リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

「国内の中絶は今も掻爬が優勢」日本母性衛生学会で発表

本日、日本学術振興会2010-2011年度科学研究費補助金による挑戦的萌芽研究「我が国における中絶医療実態の調査研究」(研究代表者 金沢大学医学部 打出喜義先生)の一環として、リプロダクティブケア研究班が実施した調査の結果を仲間と共に日本母性衛生学会でポスター発表しました。

全国1000の母体保護法指定医院の産婦人科医を対象としたこの調査により、日本の医療の中で行われている妊娠初期の人工妊娠中絶の術式として、世界の医療界では1970年代頃から吸引法に置き換えられた古い技術であるD&C(いわゆる「掻爬」)が優勢であることが初めて明らかになりました。

中絶が合法化されて以来3分の2世紀が過ぎながら、日本国内ではこれまで一度も「どの方法で行っているか」は調べられたことがなかったので、画期的な成果と言えるでしょう。

2003年にWHOが発行した『安全な中絶』では、妊娠初期の妊娠中絶の方法として吸引法と薬による中絶(薬理中絶と呼んでおきます)の2つを挙げており、D&Cは上記の方法を採用できない場合の代替策と位置付けています。

他にも、妊娠中絶薬(妊娠阻害薬)のミフェプリストン(RU486)に対して医療者の関心が薄いこと、安全性や確実性のエヴィデンスが知られていないこと、そのためか導入を困難とし、反対する人が少なくないことも明らかになりました。看護者の調査も並行して行っており、中絶ケアは不十分だと認識されながら半数の医療施設は看護ガイドラインを定めていないことも分かりました。

近いうちにポスター発表の内容をオンラインで公開する予定ですので、準備が整ったらご案内します。詳細をまとめた論文は1年以内に医療系ジャーナルに発表する予定です。