リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

アメリカ人の合理主義? 

これ以上子どもがいなければためらうことなく不妊手術

 アメリカの1994年の論文*1によれば、1955年には、18〜39歳の既婚白人女性のうち、避妊経験者の70%がコンドームやペッサリーなどのバリア法や定期的禁欲法に頼っていた。経口避妊薬(OC)が発売されて5年経った1965年には、同じ年齢集団の女性の84%がピルの使用経験があり、24%が今現在もピルを使用していた。
 この集団で注目すべきことは、1988年までに不妊手術が劇的に増加し(1965年の12%から48%へ)、バリア法が減少(42%から17%へ)したことである。一方、OCの使用は、健康上の懸念(副作用)からいったん減少したが、1980年代に低用量ピルが発売されて再び増加し、1990年代には1965年の水準に戻った。1994年時点で、アメリカ人女性の避妊方法の採用パターンは今後の出産意向と強く関連していた。出産を遅らせたい女性の半数以上がピルを選択し、もう子供を産む気がない女性の61%が不妊手術を受けていた 。


 2018年の避妊を実行している15~49歳アメリカ人女性のデータ*2によれば、女性の永久避妊法(不妊手術)が最も多く(28%)、次いで経口避妊ピル(21%)、男性用コンドーム(13%)、IUD(13%)だった。女性不妊手術と避妊ピルは1982年以来ずっと上位を占めてきたが、2002年以降は長期作用型可逆的避妊法(LARC)の使用が増加し、永久避妊法と短期作用型可逆的避妊法(避妊注射やパッチ、インプラントなど)の使用が減少した。女性不妊手術は40~44歳では46%、45~49歳では61%だった。同様に、パートナーの男性不妊手術は45~49歳で18%だった。
 同様に、IUDインプラントなどのLARCを用いていたのは16%ほどで、避妊ピル以外の避妊注射、膣リング、避妊パッチなどの短期作用型ホルモン避妊法を用いていたのは5%と比較的少数だった。性交時点で用いるコンドームや抜去法、緊急避妊法、自然な家族計画手法(定期的禁欲や子宮頚管粘液検査、基礎体温法、オギノ式リズム法)を主な避妊法として用いていたのは21%だった。

*1:Contraceptive use in the United States: past, present and future, J D Forrest, PMID: 12159239 DOI: 10.1080/0907676x.1994.9961220

*2:https://www.guttmacher.org/fact-sheet/contraceptive-method-use-united-states