リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

抜き書き

リプロダクティブ・ヘルス/ライツの表記の出所?

History – WGNRR

*「性と生殖に関する健康/権利」という日本語訳をはじめて試みたのは「グループ・女の人権と性」である。;「リプロダクティブ」には本来「性」という意味はないが、リプロダクション(妊娠・出産)だけでは女性の健康/権利を把握しきれないという認識から「性」をいえらた。行動計画(案)ではセクシュアル・リプロダクティブヘルス/ライツという言葉が使われており、性と生殖に関する健康/権利」はむしろこれに呼応している。しかし、「セクシュアル」はバチカンイスラムの反対により最終段階で削除され、リプロダクティブ・ヘルスにセクシュアル・ヘルスも含まれるという表記に変わった。ただし、行動計画には、「(それを)どう実施するかは各国の主権であり…その国の宗教や倫理観、文化的背景を十分尊重」(行動計画第二章”原則”)することとあり、リプロダクティブ・ヘルス/ライツに関しては、特にこの配慮が必要であると明記されている。

リプロダクティブ・ヘルス/ライツと避妊・中絶を選ぶ権利」芦野由利子(『インパクション89, 1994 人口が問題なのか?』所収)

わたしが一九八〇年代後半、初めてリプロダクティブ・ヘルスという言葉を日本に紹介したときは、この言葉の限界を感じ、性の部分もカバーするために「性と生殖に関する健康」と訳した。「グループ・女の人権と性」でわたしたちが作った小冊子『リプロダクティブ・ヘルスを私たちの手に』(一九九〇年)では「性と生殖に関する女の健康」とした。

『からだと性、わたしを生きる リプロダクティブ・ヘルス/ライツ』ヤンソン柳沢由実子著 国土社 1997年

大橋 九四年九月のカイロ会議での最終的な行動計画案の第二章原則に、ソバリン・ライト(Sovereign Right)、国家主権が加わりましたね。中絶合法化やリプロダクティブ・ライツの観点からすると、各国の主権が認められてしまった、というふうに私なんかは否定的に見てしまいます。……
原 普遍的なフェミニズムがあるかどうか、というのを考えなければにけない。……フェミニズムの視点からAであれば進んでいるとかBであれば遅れている、そういう発想が成り立つかどうか……それと同時にヒューマン・ライツと言う概念、人権と言う概念が絶対的なんだろうか。つまり欧米の発想から成立して生きたこの概念を一旦相対化して、いろんな文化的、歴史的な条件を考えた上で……グローバルに妥当な基本的人権という概念が、成立するかどうかの吟味も必要だと思っています。(そしてそれが成立することを祈りたいのです。)
……フェミニズムについても状況に応じて優先課題として今何をしなければいけないのかということでは相対的になりえますよね。……
 それでもやっぱりみんなでグローバルに考えていく必要があると思うんです。女の人が「産むか産まないか自分で決める」だけではなくって、「産むか産まないかを自分で決められる」という状況は、他のいろいろな場面でも男女が対等に発言して、対等に社会参加していくという状況です。……ということは障害者への差別、先住民への差別をなくす上での大前提です。

「カイロ会議をどう位置付けるか~国家主義とリプロダクティブ・ライツ」原ひろ子(インタビュー・大橋由香子)(『インパクション89, 1994 人口が問題なのか?』所収)

「カイロ会議をどう位置付けるか~国家主義とリプロダクティブ・ライツ」原ひろ子(インタビュー・大橋由香子)(『インパクション89, 1994 人口が問題なのか?』所収)