リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

研究会の報告

どこまで表に出していいのかを発表者に確認していないので詳細は述べませんが、おおまかに次のような話題が出ました。

簡単にコメントを。

個人的に、産科医療補償制度をめぐる諸問題は今回初めて知りました。こんなシンポジウムも開かれていたようですね。妊娠33週、出生時体重2000グラム以上といった枠が儲けられているそうで、未熟児で生まれる子どもほど脳性マヒになる危険性が高い事実を考え合わせると、この制度が産み育てる側を助けるものでないことは明白。なにしろ「医師の過失」が問われるようなケース以外(医師のせいではなく、もともと脳性マヒになる可能性が高いケース)は保障されないというのですから……。

中絶ケアのあり方については、わたし自身もこだわっているテーマのひとつです。諸外国の中絶ケアマニュアルをいろいろ調べているのですが、そこで痛感するのは、「常識」が全然違うということ。医学・技術的な常識、倫理的な常識、法的な常識……あらゆる面で異なる。去年の日記に書いていたことについて、今回の研究会でICM(国際助産師協会)のMidwives’ Provision of Abortion-Related Servicesに関するPosition Statementの所在を教えてもらいましたが、その中で女性のリプロダクティヴ・ライツは当然の原則扱いされています。高校生の性教育ビデオのなかで、妊娠中絶の方法として掻爬と吸引しか出て来ないこと自体、世界の非常識だということを指摘しておきたい。

不妊治療のための卵子ドナーの話は、日本ではなくアメリカの話です。アメリカでは有償で卵子を提供するドナーがいるんです。ところがアメリカでさえも、その提供が美談にされ、ドナーへのケアがなおざりにされる危険性があるのだという。利用者に都合のよいドナー像が構築されていく……というのは、このところの脳死議論にも通じるかもしれませんが。

わたしの発表は、今さらながらの話ばかりだったのですが、結論から言えば、わたしは女性差別反対、女性の人権擁護の議論から生まれたreproductive health & rights (そのまま日本語にすれば「リプロダクティヴ・ヘルス&ライツ」という表記)を採用すべきだと考えています。「リプロダクティヴ・ヘルス/ライツ」という言葉には、以下の問題点があると考えているからです。