リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

第2回 「世界標準の中絶と日本~ポストコロナへの動向」

国際セーフ・アボーション・デー2020 Japanプロジェクトの「中絶についてもっと話そう!」毎月28日トークイベント

開催日:2020 年 11 月 28 日(土)20:00 - 21:00 終了
配信 URL:https://youtu.be/VQPAB8-jwqM

視聴してくださった皆様、ありがとうございます。
Youtubeでいただいたコメントに、以下お答えします。

Q 日本で2万円かかる吸引がアメリカでは20ポンドでできるというのはあんぐりです。その差額はだれの手に入っているんでしょうか。

A 2万円、20ドル(ポンドではなく)と言ったのは吸引器の価格(原価)の話です。これに当然ながら診察費や検査費、いろんなサービス料が加算されていくわけです。吸引器は海外では数ドル程度から高くても50~60ドルくらいのようです。

 薬の価格の話も同様です。UNFPA国連人口基金)の販売価格として、WHO必須医薬品コアリストに中絶薬を推薦する文書の中に紹介されていました。詳しくは以下をご覧ください。ミフェプリストンは高くて15米ドル、ミソプロストールは高くて2米ドル3セント(どちらも1回分)となっていたので約17米ドル、日本円にして2000円程度と考えています。
世界における中絶薬の値段 - リプロな日記


Q (フランスの中絶可能週数は)周辺国と比べても短いようですが、ただ、週数の数え方が日本と違うと聞いたことがあります(うろ覚えです)。

A 「イギリス24週です。​胎児の異常による中絶は24週すぎても可能です。」とチャットで答えてくださった方、ありがとうございます。
 週数については、当然ながら国際産婦人科学会などもあるので、医学的には今はLMP方式(直前の月経開始日からカウントする)を共通に使っていると思います。
 週数が2週少ない数え方(受精を起点に考える)は、中絶に反対する人々がよく用いる方法です。たとえばLMPでは10週である胎児を「ほら、8週でもうこんなに育っているんだよ!」みたいなことを言うために使うわけです。それとは違う話でしょうか?


Q ​独占・寡占状態になっている薬や医療機器を解消して価格を下げることも(現実的に選べる)選択肢を増やす上で必要なことだと思います。

A 仰る通りだと思います。
 他にも国が現在行っている規制として最も問題なのは、母体保護法によって民間団体である公益社団法人日本産婦人科医会(会員のほとんどが母体保護法指定医師)に、業務独占の特権を与えていることだと思います。
 手動吸引器や中絶薬など、世界では中間レベルの医療職(助産師、特別な訓練を受けた看護師や薬剤師など)で十分安全に行える(投薬は産婦人科以外の医師でも可能)とされているのに、日本では指定医師しか行えない。一部の医師が独占しているために、アクセスが悪くなり、コストも高くなっているのです。


Q ​同意書が必要なのは本当に許せない。

A 配偶者の同意を求めることや、女性のみが罰せられる可能性のある法律があるのは「女性差別」であると、国連女性差別撤廃条約の委員会が日本国に何度も指摘していますが、政府は知らん顔です。本当に許せません。


Q ​パートナーさんはどこで様々な避妊方法を知ったんでしょうね。学校教育?

A 出演者のフランス人パートナーの話ですね? 学校教育で学んでいると聞いています。18歳までには(おそらくもっと早い段階で)避妊や中絶のみならず、婦人科の病気のことなども学んでいるそうです。


Q ​週数が進んでからの中絶は特に、自宅で一般の人が自宅で嬰児を見て個人で処置するっていうことはメンタル的にも大丈夫なのでしょうか、、、

A 日本も海外も、いわゆる「初期中絶」が大多数を占めており、中期以上の中絶は、海外でも基本的には医療施設で行うことが一般的です。
 中絶薬の自宅送付は、妊娠のごく初期に限られており、基本的に、インフォームド・コンセント(正しい情報を与えて当人に決定してもらうこと)やカウンセリングとセットになっています。