リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

搔爬による中絶は安全性に劣る

「毎年、世界中で推定2500万件の安全でない中絶が行われている」

これはWHOの最新ヘッドライン(ニュース)のタイトルです(原文は英語で私が訳しました)。

世界中で行われる中絶の3分の1が今もなお「安全性の劣った中絶」であることへの懸念を表明した内容で、「安全性の劣った中絶」の例として「訓練を受けた提供者が、"sharp curettage"などの安全でない、あるいは時代遅れの方法で行う場合」や「訓練を受けていない人が、中絶を引き起こすなどの目的でミソプロストルなどの安全な手法を用いる場合」が挙げられています。

Sharp curettageとは、鋭利な金属器具をもちいて行う「搔爬」と呼ばれる術式のことで、日本で今もなお行われている中絶手術(拡張搔爬法 D&C)で用いられています。

WebMDにある通り、海外でも、子宮内膜の検査(細胞診)のためにD&Cが使われることはあります。

ただし、Mayoクリニックでは、D&Cは通常は安全な処置ではあるが、子宮穿孔、頸管損傷、アッシャーマンシンドローム(子宮内膜に瘢痕が残る)の3つのリスクがあると注意を促しています。

Medicinenetでは、検診目的でのD&Cの使用が減っているのは、プラスチック製の吸引キュレットを用いた方が麻酔の必要性も低く、痛みも少なく、D&Cと変わらない質の高い検体が取れるためだとしています。

なお、WHOは妊娠初期の中絶のために、「古く廃れた」方法であるD&Cを使ってはならないと警告し、吸引法または経口の中絶薬に切り替えるよう指導しています。Safe Abortion 2nd editionを参照のこと。

今も毎年10万件も行われている中絶手術をより安全なものにするために、まずは日本の常識を塗り替えていく必要があります。