リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

白山(旧松任)市の病院で新生児置き去り事件

首の痛みのために、知り合いの紹介で昨日から通い始めた治療院のうわさ話で、金沢の隣の白山市(旧松任市)の病院で嬰児置き去り事件があったことを知った。帰ってきて調べてみたら、本日付の産経新聞が報じていた。

病院入り口に赤ちゃん置き去り 石川
2008.8.12 09:38

 12日午前1時40分ごろ、石川県白山市倉光、公立松任石川中央病院の救急搬送入り口の壁際に、生後間もない男の赤ちゃんが置き去りにされているのを消防本部の救急隊員が見つけ、松任署に通報した。

 調べでは、赤ちゃんはへその緒が付いており生後1、2日。けがもなく健康状態は良好という。裸のままで水色の毛布にくるまれていた。身元を示すものや書き置きなどはなく、同署が保護責任者遺棄容疑で調べている。

治療院でのうわさ話を加味しても、どうやら何もまだ分かっていないらしい。みんな口々に「ひどい事件だ」と言っていた。わたしもそう思う。そして、とりあえず、赤ん坊が無事で良かったとは思う。だけどわたしは、置き去りにした人のことも気になる。

おそらく自分一人で産んだのだろう。いったいいくつの人なのか。相手の男性はいったいどうしているのか? 未婚である可能性が高いだろう。そもそも産めない妊娠に至るまでに、何があったのか。学校や職場や家庭で妊娠を隠しおおせていたのだろうか。衣服を準備していなかったのは、育てることが全くもって考慮外だったからなのだろう。(衣服を買うのを人に見られるのを避けたのか。それとも愛着が出るのが怖かったのだろうか。)殺すか、捨てるかで悩んだのかもしれない。あるいは、もともとは産むつもりでいたのに、中絶できない時期になってから状況が一転してしまったのか。それとも、妊娠に気づかないでいるうちに、中絶できない時期に突入してしまったのか。赤ん坊の健康状態が良好だということは、一度でも授乳しているということなのだろうか。そうだとしたら、あまりにも辛すぎる。身を引き裂かれるような思いで、赤ん坊の命を救ってほしいと病院に託していったのではないか。いずれにしても、かなり絶望的な状況だったことは間違いない。

こうした事件が起きるたびに、もっと前の時点で食い止めることができたはずだと思う。捨てた母ばかり責めていても、事態は何も変わらない。望まない妊娠をさせた男性、妊娠に気づいたあるいは気づかなかった周囲の人びと、そして女性の生殖の権利を保障できていない社会の側が、何かできたはずではないかと、本気で考えていく必要がある。