リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

中国〜世界最大の人工妊娠中絶国

日経ビジネスのサイトに掲載されている記事をご紹介します。「世界鑑測 北村豊の「中国・キタムラリポート」」のシリーズの一つで,「国民にそっぽ向かれた「第2子出産容認」人工妊娠中絶手術は年間1300万件」と題された北村豊氏の記事です。

いろんな意味で注目すべき内容です。政府が人口を調節しようとすることの愚かさも明らかです。若年妊娠,強制中絶,中絶リピーターの問題,流産率と中絶の関係は,いずれも私が以前から注目してきたトピックです。どのトピックについても,こんなにはっきりとした数値が出ているのですね。

中絶に対する罪悪視を捨て去り,最新式の中絶方法をどんどん取り入れてきた中国は,中絶=悪という図式が今も根強く,旧態依然たる外科的中絶法を使う医師が圧倒的多数である日本とは中絶医療の内容が違います。結果的に,日本の方が中絶が原因で次の妊娠で流産する確率が高くなると考えられるので,この2.5倍というのは,日本ではもっと高くなる可能性があるということを,指摘しておきたいです。

【1】中国では毎年1300万件もの人工妊娠中絶手術が行われており、中国は世界最大の人工妊娠中絶国である。但し、この数字には1000万件に及ぶ薬物による人工妊娠中絶や未登録の個人診療所による人工妊娠中絶手術の件数は含まれていない。<注3>

<注3>日本の人口妊娠中絶手術件数は2011年が20万2106件(厚生労働省データ)。中国と日本の人口比は約10倍だから、人口が同じと考えれば、日本は200万件規模となる。

【2】人工妊娠中絶手術を受ける女性のうち25歳以下が50%を占め、その数は600万件以上に及んでいる。彼らのうち大学生が多数グループを形成している。また、65%の女性は未婚である。

【3】人工妊娠中絶手術を受けた女性のうち53%は、他人に強制されて人工妊娠中絶手術を受けた。また、人工妊娠中絶手術を受けた女性の83%は、もし誰かが傍らで激励してくれたなら、子供を産みたかったと意思表示した。

【4】人工妊娠中絶手術を受けた女性のうち、その後に二度、三度と人工妊娠中絶手術を繰り返す女性は50%に達している。

【5】人工妊娠中絶手術を受けたことによる後遺症が重いために、不妊症や不育症となる人が多い。不妊症や不育症の患者の88.2%が人工妊娠中絶手術を受けた経験を持つ。また、再度妊娠したとしても、人工妊娠中絶手術を受けたことのある女性は、人工妊娠中絶手術を受けたことがない女性に比べて、流産率が2.5倍も高くなっている。