リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

「中絶申請却下の女性が帝王切開、新生児は死亡 エルサルバドル」

上記タイトルで,昨日,AFP BB Newsで報じられていました。冒頭を紹介します。

【6月4日 AFP】中米エルサルバドルで、慢性疾患により母体に危険が及ぶ危険性があるとして、申請した中絶の特例措置が最高裁に退けられたベアトリスさん(仮名、22)が3日、首都サンサルバドル(San Salvador)市内の病院で帝王切開手術を受けた。生まれた女児は数時間後に死亡した。同国では人工妊娠中絶が禁じられている。

 マリア・イサベル・ロドリゲス(Maria Isabel Rodriguez)保健相によると、無脳症で出産直後に死亡する可能性が高いとされていた女児は、出産から5時間後に死亡した。ベアトリスさんの健康状態は良好だという。

 ベアトリスさんは免疫低下を引き起こす「全身性エリテマトーデス」と診断されており、胎児も出産後に死亡する可能性が高いと言われていた。このため母体の安全を守るために特例での中絶許可を要請していたが、エルサルバドル最高裁判所は、胎児より母親の権利が優先されることはないとして、ベアトリスさんの要請を退けた。ただ、ロドリゲス保健相が「医療介入は堕胎ではなく分娩介助にあたる」として特別許可を出し、妊娠26週での帝王切開手術が決まった。

続きはこちらで。

エルサルバドルの中絶状況全般は,国連報告書の「El Salvador」のファイルで確認できます。開いてみると,見事に全事由につき「中絶不可」です。

ところが驚いたことに,元々エルサルバドルは「母体の生命」を理由にした中絶は1956年の刑法で認められていた。1973年の改正刑法では,さらに自由化が進んだ。ところが,1997年にすべての例外を撤廃して中絶を厳格に禁止する法律に逆戻りしたというのです。

一瞬,レーガン大統領のグローバル・ギャグ・ルールの影響かと思ったけれど,レーガンの任期は1981〜1989年らしいし,エルサルバドル国内で何かがあったのでしょうね。

また,日本がまさにそうだけど,「基本は禁止,ただし一部事由については許可」という形を取っていることの脆さも感じさせられる事例です。