リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

第16回 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議

資料5 検討会議における今後の検討の進め方について(案)にご注目 緊急避妊薬のOTC化の話です。

このページの下の方にある資料ををクリックすると
これがでます。

3.海外状況調査について
・ 評価検討会議で緊急避妊薬に係る再検討を行うにあたり、諸外国での状況を調査する。調査では、医師の処方箋なしに薬局等で購入可能となっている国、購入にあたり医師の処方箋を要する(医師の関与が必須となっている)国、それぞれの複数の国における状況・背景を調査することとする。

・海外調査における調査項目(案)は以下の通り。
<販売状況等>
①緊急避妊薬の販売・入手方法・場所・価格(OTC、BPC の別、常備薬としての購入可否、本人確認、対面服用の有無、男性への販売可否、ネット販売など)
②薬剤師の関与・役割・義務(購入希望者に対する説明内容)、医師(産婦人科医)の関与度合い、販売時のプライバシーへの配慮、販売・服用後のフォローアップなど
③未成年への販売時の対応、虐待・性暴力被害が疑われる場合の対応など
<使用状況・効果・影響等>
④緊急避妊薬の使用状況(使用数、使用理由や背景、使用者の年代など)、使用による影響(人工妊娠中絶数の変化など)
⑤副作用・事故等の発生状況、その他問題の発生状況(悪用・濫用の有無)
<背景・周辺状況等>
⑥医療へのアクセス状況(人口あたりの医療機関産婦人科)・薬局の数など)
⑦医薬品(OTC)の承認審査制度、緊急避妊薬の承認状況(成分、医療用・OTC など)
⑧宗教・信条等の社会的な背景など
性教育の状況(性交、避妊、避妊方法・避妊具について、実施時期・内容、性教育のテキスト内容など)
⑩低用量ピル、他の避妊方法の普及状況(費用、アクセス等)
以 上

このような詳細な調査が、今になってなぜ必要なのでしょうか。海外ではそんな議論はとっくに決着がついており、2010年のWHO文書「緊急避妊法:神話と誤解を払しょくする」に、次のように書かれています。

世界の多くの国では、依然として知識が重要な障壁となっています。人口動態・健康調査1やその他の国レベルの調査によると、この性交後避妊法は多くの国でまだ比較的知られていません。

レボノルゲストレル単独の緊急避妊薬の場合、数え切れないほどの研究と何十年にもわたる使用を通じて安全性が明確に証明されており、新たな研究を行う必要はありません。喫緊の課題は、科学的根拠をいかにわかりやすく説明し、普及させるかということです。


インターネット上の健康に関する噂や、地元の新聞や雑誌に掲載されている不正確な記事にいちいち反論するのは確かに愚の骨頂ですが、記者や地域住民、患者さんから懸念の声が上がったときに、事実を伝える準備をしておくことはますます重要になっています。世界中の専門家からなるチームは、2009年に主要メディアに掲載された、科学者ではない人向けに書かれた記事に直接答える形で、レボノルゲストレル単独の緊急避妊薬の安全性に関する短くてシンプルな声明を作成しました。世界保健機関(WHO)、国際産科婦人科連合、国際家族計画連盟、国際緊急避妊コンソーシアムが共同で作成したこの声明は、WHOのウェブサイトでご覧いただけます。

この「声明」は以下にあります。

Fact sheet on the safety of levonorgestrel-alone emergency contraceptive pills (LNG-ECPs). Geneva: World Health Organization; 2010. Available from: http://www.who.int/reproductivehealth/publications/family_planning/HRP_RHR_10_06.

現在もアクセス可能でした。ただしこれは、あくまでも「レボノルゲステロル」の話であり、より新しくより効果が高くより長期間(性交後120時間)有効な緊急避妊薬「酢酸ウリプリスタル(Ella-one)」にも目を向けるべきです。