リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

いじめをノックアウト

リプロに直結する話ではないのですが,人権に関わる難問を取り上げていたいい番組だったので,ご紹介します。NHK Eテレ 12月19日(木) 午後3:00-3:30に再放送があるそうです。

課外授業「あの人と、いじめをじっくり考えた!!」

12/7のスペシャルではその一部しかご紹介できない特別授業の完全版!
第1回の先生は尾木直樹さん。茨城県の中学校で、尾木ママが渾身のメッセージ!

以下は,感想交じりの内容紹介。

尾木ママは,自分の学校にはいじめなんてないと言っていた生徒たちに,まずはどんな行為が「いじめ」だろうと具体的に挙げさせていく。すると,殴る蹴るといった分かりやすい暴力だけではなく,「無視」や「いやなあだなで呼ぶ」なども挙がってくる。ではそうした行為を「一つでも経験したことがある人?」と問うと,ほぼ全員が手を挙げる。そこで調査から小4〜中3で「いじめ」を受けた人は9割というデータを出し,では「いじめ」をした人は何割?と問う。実は「9割」が正解。となると,「いじめ」はみんなにも他人事ではないんじゃないの?と持っていく。

続いて,アメリカでいじめによって自殺した少女の「加害者」が,ずっと「あれはいじめではない」と言い張っていたのに,懲役10年という判決が出て初めて,自分がしたことの重さを認識したというエピソードを持ち出し,「いじめ」が大人の社会で法的に禁止されている犯罪と一つながりであることを示して,子どもたちの正義感や公共心に訴える。さらに,子どもの頃にいじめをしていた大学生が,かつていじめていた相手が向こうから歩いてきた時に思わず身を隠してしまったというエピソードや,実際,いじめをした後で「いやな気分」になったり,いじめた相手に同情したりする人も少なくないというデータを挙げて,「遊びのつもり」のいじめによって,いじめられる側だけではなく,いじめをする側も痛みを抱えていくことを示し,いじめを撲滅することの大切さを説いていく。

最後に,今年6月に制定されたいじめ防止対策推進法の附帯決議の中に,「いじめ防止等について児童等の主体的かつ積極的な参加が確保できるよう留意すること」が述べられているとして,子どもたち自身が「いじめをなくす」ための主役になるよう尾木ママは訴えるのであった。

この尾木ママのメッセージを受けて,授業の後で中学生たちが班で話し合う様子を番組は追っていく。建前論を出す子に,「そんなんじゃ,いじめはなくならない」と反論する子どもたち。「いじめ撲滅委員会を作ろう」という提案も,では誰が委員になればいいのか,クラスの「弱い子たち」にその役目を押し付けられたりしないかなどの反論が挙がる。最終的にその班が行きついた案は,座席順に作られる班で「互いに忠誠を誓い」,自分の班のメンバーがいじめに遭ったら「守ってあげる」というものだった。座席順の班なら席替えのたびに変わる。「そうすれば,クラスの親睦も深まる」ので一石二鳥だというのだ。

オールマイティな解決策ではないかもしれないが,とても考えさせられる内容だった。

また,「いじめ対策」を徹底して頑張った結果「いじめが増えた」と困惑している生徒会長に,尾木ママが今までは見逃されていたものが見えるようになったということで,これからは減ると励ましたというエピソードも良かった。

「いじめはなくならない」と信じている学校の先生に,特に見てほしい番組だ。