リプロな日記ー産む/産まないの選択と決断、妊娠、中絶、流産…を超えて

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

日本の吸引中絶は危険!?

最近,「当院はWHOの推奨する安全な“吸引”で中絶手術を行っています」などと宣伝している産婦人科クリニックがあるようです。

だけど,そのほとんどが決してWHOが勧めているような国際スタンダードの安全な方法を用いてはいない,というのが実態です。

なぜなら,日本の産婦人科で行われている「吸引」では,たいてい金属製のカニューレ(管)を用いているからです。一方,世界では妊娠初期の中絶には「プラスチック製カニューレ」を使うのが一般的です。しかし,日本ではプラスチック製のカニューレはまだ認可さえされておらず,それどころか,その存在を知らない産婦人科医の方が圧倒的多数派なのです。(プラスチック製カニューレ個人輸入して使っている産婦人科医はいますが,ごくごく少数です。)

拙著にも書きましたが,海外で「吸引」が安全な中絶法だと言われているのは,実は1970年代の初めに「プラスチック製カニューレを用いた吸引」が導入されたからです。世界ではそれがスタンダードな手法になり,次々と中絶合法化された諸国に導入されていったのです。WHOの推奨は,当然,この「プラスチック製カニューレを用いた吸引」が前提されています。

実は,日本でも,1970年代に「吸引の方が掻爬より安全」という学術記事が散見されました。なのに,どういうわけか,日本では初期中絶の8割以上に今も「掻爬」が用いられています。

掻爬が危険なのは,金属製の器具を身体に挿し込んで操作するからで,金属製の管を用いる吸引も同様のリスクがあります。

つまり,「吸引」をしているというだけで「安全」というわけではないのです。

むしろ,「吸引を使用している本院の施術は安全」と喧伝しているところほど,疑ってみたほうがいいかもしれません。そういうところに受診するときには,「プラスチック製のカニューレをお使いですか?」と確認してみてはいかがでしょうか。

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追記:2015/02/11に改訂しました。最後の部分,初めは「金属製のカニューレをお使いですか?」と書いたのですが,逆にしました。

なお,子宮ゾンデによる穿孔は掻爬,吸引のどちらでも起こり得ます。これについては,また機会を改めて書きます。

2015/02/12 一部修正

2015/03/7追記:
この件についても,別の海外の医師から,プラスチック製だからといって安全とは言えないと教えていただきました。角が鈍になっている金属製のものは,硬いプラスチック製のものより安全だとその先生は感じているそうです。これも,人によって,あるいは自分の知っている物によって,話が違ってくることなのかもしれませんね。

何にしても,従来法を吟味し直すことも,より良い方法を探すこともなく,ただ延々と何十年も慣習的に使い続けている……なんてことは,終わらせてほしいなと思います。

私の発言をあるところで見た海外の医師が,「中絶のベストプラクティスを改めて考えなおしてみたい」とおっしゃってくださったのが,嬉しいです。