リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」という表記の問題性

リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」という表記の問題点

  1. この記号(/)は、英語では"or(または)"の意味なので、「リプロダクティブ・ヘルスまたはリプロダクティブ・ライツ」と誤解される。(つまり、「リプロダクティブ・ヘルス」と「リプロダクティブ・ライツ」は等価なものであり、言い換え可能なものだと誤解される。)そうした不正確な使い方は概念理解上の混乱を招いており、非常にまずいです。(3年前にわたしは、曖昧なまま「ライツ」を追加できる表現だと書いたことがありますが、あれはとんでもなく浅はかな考えでした。)
  2. 英語のreproductive health and rightsは、reproductive health and reproductive rightsを略したものであるのに、この分かりにくい表記によって、「リプロダクティブ・ヘルス」と「リプロダクティブ・ヘルスの権利」が話題にされているとの誤解を生じさせる。つまり、リプロダクションに関わるヘルス以外の権利が排除されてしまう。
  3. 上記との関連で、「リプロダクティブ・ヘルス」という非常に観念的なものを保障する権利だと理解されることで、リプロダクティヴ・ライツは実体をもたず単なる理念的なものだという誤解が生じる。その結果、お題目的に「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」が唱えられるだけで、実際には何の対策も取られないか、産む選択にまつわるヘルスケアばかり重視し、産まない選択に関しては無視するという偏りが生じている。

リプロダクティヴ・ヘルス&ライツ」という表記では、「国際的な議論に基づいた概念」であることを示すため、日本語としてはあまり使われない「&」や「ヴ(Vを表現)」をあえて用いることにしました。そうすることで、従来の「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」の議論とは一線を画したいとも考えているのです。