと存じます。
 その中で、何よりも胎児もまた生命を持つものとして保護する必要があるという立場、そしてその軽視はひいては人命軽視にもつながるという立場、そのような御指摘。また、国民意識といたしましても、一般的に堕胎を容認する、是認するという状況には至っていないというような状況。その他いろいろございますけれども、そのような中で私ども承知する限りでは、堕胎罪を全廃したというような諸外国の例もないようでございます。
 そのような状況を考えますと、基本的にはいまだ、これまで堕胎罪を存置してまいりました事情が大きく変わったというふうに考えるには至らないであろうというふうに考えているわけでございます。

⑤第146回国会 衆議院 予算委員会 第3号 平成11年12月6日
福島豊公明党
政府一体として少子化の問題に取り組むということは大変大きな課題である。もちろん、結婚や出産は個人の選択にゆだねるべきである。また、リプロダクティブ・ライツという考え方もありますし、私もそれは深く共感をいたしておりますけれども

⑥第147回国会 参議院 国民福祉委員会 第4号 平成12年2月22日
清水澄子社会民主党・護憲連合)
エンゼルプランとリプロライツ、女性の自己決定権の整合性

⑦第147回国会 衆議院 本会議 第16号 平成12年3月28日
福島豊(⑤同様の文脈)

⑧第147回国会 衆議院 厚生委員会 第8号 平成12年4月18日
安藤誠(国立人口研究所)
一九九四年のカイロ会議において国際的合意を得ましたリプロダクティブライツを含む人権の尊重ということが大前提であるべきであります。
 リプロダクティブライツとは、子供を何人、いつ、どういう間隔で産むかを決めるのは個人並びにカップルの権利である、そういうものであります。それゆえ、少子化対策の名のもとで、独身税であるとか親子同居税であるとかというような懲罰的な税の導入をしたり、あるいは、近代的な避妊手段や人工妊娠中絶を制限するなどの施策は決してとるべきではないと考えております。

⑨第147回国会 衆議院 厚生委員会 第14号 平成12年5月12日
瀬田由紀子(共産党
人工妊娠中絶がどれほどつらく屈辱的なことか、女性の生涯にわたって心身に深い傷を残します。望まぬ妊娠をなくしたいというのが女性の切実な願いです。受胎調節実地指導などの成果で減少しているものの、年間三十三万三千二百件もの中絶がございます。この問題は、女性の自立という問題だけでは解決しないことは明らかになっています。四十代の中絶というのも多いわけで、性の知識も十分ある、しかし夫婦の関係でも協力が得られないという状況もございます。中絶問題は、日本における女性の地位というものが端的にあらわれていると思うんです。

⑩第150回国会 参議院 共生社会に関する調査会 第1号 平成12年11月1日
芦野由利子(参考人
リプロダクティブヘルス・ライツ、正確にはリプロダクティブヘルス・リプロダクティブライツでございますが、これは産児調節運動からさらに発展した概念と言うことができます。
 御存じのように、リプロダクティブヘルス・ライツは、一九九四年の国際人口・開発会議、カイロで開かれましたこの会議で提唱され、翌年北京で開かれました第四回世界女性会議で重要な女性の人権の一つであると確認されました。日本語では一般に性と生殖に関する健康及び性と生殖に関する権利と訳されますが、言いかえますと、性に関すること、産む産まないに関することを、人口政策や道徳ではなく健康と権利という視点からとらえようという考えでございます。

⑪第150回国会 参議院 共生社会に関する調査会 第2号 平成12年11月8日
仲道俊哉(自由民主党、保守党)
産まない自由のうちの中絶は、受胎する前の避妊とは異なり、胎児という一個の生命体が既に存在しているために、多くの場合罪悪感を伴い、胎児の生命の尊厳の問題、倫理観の問題、また宗教観などが絡んで、一部の識者が主張するような完全な形での中絶の権利や自由を認めることは少なからずためらいを私は感じます。
女性のリプロダクティブライツの主張は、結局のところ、堕胎罪を廃止せよ、中絶については夫の同意を必要とする母体保護法を見直せというところに行き着きます。

3つの人口会議の報告書