リプロな日記

中絶問題研究者~中絶ケア・カウンセラーの塚原久美のブログです

男女共同参画基本計画(2000年第1次)から塗り替えられた第2次計画(2005年)

リプロダクティブ・ヘルス/ライツ、ジェンダー女性差別撤廃の精神をすべて削除

『日本の中絶』にも少し書いたが、安倍晋三による男女共同参画基本計画への介入はすさまじいものがあった。

以下に2つほど第1次計画で書かれていた部分が、第2次でいかに変容されたかの事例を挙げる。

第1次計画

2 男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し、意識の改革
 男女共同参画社会の形成のためには、社会制度・慣行が、実質的に女性と男性にどのような影響を与えるのか常に検討されなければならない。社会制度や慣行は、それぞれの目的や経緯を持って生まれてきたものではあるが、男女共同参画社会の形成という新しい視点から見た場合、男女の置かれている立場の違いなどを反映して、結果的に男女に中立に機能しない場合がある。
 このため、男女共同参画社会基本法では、男女共同参画社会の形成についての基本理念の一つとして、「社会における制度又は慣行についての配慮」を掲げている。また、同法において、国及び地方公共団体は、男女共同参画社会の形成に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、男女共同参画社会の形成に配慮しなければならない旨も規定している。
 男女共同参画社会の形成のためには、単に男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を推進するだけでは不十分である。結果的に男女共同参画社会の形成に影響を及ぼすと認められる施策をも視野に入れて、幅広い施策を対象に必要な対応をとることが求められる。
 少子・高齢化の進展、国内経済活動の成熟化等我が国の社会経済の急速な変化に対応するため、様々な社会制度・慣行の見直しが行われる中で、男女共同参画の視点に立ってその見直しを行うことが求められている。

第2次計画

 男女共同参画に関する認識を深め、社会的・文化的に形成された性別(ジェンダー)に敏感な視点を定着させ、職場・家庭・地域における様々な慣習・慣行の見直しを進めること等を目的として、広報・啓発活動を展開する。その際、既に様々な分野に参画している女性の活動の成果が広く世の中に伝わるように可視性を高めるための配慮をする。

第1次基本計画

多様な媒体を通じた広報・啓発活動の推進
男女共同参画に関する認識を深め、社会的・文化的に形成された性別(ジェンダー)に敏感な視点を定着させ、職場・家庭・地域における様々な慣習・慣行の見直しを進めること等を目的として、広報・啓発活動を展開する。その際、既に様々な分野に参画している女性の活動の成果が広く世の中に伝わるように可視性を高めるための配慮をする。これらの活動は、<後略>


第2次基本計画

〇わかりやすい広報・啓発活動の推進
男女共同参画の理念や「社会的性別」(ジェンダー)の視点(*)の定義について、誤解の解消に努め、また、恣意的運用・解釈が行なわれないよう、わかりやすい広報・啓発活動を進める。
<中略>
〇多様な媒体を通じた広報・啓発活動の推進
政府広報等において男女共同参画に関する広報を積極的に実施する。
男女共同参画に関する認識を深め、社会的性別の視点を定着させ、職場・家庭・地域における様々な慣習・慣行の見直しを進めること等を目的として、広報・啓発活動を展開する。その際、既に様々な分野に参画している女性の活動の成果が広く世の中に伝わるように可視性を高めるための配慮をする。また、特に、青年男女への普及・啓発について留意する。これらの活動は、<中略>


*「社会的性別」(ジェンダー)の視点
1.人間には生まれついての生物学的性別(セックス/sex)がある。一方、社会通念や慣習の中には、社会によって作り上げられた「男性像」、「女性像」があり、このような男性、女性の別を「社会的差別」(ジェンダー/gender)という。「社会的性別」は、それ自体に良い、悪いの価値を含むものではなく、国際的にも使われている。
 「社会的性別の視点」とは、「社会的性別」が性差別、性別による固定的役割分担、偏見等につながっている場合もあり、これらが社会的に作られたものであることを意識していこうとするものである。
 このように、「社会的性別の視点」でとらえられる対象には、性差別、性別による固定的役割分担及び偏見等、男女共同参画社会の形成を阻害すると考えられるものがある。その一方で、対象の中には、男女参画社会の形成を阻害しないと考えられるものもあり、このようなものまで見直しを行おうとするものではない。社会制度・慣行の見直しを行う際には、社会的な合意を得ながら進める必要がある。
2.「ジェンダー・フリー」という用語を使用して、性差を否定したり、男らしさ、女らしさや男女の区別をなくして人間の中性化を目指すこと、また、家族やひな祭り等の伝統文化を否定することは、国民が求める男女共同参画社会とは異なる。例えば、児童生徒の発達段階を踏まえない行き過ぎた性教育、男女同室着替え、男女同室宿泊、男女混合騎馬戦等の事例は極めて非常識である。また、公共の施設におけるトイレの男女別色表示を同色にすることは、男女共同参画の趣旨から導き出されるものではない。
 上記1.2.について、国は、計画期間中に広く国民に周知徹底する。