リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

月経困難症は文明病――保険のきくピルで対策を!

2008.8.1付け毎日新聞JPに載っていた「月経困難症:我慢せずに受診を」という記事を、コメントをつけてご紹介。

 晩婚少子化により、女性が一生で経験する生理の回数が増えたといわれている。重い生理痛や生理不順は「月経困難症」と呼ばれ、日常生活に困難をきたすこともある。痛みがひどい場合は我慢せず、婦人科で診察を受けたい。【小林多美子】

 ・痛み止め必要な生理痛、47%経験

 ・原因はストレス、子宮内膜症など

 ・運動や低用量ピルに改善効果

冒頭から引っかかった。月経回数増の要因として、栄養や衛生状況の改善による寿命が伸びたことと、月経開始期間が早期化し、閉経も遅くなっていることを落とすわけにはいかない。結婚を遅らせたり(しなかったり)子どもをあまり産まなかったり(全く産まなかったり)する女性自身の行動や選択のみが原因であるような言い方は、女性のみを非難するようにも読める。

 ■収縮物質が作用

 ノーベルファーマ、日本新薬富士製薬工業の製薬会社3社が今年5月に25〜35歳の女性500人を対象に行ったインターネットアンケートで、39%の女性が「生理痛はあるが痛み止めを飲めば通勤通学はできる」と答え、「痛み止めを飲んでも通勤通学を休むことがある」女性は8・4%。合計すると半数近い女性が痛み止めを必要とするほどの生理痛を経験しており、「生理痛がない」女性はわずか11・8%だった。

 東京都内に住む専門学校生(25)は、中学生のころから不定期な生理痛に苦しんできた。強い腹痛や嘔吐(おうと)感があり、痛み止めを飲まなければ起きあがることもできないほど。生理が約2週間続くなど周期が乱れることも多かった。

 大学1年生のころ、ダイエットで3カ月間に5キロ程度減量した際、生理が止まった。親の勧めで婦人科の診察を受け、食事制限などによるストレスが原因と考えられた。ホルモン剤で生理不順を解消するとともに、健康的にやせるためにジムにも通い始めた。

 体力がつくにつれて体調も安定し、冷え性なども改善されたという。約2年前から低用量ピルに切り替えると、体のだるさなどホルモン剤の副作用もなくなったという。

 リボーンレディースクリニック(東京都立川市)の島香恵子副院長によると、生理の際の出血をスムーズにさせるため子宮を収縮させる物質「プロスタグランジン」が痛みを発生させる作用があることが、生理痛の主な原因だという。この分泌が過剰になったり、体のほかの部分にも作用するため、腹痛や頭痛、吐き気などを併発する原因になるという。

 また、「運動不足や体を締め付ける矯正下着が生理不順につながることがある」と話す。骨盤内の血行が悪化すると、子宮や卵巣の機能低下を招く恐れがあるため、骨盤内の筋肉を鍛えるヨガやストレッチを勧めるほか、生理期間中は貧血になりやすいため、鉄分の補給を心がける▽アロマテラピーなどで心身をリラックスさせる▽半身浴などで体を温める−−などが効果的と指摘する。

長いダイエット・ブームが、問題の少なくとも遠因であることはしっかり指摘すべきだろう。なぜ女性は小さく軽くあらねばならないのだろう? そこらへんから、もう一度、考え直してみるべきではないか。

 ■晩婚少産も一因

 月経困難症が特にひどい場合、原因として考えられるのが、子宮内膜症だ。専門家によると、患者は15〜44歳の女性の1割程度とみられる。子宮内膜は通常、子宮の内側で増殖・はく離し、生理で外に流れ出ていく。子宮内膜症になると、子宮の内側にしかできないはずの子宮内膜が卵巣や腹膜などにできる。外に流れ出ず腹腔(ふくくう)内にとどまるため、炎症や痛みの原因になる。

 子宮内膜症になる原因は不明だが、背景としては晩婚少産があると考えられている。妊娠、出産回数の減少によって生理が中断される期間も短くなり、子宮内膜症にかかる危険性も高まるためだ。

“背景”として晩婚少産“も”あることは間違いないだろう。わずか数十年前の日本でさえ、6人程度の子どもを産み、末子が結婚してほどなく母親が死亡するというのが平均的な女性のライフサイクルだった。母乳で育て、授乳期間も長かったために、妊娠から授乳までの期間、何年間かは月経が止まるのが常であり、月経が再開したとたんにまた妊娠したりするので、結果的に月経回数は少なかったのだ。

 産婦人科医らで作る社団法人日本家族計画協会クリニックの北村邦夫所長は「子宮内膜症は女性に妊娠出産のチャンスが減ったことによる現代病」と指摘する。

 痛み止めを必要とするような月経困難症の治療法として、同協会が勧めているのが、低用量ピル(OC=Oral Contraceptives)の服用だ。OCには避妊以外の副効用として生理痛の緩和、生理周期の正常化、子宮内膜症の改善などの効果があるためだ。

 今年4月には子宮内膜症に伴う月経困難症の治療用低用量ピルとして国内で初めて、ノーベルファーマ社の「ルナベル」が厚生労働省から製造販売承認を取得。低用量ピルでの子宮内膜症の治療に保険が適用できることになった。

毎日新聞 2008年8月1日 東京朝刊

OC(低用量ピル)は、月経困難症の治療(予防)になるのと同時に、避妊効果もあるのでは? 万が一、避妊効果がないのだとすれば、その点を説明すべきだと思う。どうしてその説明が抜けてるの? 

それにしても、子宮内膜症の治療に健康保険が適用されるようになったのは知らなかった! 「ルナベル」が避妊には効かない薬だ……なんて落とし穴はないよね? もしかして、日本女性のリプロダクティヴ・ヘルス推進にとっては画期的な出来事かも!?

ちなみに、わたし自身、以前、月経前シンドロームでしんどかった時にピルを処方してもらっていました。でも、保険なしではあまりに高いし、ひんぱんに診察を受けなければならなかったので、長続きできなかったんだよね……。OCもECも他の国々みたいに店頭販売すべき。どうして日本だけ、こんなに過保護なの!?

なお、ルナベル錠の案内はここにありました。