リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

北京会議後のレビュー会議

他の国々で行われていること 日本で行われていないこと

国際連合欧州経済委員会(UNECE)で開かれたBeijing+25 Regional Review Meetingに提出された各国レポートNational Reviewsを見つけた。いかに他の国々はジェンダー平等に向けて頑張っているのかがよく分かる。例としてイギリスとカナダを見てみよう。

Beijing+25 National Report, The response of the Government of the United Kingdom to the UN Questionnaire on the implementation of the Beijing Declaration and Platform for Action (1995)

Implementation of the Beijing Declaration and Platform for Action (1995) in the Context of the Twenty-fifth Anniversary of the Fourth World Conference on Women Canada’s National Review, May 2019

非常に細かくしっかりと北京行動綱領の項目に即して自己採点している。先進国だからしっかりしているのだろうか? と思い、中絶を禁止している「マルタ」の報告書も見てみたら……。

NATIONAL REPORT ON BEIJING +25, MALTA, May 2019, Twenty-fifth anniversary of the Fourth World Conference on Women and adoption of the Beijing Declaration and Platform for Action (1995)

この国のポリシーとして「中絶は禁止」しているものの、他の項目については女性差別をなくそうと努力しているように見える。少なくともここ最近達成した事項として、「緊急避妊薬のOTC化」が挙げられているのが目に留まった。

なお、上記3カ国はすべて「LGBT(Q)」もジェンダー平等の対象として言及され詳しく論じられていた。

ではイスラムはどうかと思い、トルコを見てみた。

COMPREHENSIVE NATIONAL REVIEW REPORT AND SURVEY PREPARED BY TURKEY ON THE OCCASION OF 25TH ANNIVERSARY OF ADOPTION OF 4TH WORLD CONFERENCE ON WOMEN AND BEIJING DECLARATION AND PLATFORM FOR ACTION (1995)

他に比べると、今いちの内容ではあるものの、それなりに努力しているのは分かるし、経済状況が改善され、女性の教育が進めば、日本なんてすぐに追い越してしまうのではないか。ちなみに現在のトルコのGGIは130位。日本は120位である。

以上4ヵ国の報告書は、参照資料をオンラインのURLで示しているためにコンパクトになっているイギリスを除くと、すべて100頁以上にも渡るボリュームがある。

一方、日本では北京会議後5年ごとに行われてきたレビュー会議の報告などを見ても、どれも精彩に欠いていると思ってきたが、たまたま見つけた北京+25の演説もまたスカスカの情けない内容だった。DeepLで試訳して紹介しよう。

北京+25レビューに関するSCAP/アジア太平洋閣僚会議
日本政府代表団の伊藤氏によるカントリー・ステートメント

議長閣下
 来年の2020年は、「北京宣言と行動綱領」から25年、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」から5年という節目の年です。
 この会議で私たちの経験を共有することは、非常に価値のあることだと考えています。 来年3月に開催される国連女性の地位委員会での議論にも貢献できると確信しています。

議長閣下
 我が国は、女性であれ男性であれ、すべての国民がお互いに人権を尊重し、それぞれの個性や能力を最大限に発揮して楽しみと責任を分かち合うことができる社会を実現することが極めて重要であると認識しています。これは、人口減少社会における日本の多様性と活力を高めるためにも、男女間の真の機会均等を実現するためにも必要なことです。
 私たちは、北京宣言と行動綱領を踏まえて制定された男女共同参画社会基本法に基づき、この5年間、取り組みを進めてきました。
 日本は、女性のエンパワーメントを最優先事項として推進してきました。2014年10月、内閣は国の機構を強化し、全閣僚で構成され、首相を本部長とする「すべての女性が輝く社会づくり推進本部」を設置しました。
 2015年からはこの本部が「女性のエンパワーメントを加速するための集中施策」を毎年決定し、政府の予算編成に反映させています。
 2016年4月には「女性の参画及び活躍の促進に関する法律」が完全施行されました。同法は、企業に対し、女性のエンパワーメントのためのアクションプランの策定と、組織における女性の参画・活躍に関連する情報の開示を義務付けています。今年、同法が改正され、適用される企業の数が増えました。
 2015年12月には、基本法に沿った「第4次男女共同参画基本計画」が閣議決定されました。内閣官房長官を中心に関係閣僚や有識者で構成される男女共同参画会議で精力的に議論が行われました。また、その過程では、様々なステークホルダーの方々にご協力いただきました。市民からは約4,000件の意見が寄せられ、公聴会には約1,000人の市民が参加しました。
 そして、昨年、「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が制定されました。
 このような取り組みを推進した結果、女性の参画状況は改善されてきました。

例えば
(1)女性の就業者数は、生産年齢人口全体が減少しているにもかかわらず、この6年間で約290万人増加し、3,000万人近くに達しています。
(2) 25歳から44歳までの女性就業者の割合は、2012年の67.7%から2018年の76.5%へと大幅に増加し、いわゆるM字型カーブの問題の解消に向けて着実に前進していることがわかります。
 また、日本の上場企業における女性役員の数は、この7年間で3.4倍に増加しました。
 その一方で、以下のような課題も抱えています。
(1) リーダーシップを発揮するポジションへの女性の参加率が低いこと
(2) 長時間労働による仕事と私生活の両立の難しさ
(3) 女性に対する暴力
 これらの課題を解決するためには、さらなるアクションが必要だと考えています。

議長閣下
 日本では現在、首相の要請を受けて、男女共同参画会議が2021年から2025年までの「第5次男女共同参画基本計画」を審議しています。この新しい計画は、来年末に閣議決定される予定です。
 今も、そしてこれからも、私たちは市民社会と手を取り合って、直面する課題の解決に向けた取り組みを進めていきます。
 ご清聴ありがとうございました。

肝いりの「すべての女性が輝く社会づくり推進本部」の議事録などをみても、まったく中身のないことしかしていない。
すべての女性が輝く社会づくり本部|内閣官房ホームページ

情けなさすぎる。