リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

この9月に発表された3Dあるいは4D映像による「泣き笑いする胎児」が,最新の中絶の倫理問題として話題になっている。参照→http://www.prochoiceforum.org.uk/ocr_ethical_iss_1.asp

だけど,こういう「表情」が分かるのは,かなり“胎児”が大きくなってからのこと。日本を初めとする多くの先進国の中絶のほとんどが,ごく早期の――つまり胚の――段階に行なわれているという事実を離れて,「胎児」という言葉だけが,笑う胎児の映像と現実の中絶を結んでいる。

先週の合宿分科会で,わたしは「新たな言葉が採用される裏には別の現実がある」という立場から,「堕胎」と「中絶」,「発生学」と「胎生学」を切り分け,これらの言葉が,英語ではそれぞれ,abortion,embryologyと総称されていることに注意を促した。一方,日本語では,受精卵から出産直前まですべて「胎児」と呼ばれがちだけど,英語では最低限でもembryoとfetusは区別されている。smiling embryo(笑う胚)というのは,とてもじゃないが想像もつかない。

これも,どこにピントを合わせるかという問題のように思える。